司法書士の相談獲得は 相続登記と会社設立を同じ受付導線にしない

司法書士事務所の広告で最も多い取りこぼしは、相続登記の相談と会社設立の相談を、同じ電話番号と同じ問い合わせフォームで受けてしまうことです。検索する側の事情がまったく違うのに、受付の入口だけが共通になっている状態では、せっかく広告費を払って呼び込んだ相談者が、面談まで進まないまま消えていきます。弁護士や行政書士の集客論をそのまま持ち込んでも、この構造は解けません。
相続登記の相談者は、義務化と期限に背中を押されて動いています。一方で会社設立の相談者は、開業スケジュールと総額を並べて比較しています。前者は不安を減らしてほしい相談であり、後者は手続きを速く安く終わらせてほしい発注です。温度がまるで違うこの二つを、同じ広告文と同じ受付台本で処理すると、どちらの相談者にも中途半端な体験しか渡せません。
この記事では、広告運用代行として士業アカウントを預かってきた実務の視点から、相続登記と会社設立を別々の受付導線として設計する手順を具体化します。地域名クエリの組み方、電話受付での振り分け、予約フォームの質問項目、報酬額の出し方、そして問い合わせ件数ではなく面談化率と受任単価で広告を評価する方法までを、事務所側でそのまま使える形でまとめました。
この記事の要点
- 相続登記と会社設立は検索意図が真逆なので、広告・LP・電話受付・フォームを最初から二系統に分ける
- 地域名クエリは、相続登記なら不動産の所在地、会社設立なら本店予定地を軸に組み替える
- 電話受付は冒頭30秒で案件区分・不動産の所在地・相続人の人数を確認し、担当を振り分ける
- 予約フォームの質問項目は「受任できるか」「見積もれるか」を判断できる情報から逆算して決める
- 広告評価は問い合わせ件数ではなく面談化率と受任単価で見る。件数が増えても粗利が減る配分は失敗
司法書士の相談獲得は受付導線を分けた時点で成果が変わる
司法書士事務所の相談獲得は、広告の中身を触る前に受付導線を分けるだけで数字が動きます。司法書士のリスティング広告とは、Google広告やYahoo!広告などの検索連動型広告を使い、登記や相続の悩みが顕在化した検索行動に対して自事務所の相談窓口を提示する集客手法のことです。検索の瞬間に困っている人へ直接届く点が強みですが、届いた先の受付が案件区分ごとに設計されていなければ、その強みは会話の途中で失われます。
広告代理店に相談が来る司法書士案件の多くは、クリック数もクリック率も悪くありません。悪いのは、問い合わせが入ってから面談に至るまでの歩留まりです。受付が案件を区別せずに一律の対応をしているために、相続登記の相談者には説明が事務的すぎ、会社設立の相談者には確認が回りくどすぎるという状態が同時に起きています。
相続登記と会社設立を同じ導線に混ぜたときに起きること
同じ入口で受けると、まず広告文が抽象化します。相続にも会社設立にも当てはまる言葉を探した結果、「登記のことなら何でもご相談ください」という誰にも刺さらない訴求に落ち着きます。検索した人が求めているのは、自分の状況に対する具体的な答えなので、抽象的な訴求はクリックされてもすぐ離脱されます。広告費だけが消えていく典型的なパターンです。
次に、ランディングページの構成が崩れます。相続登記のセクションと会社設立のセクションを一枚のページに並べると、どちらの相談者も自分に関係のない情報を読み飛ばすことになり、読了率が下がります。特にスマートフォンでは、スクロール量が増えるほど電話ボタンやフォームまで到達する人が減ります。
最後に、受付の会話が破綻します。電話に出た担当者が「どのようなご相談でしょうか」から始めると、相続の相談者は経緯を長く語り、会社設立の相談者は費用と納期だけを知りたがります。この差を吸収する台本がないまま同じ人が対応すると、相続の相談は要点が整理されず、会社設立の相談は温度が下がったまま終わります。面談化率が案件区分ごとに二極化している事務所は、ほぼ確実にこの状態にあります。
導線を分けた事務所で最初に動く指標
受付を二系統に分けると、最初に動くのは問い合わせ件数ではなく面談予約率です。広告のクリック数が変わらないまま、問い合わせのうち面談まで進む割合が上がる形で効果が現れます。理由は単純で、相談者が自分の案件に合った説明と質問を受けられるようになるからです。
その次に動くのが受任単価です。相続登記の相談を受ける段階で、不動産の所在地・筆数・相続人の人数を確認できていれば、遺産分割協議書の作成や預貯金の解約といった周辺業務まで含めた提案が最初の面談でできます。会社設立でも、設立後の役員変更や本店移転を見据えた案内ができれば、単発の登記受注で終わりません。広告経由の売上は、件数の増加より単価の改善で伸びる局面のほうが多いというのが、士業アカウントを扱っての実感です。
この二つが動いてはじめて、予算を増やす判断ができます。逆に言えば、受付導線が一系統のままで予算だけを増やすと、面談化率の低い問い合わせが比例して増えるだけになります。増えた対応工数が事務所を圧迫し、広告をやめる、という結末につながります。
相続登記と会社設立で検索意図が真逆になる理由
この二つの案件は、検索する動機・検討期間・意思決定者のすべてが異なります。相続登記は「やらなければならないこと」を期限に追われて調べる行動であり、会社設立は「早く始めたいこと」を効率よく片付けるために調べる行動です。同じ登記という言葉で括られていますが、購買心理としてはほとんど別業種と考えたほうが実務に合います。
相続登記の相談者は義務と期限に押されて動く
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内の申請が必要になりました。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象になり得ます。施行前に発生した相続にも遡って適用され、その場合の期限は2027年3月31日です。この期限が近づくにつれ、検索需要は当面高止まりすると見ておくのが妥当です。
検索する人の心理は「放置していたが、そろそろまずい」という後ろ向きの焦りです。したがって広告文で効くのは、速さや安さよりも、期限に間に合うかどうかと、何から手をつければいいかを示す表現です。手続きの複雑さを煽るのではなく、必要書類と所要期間を先に開示するほうが、この層の反応は良くなります。
また、相談者本人が高齢であるケース、あるいは遠方に住む子世代が親の実家について調べているケースが混在します。この違いは、後述する地域名クエリの設計に直結します。検索している場所と、不動産のある場所が一致しない前提で組む必要があるということです。
会社設立の相談者は速さと総額で比較する
会社設立の検索者は、多くの場合すでに事業計画を持っており、設立日を逆算して動いています。比較軸は明確で、総額いくらか、いつまでに登記が完了するか、電子定款に対応しているか、税理士や社会保険労務士の紹介まで受けられるかといった点です。感情的な要素はほとんど入りません。
公開情報を見る限り、2026年8月時点の相場感として、株式会社設立の総額は25万〜30万円前後、合同会社は11万〜15万円前後、そのうち司法書士報酬は6万〜10万円程度に収まる例が多く見られます。この価格帯はクラウド設立サービスや税理士事務所の設立無料キャンペーンと直接ぶつかるため、報酬額の見せ方が相談数を大きく左右します。
会社設立の広告で最も避けたいのは、報酬額を伏せて「詳しくはお問い合わせください」とすることです。比較段階の相談者は、金額が書かれていない選択肢を候補から外します。相続登記の相談者が金額の不明瞭さをある程度許容するのとは対照的で、ここでも同じ方針を使い回せません。
| 比較軸 | 相続登記の相談 | 会社設立の相談 |
|---|---|---|
| 検索の動機 | 義務化・期限への対応 | 開業スケジュールの逆算 |
| 検討期間 | 数週間〜数か月と長い | 数日〜2週間と短い |
| 重視する情報 | 必要書類・所要期間・親身さ | 総額・登記完了日・付帯サービス |
| 地域の基準 | 不動産の所在地 | 本店の予定所在地 |
| 問い合わせ手段 | 電話が多い | フォーム・メールが多い |
| 時間帯の傾向 | 平日日中に集中しやすい | 夜間・休日にも分散する |
この表の右列と左列を、同じキャンペーン・同じLP・同じ受付台本で処理しようとすることに無理があります。分けるべき理由は精神論ではなく、比較軸そのものが違うという事実にあります。相続と許認可で導線を分ける発想は隣接士業でも有効で、行政書士向けの整理が参考になります。
地域名クエリは相続登記と商業登記で別々に組む
地域名クエリの設計は、案件区分ごとに基準となる「場所」を変えるのが正解です。相続登記は不動産の所在地、会社設立は本店の予定所在地が基準になります。この二つを同じ地域リストで運用すると、配信対象と受任可能範囲がずれ、対応できない相談に広告費を払う事態が起きます。
相続登記の地域指定は相談者の居住地とずれる
相続登記の登記申請は、不動産の所在地を管轄する法務局に対して行います。ところが検索しているのは、実家を離れて都市部に住む子世代であることが珍しくありません。「実家 山形 相続登記」のような検索もあれば、単に「相続登記 司法書士」と検索してから所在地を伝えてくるケースもあります。
この構造を踏まえると、配信地域を事務所の周辺だけに絞る設定は取りこぼしを生みます。オンライン面談と郵送で完結できる範囲を先に決め、その範囲を前提に配信地域を広げるほうが合理的です。逆に、対応できない遠方を除外しないまま全国配信にすると、断るための電話対応が増えて受付が疲弊します。配信地域は「事務所の場所」ではなく「対応できる不動産の所在地」で決めるのが原則です。
キーワード側では、地域名と組み合わせるパターンを二系統用意します。相談者の居住地を想定した都市名と、不動産の所在地を想定した地方名の両方です。検索語句レポートを見れば、どちらの型で流入しているかは判別できます。判別できた段階で、広告文の地域訴求を出し分けます。
会社設立の地域指定は本店予定地で決まる
会社設立は、本店所在地を管轄する法務局に登記を申請します。相談者は起業予定地の近くで司法書士を探す傾向が強く、「渋谷 会社設立 司法書士」のような検索が中心になります。したがって配信地域は、事務所から現実的に対応できる商圏に絞るほうが効率的です。
ただし、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを本店とする設立が一定数あるため、そうしたオフィスが集積するエリアは検索単価が上がりやすい傾向があります。単価が上がったエリアで無理に上位を取りにいくより、隣接エリアで確実に露出を確保するほうが、CPAは安定します。
地域名クエリ設計で見落としやすい点
- 所在地ターゲティング:Google広告の地域設定は既定で「関心を示した地域」も含むため、対応外エリアの流入が混ざる。「所在地」のみに変更するかを案件区分ごとに判断する
- 除外地域:断らざるを得ない地域は、キャンペーン単位ではなく案件区分ごとに除外内容を変える
- 地域名の表記ゆれ:区名・旧市名・駅名で検索されるため、検索語句レポートで実際の呼ばれ方を拾う
- 広告表示オプション:住所表示オプションは会社設立側で効きやすく、相続登記側では必須ではない
地域商圏で相談を取る設計は、検索広告だけで完結しません。地図面での露出や口コミ評価が電話件数に影響する事務所では、ローカル面の扱いを併せて検討する価値があります。ただし優先順位としては、まず検索広告側で案件区分ごとの地域基準を正しく設定することが先です。基準がずれたまま露出面を増やしても、対応できない相談が増えるだけになります。
電話受付での案件振り分けが広告費の回収率を決める
司法書士事務所の広告成果は、電話に出た最初の1分でほぼ決まります。相続登記の問い合わせは電話比率が高く、その電話が事務スタッフの一次受けである事務所が大半だからです。ここで案件区分を素早く見極め、適切な担当と適切な次のアクションにつなげられるかどうかが、広告費の回収率を左右します。
冒頭で確認する項目を決めておく
一次受けで確認すべき情報は、案件区分によって異なります。相続登記であれば、不動産の所在地、相続人のおおよその人数、遺言の有無、被相続人が亡くなった時期の四点が揃えば、受任可否と概算見積もりの方向性が立ちます。会社設立であれば、株式会社か合同会社か、設立希望日、本店予定地、出資者の人数の四点です。
この確認を台本化しておく意味は、聞き漏らしを防ぐことだけではありません。相談者にとって「何を準備すればいいかが分かる」体験になることが重要です。相続の相談者は情報を整理できていないことが多いため、こちらから順に尋ねるだけで安心感が生まれ、面談予約に進みやすくなります。台本は詰問にならないよう、最初に「順番にお伺いします」と宣言してから入るのが実務上のコツです。
逆に会社設立の相談では、確認事項を並べる前に概算総額と最短スケジュールを先に伝えるほうが歩留まりが上がります。比較検討中の相手にとって、条件を聞かれ続ける時間は離脱要因になります。同じ事務所の同じ電話番号でも、案件区分によって会話の順序を入れ替える必要があるということです。
取次ぎと折り返しの設計を先に決める
司法書士本人が外出していて電話に出られない時間帯は必ず発生します。この時に「折り返します」で終わらせるか、その場で面談枠を仮押さえするかで、面談化率は大きく変わります。相談者は他事務所にも並行して電話をかけているため、折り返しまでの空白時間に決着がついてしまうことが珍しくありません。
実務的には、一次受けの段階でオンライン面談枠を仮予約し、司法書士から確認の連絡を入れる運用が扱いやすいです。仮予約であれば事務スタッフの判断で押さえられ、内容が受任範囲外であれば後から丁寧に取り消せます。折り返しの目標時間は、遅くとも当日中、可能であれば30分以内を基準に置くのが望ましい水準です。
広告側では、電話コンバージョンの計測を必ず入れます。どのキーワードから何件の電話が入り、通話時間がどれくらいだったかが分かれば、問い合わせの質を数字で追えます。通話時間が極端に短い流入元は、案件区分がずれているか、対応エリア外である可能性が高いと判断できます。
予約フォームの質問項目は受任可否から逆算して決める
フォームの質問項目は、営業のために増やすのではなく、受任できるかどうかと概算見積もりを出せるかどうかを判断する材料から逆算して決めます。項目数を減らせば送信数は増えますが、面談化しない問い合わせも同じ比率で増えます。この記事の主題である案件区分の分離は、フォーム設計に落とし込んではじめて完成します。
相続登記のフォームで必ず取る情報
相続登記のフォームでは、氏名と連絡先に加えて、不動産の所在地(市区町村まで)、相続人の人数、遺言の有無、そして「いつ頃までに完了したいか」を取ります。所在地が分かれば管轄と対応可否が判断でき、相続人の人数が分かれば遺産分割協議の難易度が読めます。この二つがあるだけで、初回連絡の質が変わります。
一方で、被相続人の氏名や不動産の地番といった詳細は、フォームで求めるべきではありません。手元に資料がないと入力できない項目は、その場で離脱を生みます。相談者が記憶だけで答えられる範囲に留め、詳細は面談で確認する切り分けが実務に合います。自由記述欄は一つに絞り、「お困りの状況」とだけ書いておけば、相談者は自分の言葉で経緯を書いてくれます。
会社設立のフォームで必ず取る情報
会社設立のフォームは、選択式中心で短く作ります。会社形態、設立希望日、本店予定地、出資者の人数、事業目的の概要という五項目に絞れば、送信直後に概算見積もりを返せます。比較検討中の相談者に対しては、返信の速さがそのまま優位性になります。
ここで効くのが自動返信メールの設計です。受付完了の通知だけでなく、概算費用の内訳と、次に準備してもらう書類の一覧を最初のメールに含めておくと、相談者側の心理的な着手が進みます。会社設立の問い合わせは、返信までの時間が長いほど失注率が上がる案件区分だと考えて設計するのが安全です。広告費をかけて獲得した問い合わせを、返信の遅れで失うのは最ももったいない失点です。
フォーム項目を増やすかどうかの判断基準
- 受任可否の判断に使う項目:残す。所在地・案件区分・希望時期はここに入る
- 概算見積もりに使う項目:残す。相続人の人数、会社形態、出資者数など
- 面談で聞けば足りる項目:削る。地番、資本金の詳細、定款の細目など
- 営業都合の項目:削る。きっかけ・他社検討状況などは送信率を下げる割に活用されない
- 入力形式:手元資料が必要な項目は必ず任意にし、必須は記憶で答えられるものに限定する
フォームの改善と広告の改善は、切り離して評価すると判断を誤ります。着地後の離脱を減らす作業と、流入の質を上げる作業は同時に回すのが基本です。自事務所のフォームが妥当かどうかを客観的に見てほしい場合は、ハーマンドットの無料相談で現状のアカウントと合わせて確認することもできます。
報酬額の出し方は広告規制と受任単価の両面で決める
報酬額の表示は、司法書士会の広告規則を満たしたうえで、案件区分ごとに見せ方を変えるのが実務解です。司法書士の業務広告は平成13年に自由化されましたが、日本司法書士会連合会および各単位会が広告に関する規則と運用指針を定めており、表示内容には守るべき枠があります。
広告規則で外せない記載事項
各単位会の規則で共通して求められるのは、氏名または法人の名称、事務所の所在地、電話番号といった主体を特定できる情報です。簡裁訴訟代理等関係業務の認定を受けている場合はその旨の表示が必要とされ、広告であることが分かる表示を求める規定も置かれています。詳細は所属する司法書士会の規則を条文単位で確認するのが確実で、日本司法書士会連合会のサイトから各会の情報にたどれます。
広告文やLPで注意したいのは、他事務所との比較優位を断定的に述べる表現、成果を保証するような表現、そして品位を損なう表現です。「必ず通る」「絶対に安い」といった断定は、媒体審査より先に会の規則で問題になり得ます。Google広告の審査基準に通ったからといって、会の規則に適合しているとは限らない点は、代理店側も広告主側も取り違えやすいところです。
相続登記の報酬表示は幅と条件をセットにする
相続登記の報酬は案件の複雑さで変動するため、単一の金額を提示すると後から食い違いが生じます。公開情報を見る限り、2026年8月時点で相続登記の司法書士報酬は6万〜15万円程度に収まる例が多く、これに登録免許税と実費が加わります。表示するなら金額の幅と、その幅が動く条件を必ず併記します。
条件として書くべきは、不動産の筆数、相続人の人数、遺産分割協議書の作成有無、戸籍収集を依頼するかどうかの四点です。これらを条件表として出しておくと、電話の段階で相談者が自分の該当箇所を答えられるようになり、受付の会話が短くなります。相続案件では、金額の透明性がそのまま信頼の代替指標として働きます。
会社設立は総額での提示が比較の土俵になる
会社設立は、司法書士報酬だけを出しても比較になりません。定款認証手数料、登録免許税、電子定款による印紙代の扱いを含めた総額で提示しないと、相談者は他社の総額表示と並べられず、候補から外します。クラウド設立サービスが総額を明示している以上、同じ土俵に上がる必要があります。報酬額を伏せた広告は、会社設立では機会損失にしかなりません。
| 案件区分 | 推奨する報酬表示 | 併記すべき条件 | 広告文での扱い |
|---|---|---|---|
| 相続登記 | 報酬の幅を提示 | 筆数・相続人数・協議書作成・戸籍収集 | 金額より必要書類と期間を前面に |
| 遺産整理業務 | 財産額に応じた料率 | 対象財産の範囲・最低報酬額 | 相続登記からの導線内で案内 |
| 会社設立(株式会社) | 実費込みの総額 | 電子定款の可否・資本金額の前提 | 総額と最短完了日を広告文に明記 |
| 会社設立(合同会社) | 実費込みの総額 | 電子定款の可否・社員数の前提 | 株式会社との差額を示す |
| 役員変更・本店移転 | 定額表示 | 管轄内外の別・登録免許税 | 設立客への再接触で案内 |
報酬表示の設計は、広告の成果指標にそのまま跳ね返ります。総額を出したことで問い合わせ件数が減ったとしても、面談化率と受任率が上がって粗利が増えるなら、その変更は成功です。件数だけを追うと、この判断を誤ります。
広告評価は問い合わせ件数ではなく面談化率と受任単価で見る
司法書士の広告は、問い合わせ件数とCPAだけで評価すると必ず判断を誤ります。相続登記と会社設立では受任単価が数倍違い、さらに相続登記から遺産整理業務へ広がるかどうかで実際の売上は大きく変わるためです。見るべき指標は、案件区分別の面談化率と、面談から受任に至った案件の平均単価です。
案件区分別に持つべき指標セット
指標は案件区分ごとに別立てで持ちます。同じ広告アカウントの中でも、相続登記キャンペーンと会社設立キャンペーンでは、許容できるCPAも目標とする面談化率も違います。ひとまとめの平均値で見ると、単価の高い案件区分が単価の低い案件区分の非効率を覆い隠してしまいます。
公開されている士業向けの記事では、相続案件のCPAとして15,000〜30,000円程度という数字が挙げられることがあります。これはあくまで目安であり、地域と競合状況で上下します。重要なのは他社の相場に合わせることではなく、自事務所の受任単価と受任率から逆算した許容CPAを持つことです。受任単価10万円・面談化率40%・受任率50%であれば、許容CPAは2万円が上限の目安になります。
| 指標 | 相続登記 | 会社設立 | 見るタイミング |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ件数 | 参考値 | 参考値 | 週次 |
| 面談化率 | 主要指標 | 主要指標 | 週次 |
| 受任率 | 主要指標 | 主要指標 | 月次 |
| 平均受任単価 | 主要指標 | 補助指標 | 月次 |
| 周辺業務への拡大率 | 主要指標 | 補助指標 | 四半期 |
| 通話時間の中央値 | 質の代理指標 | 参考値 | 週次 |
面談化率が落ちたときの切り分け手順
面談化率が下がったとき、真っ先に広告の設定を疑うのは早計です。まず確認するのは検索語句レポートで、想定外のクエリが増えていないかを見ます。次に、受付記録を突き合わせて、断った理由の内訳を確認します。エリア外が増えたのか、他士業の業務範囲の相談が増えたのか、単に不在で折り返せなかったのかで、打つ手はまったく違います。
広告側の要因であれば、除外キーワードの追加や地域設定の見直しで対処できます。受付側の要因であれば、台本と折り返し体制の修正が先です。広告の数字が悪いときに広告だけを触るのは、原因の半分を見ないまま手を動かすことになります。士業案件は特にこの傾向が強く、受付の運用改善だけで面談化率が回復する例が少なくありません。
受任単価から逆算して案件を選別する考え方は、他の士業でも同じ構造で機能します。面談数ではなく単価で判断軸を組み替えた事例は、法律事務所向けの整理が具体的です。
相続登記と会社設立を分けたアカウント構成の作り方
アカウント構成は、案件区分をキャンペーン単位で分けるのが基本形です。広告グループで分けるのではなくキャンペーンで分ける理由は、予算・入札戦略・配信地域・広告スケジュールのすべてを案件区分ごとに独立して制御したいからです。前章までに整理した違いは、すべてキャンペーン単位の設定項目に対応しています。
キャンペーンを分ける基準と粒度
最小構成でも、相続登記キャンペーンと会社設立キャンペーンの二本は必要です。相続登記の需要が大きい事務所であれば、さらに「相続登記」「遺産分割・遺産整理」「相続放棄・その他」に分けると、検索語句の管理が楽になります。商業登記側も、設立と設立後の変更登記では検索意図が違うため、規模が出てきたら分離します。
入札戦略は、コンバージョン数が十分に貯まるまでは手動またはクリック数の最大化で運用し、月あたりのコンバージョンが安定して積み上がる段階でコンバージョン重視の自動入札に切り替えます。士業案件はコンバージョン数が少なくなりがちなので、いきなり目標CPAを設定すると学習が進まず配信が絞られます。コンバージョン数が月30件に届かないうちは、自動入札の目標値を厳しく設定しないほうが安全です。
コンバージョン設定を案件区分と一致させる
コンバージョンは、電話とフォームを分け、さらにフォームは案件区分ごとに別のコンバージョンアクションとして計測します。同じ「問い合わせ完了」で束ねると、単価の低い案件区分に最適化が寄っていきます。サンクスページのURLを案件区分ごとに分けておけば、設定自体は難しくありません。
加えて、面談実施と受任をオフラインコンバージョンとして取り込めると、評価の精度が一段上がります。運用の手間はかかりますが、月次で面談実施分だけでもインポートできれば、広告側が「面談まで進んだ問い合わせ」を学習対象にできます。士業のように受任単価の差が大きい業種ほど、オフライン計測の投資対効果は高くなります。
案件区分ごとにコンバージョン価値を変えて設計する発想は、同じ登録系の士業である弁理士の広告でも有効です。商標と特許でCV価値を分ける考え方は、そのまま相続登記と会社設立に転用できます。
司法書士の広告でつまずいたときの立て直し順
成果が出ていない司法書士アカウントは、触る順番を間違えると回復に時間がかかります。優先順位は、検索語句と受付記録の突き合わせ、ランディングページの案件区分分離、コンバージョン設定の是正、そして最後に予算配分の変更です。予算から動かすと、原因が特定できないまま費用だけが増えます。
検索語句と受付記録を突き合わせる
最初にやるべきは、直近3か月の検索語句レポートと、事務所の受付記録を並べて見ることです。広告側から見れば同じ「問い合わせ」でも、受付記録では「エリア外」「他士業案件」「価格が合わない」「不在で折り返せず」と理由が分かれています。この対応関係が見えると、除外すべきクエリと、受付を直すべき部分が同時に洗い出せます。
士業案件でよく混ざるのは、司法書士の業務範囲外の相談です。相続税の申告は税理士、遺産分割の争いは弁護士、車庫証明や許認可は行政書士の領域であり、これらのクエリで流入しても受任にはつながりません。業務範囲外のクエリを除外するだけで、無駄クリックの2割前後が消えるアカウントは珍しくありません。
立て直し前に確認したい落とし穴
- コンバージョンの重複計上:電話タップとフォーム送信を二重に数えていないか
- 他士業クエリの流入:税務・許認可・紛争案件のキーワードが除外されているか
- スマートフォンの電話ボタン:ファーストビュー内にあり、営業時間外の表示が出るか
- 営業時間外の受付:広告スケジュールを絞るか、フォーム導線に切り替えるかが決まっているか
- LPの案件区分:相続登記と会社設立で別ページになっているか、最終URLが正しく分かれているか
予算配分を動かす前に確かめること
予算配分の変更は、案件区分ごとの受任単価と面談化率が判明してから行います。相続登記のほうが問い合わせ件数は多いが、会社設立のほうが受任率が高いという構造の事務所も実際にあり、件数だけを見て相続側に寄せると粗利が下がります。判断材料が揃うまでは、両方の予算を維持したまま運用改善に集中するほうが結果的に早く回復します。
外部の代理店に依頼している場合は、報告資料が案件区分別になっているかを確認してください。アカウント全体のCPAしか報告されていないなら、この記事で述べた評価軸は最初から成立しません。案件区分別のレポートを出せない体制では、司法書士の広告は適切に改善できません。現在の運用体制に不安がある場合は、広告アカウントの無料診断で第三者の目を入れるのが手早い方法です。
費用面の妥当性を判断するには、手数料と運用範囲の相場を知っておく必要があります。代理店に支払っている費用が適正かどうかは、内訳を分解すれば見えてきます。
まとめは相続登記と会社設立を別の商売として設計すること
司法書士の相談獲得で成果を分けるのは、広告文の巧拙よりも受付導線の設計です。相続登記と会社設立は、検索の動機も比較軸も意思決定の速度も違います。この違いを前提に、広告・ランディングページ・電話受付・予約フォーム・報酬表示・評価指標のすべてを二系統に分けたとき、同じ広告費でも面談化率と受任単価が変わります。
- 受付の入口を案件区分で分ける。電話台本もフォーム項目も、相続登記と会社設立で別々に用意する。共通化した瞬間にどちらの相談者にも中途半端な体験になる
- 地域と報酬の出し方を案件区分で変える。相続登記は不動産の所在地基準で幅のある報酬表示、会社設立は本店予定地基準で実費込みの総額表示にする
- 評価は面談化率と受任単価で行う。問い合わせ件数とアカウント全体のCPAだけを見ていると、単価の低い案件区分に最適化が寄って粗利が落ちる
まずは無料で広告アカウント診断を
ハーマンドットは支援実績100社超の広告運用代行会社として、士業をはじめとする相談獲得型のビジネスで、問い合わせ件数ではなく面談化率と受任単価を基準にした運用改善を行っています。司法書士事務所のアカウントについても、案件区分別のキャンペーン設計から受付導線の整理まで、事務所側の運用と合わせて設計します。
現在の広告アカウントで、相続登記と会社設立が同じキャンペーンに同居していないか、業務範囲外のクエリに広告費が流れていないか、コンバージョン設定が案件区分と一致しているかを、無料の診断で確認できます。既存の代理店を変えるかどうかを決める前の、セカンドオピニオンとしての利用でも構いません。診断結果は乗り換えを前提とせず、そのまま社内資料として使える形でお渡しします。
まずは現状のお困りごとをお聞かせください。お問い合わせフォームから、事務所の規模と現在の広告予算をお知らせいただければ、こちらで確認したうえでご連絡します。初回相談は完全無料・所要時間30分・オンライン対応可能です。




