P-MAXアセット実験の実務ガイド|フィードのみ・動画の増分を測る設計と判定基準

P-MAXアセット実験の進め方

P-MAX(Performance Max)を運用していると、「画像や動画を追加すれば本当に成果は伸びるのか」「動画制作にかけた費用は回収できているのか」という問いに必ず突き当たります。P-MAXは配信面やアセットの組み合わせをGoogleのAIが自動で決めるため、アセットを差し替えた前後の数字を比べるだけでは、季節要因や入札の学習状況の変化と区別できず、効果を正しく判断できません。

この問題に対してGoogleが用意しているのが、P-MAXの「最適化テスト」に含まれるアセットのテストです。1つのキャンペーンの中でトラフィックを対照群と介入群に分け、アセットの有無や差し替えによる純粋な増分を測定できます。一般的なABテストの考え方とは前提が異なる部分が多く、設計を誤ると数週間の配信が判断材料にならないまま終わってしまいます。

本記事では、Google広告ヘルプの公式情報をもとに、フィードのみのキャンペーンへのアセット追加テスト、動画の有無による増分テスト、アセットのA/Bテスト(ベータ版)の3つに絞って、実験設計から設定手順、結果の判定基準、よくある失敗までを実務目線で解説します。仕様や画面名は2026年10月時点の公式ヘルプの記載に基づいています。

この記事の要点

  • P-MAXのアセット実験は、別キャンペーンを複製せず同一キャンペーン内でトラフィックを分割して比較する仕組み
  • 公式の検証パターンは、フィードのみへのアセット追加・動画の有無・アセットA/B(ベータ版)の3種類
  • 実験期間は最低4〜6週間が推奨で、開始後はアセットや関連設定を変更しないことが大前提
  • 判定は統計的信頼度の表示とCV・CV値・CPA/ROASを組み合わせ、事前に決めた基準で行う

P-MAXアセット実験は同一キャンペーン内で増分を測る仕組み

P-MAXのアセット実験は、1つのP-MAXキャンペーンの中でトラフィックを対照群と介入群に分け、アセットの追加や変更がもたらす成果の差を測るための公式機能です。Google広告の管理画面では「テスト」メニューから作成し、テストの種類として「アセット」を選ぶことで利用できます。

P-MAXアセット実験とは、アセット以外の条件(入札戦略、予算、オーディエンスシグナル、商品フィードなど)を揃えたまま、アセットの構成だけを変えた2つのグループを同時に配信し、その差分を増分効果として評価する検証手法です。同時期に同じオークション環境で比較するため、前後比較で生じやすい季節変動や競合の動きによる歪みを抑えられます。

前後比較が当てにならない理由は、P-MAXの成果が外部要因に強く左右されるためです。セール時期や競合の出稿状況、検索需要の増減は週単位で大きく変わり、アセットを追加した翌週に成果が伸びても、それがアセットの効果なのか需要の波なのかは判別できません。同じ期間・同じオークションで比べることが、増分を測る最も確かな方法です。

対照群と介入群をキャンペーン内で分割する考え方

公式ヘルプ「P-MAX 最適化テストについて: アセットのテスト」では、アセットのテストは他のテストのように2つの別キャンペーンを比較するのではなく、1つのキャンペーンを使ってその中でトラフィックを分割すると説明されています。これにより学習期間が短縮され、より早く結果が得られるとされています。

実務上の意味は大きく、キャンペーンを複製する方式では、新しく作ったキャンペーンが学習をゼロからやり直すため、介入群が不利な状態でスタートしがちという課題がありました。同一キャンペーン内で分割する方式なら、入札の学習やコンバージョン履歴を両群が共有できるため、アセットの違いだけを切り出して評価しやすい点が最大の利点です。

通常のキャンペーン実験やP-MAXテストとの違い

Google広告には、検索キャンペーンなどで使うカスタムテストや、P-MAX向けのテストとして「アップリフトテスト」「アップグレードテスト」「最適化テスト」が用意されています。公式ヘルプ「P-MAX テストについて」によると、アップリフトテストは既存の検索やディスプレイなどにP-MAXを追加した場合の上積みを、アップグレードテストは標準ショッピングなどの予算をP-MAXへ移した場合の効果を測るものです。

アセット実験はこのうち最適化テストに属し、P-MAXを使うかどうかではなく、既に動いているP-MAXをどう改善するかを検証する位置づけです。つまり「P-MAXを導入すべきか」を問うテストと、「導入済みのP-MAXでアセットに投資すべきか」を問うテストは目的が異なり、評価する指標や期間の考え方も分けて設計する必要があります。

たとえば、P-MAXの導入可否を問うアップリフトテストでは、アカウント全体のコンバージョン増分が主な評価軸になります。一方でアセット実験では、同じキャンペーン内の両群の差を見るため、キャンペーン単体のCPAやROAS、コンバージョン値の差が評価の中心になります。テストの種類を取り違えたまま評価指標を決めると、本来見るべき数字を見落とす原因になるため、最初にどの問いに答えたいのかを明確にしておきましょう。

テストの種類比較する対象答えられる問い
アップリフトテストP-MAXあり/なし既存キャンペーンにP-MAXを追加すると成果がどれだけ上積みされるか
アップグレードテスト既存キャンペーン/P-MAXへの移行標準ショッピングなどからP-MAXへ予算を移すべきか
最適化テスト(アセット)同一P-MAX内の対照群/介入群アセットの追加・差し替えで成果が伸びるか
P-MAX関連テストの種類と目的(Google広告ヘルプをもとに作成・2026年10月時点)

Google広告のキャンペーン実験全般の進め方や比較設計の基本については、以下の記事で詳しく解説しています。

公式が用意するアセット実験は3つの検証パターン

2026年10月時点でP-MAXのアセット実験として公式ヘルプに記載されているのは、フィードのみのキャンペーンへのアセット追加テスト、動画の有無による増分テスト、アセットのA/Bテスト(ベータ版)の3パターンです。どのパターンを選ぶかで、対照群と介入群の中身、そして得られる結論の種類が変わります。

フィードのみのキャンペーンへのアセット追加テスト

このパターンは、Merchant Centerの商品フィードだけで配信しているP-MAXに、テキスト、画像、動画のアセットを追加した場合の成果向上を測るものです。公式ヘルプでは、対照群を「商品フィードを使用し追加のアセットがない既存のP-MAXキャンペーン」、介入群を「テスト用にテキスト、画像、動画アセットを追加した同じP-MAXキャンペーン」と定義しています。

EC事業者のあいだでは、ショッピング面に配信を寄せたいという理由でフィードのみのP-MAXを運用するケースが少なくありません。一方で、アセットを追加すればYouTubeやディスプレイ、Discoverなどへ配信が広がり、新規顧客との接点が増える可能性もあります。この判断を感覚ではなくデータで下せる点が、このテストの価値です。設定画面ではサブタイプとして「小売店向けキャンペーン用のアセット」を選ぶ形式になっています。

動画の有無による増分テスト

動画テストは、既にアセットを持つP-MAXに対して、動画を配信した場合としなかった場合のコンバージョンの増分リフトを測るものです。公式ヘルプによると、対照群ではユーザーがアップロードした動画と自動生成された動画の両方が配信されません。介入群では動画アセットを含めて配信し、テキストや画像など動画以外のアセットは両群に引き続き配信されます。

この設計により、動画だけの効果を切り分けられます。P-MAXでは動画アセットを入稿しなくても、可能な場合は自動で動画が生成されて配信される仕様のため、「動画を入れていないのに動画面に出ている」という状況がよく起こります。動画テストは自動生成動画も含めて抑制するため、動画という配信形式そのものの価値を測れる点が特徴です。

アセットのA/Bテスト(ベータ版)

3つ目は、1つのアセットグループの中で2つのアセットの組み合わせを比較するA/Bテストで、公式ヘルプ「About Performance Max optimization experiments: A/B testing assets (Beta)」で案内されています。対照群(アセットA)には既存アセットから比較の基準にしたいものを選び、介入群(アセットB)には別の既存アセットか、テスト用に新しくアップロードしたアセットを指定します。

どちらの群にも選ばなかったアセットは「共通アセット」として、トラフィックの100%に配信され続けます。このため、たとえば画像だけを差し替えて比較したい場合は、見出しや説明文を共通アセットとして残し、画像だけを両群に振り分ける設計が可能です。ベータ版のため、アカウントによっては利用できない場合がある点に注意してください。

3つの検証パターンの使い分け

  • フィードのみへのアセット追加:ショッピング中心の運用を広げるべきかを判断したいとき
  • 動画の有無:動画制作費の投資対効果を検証したいとき
  • アセットA/B(ベータ版):訴求や画像のどちらが勝つかを比較したいとき

フィードのみのP-MAXでアセット追加テストを行う前に、土台となる商品フィードの品質を整えておくことも重要です。フィード改善の具体的な手順は、以下の記事で詳しく解説しています。

実験を始める前に整える前提条件

アセット実験の成否は、開始前の準備でほぼ決まります。特に重要なのは、十分なコンバージョン量が見込めるキャンペーンを選ぶこと、実験中に固定すべき設定を把握すること、仮説と判定基準を事前に文書化しておくことの3点です。

コンバージョン量と計測の健全性を確認する

Google広告ヘルプ「Experiments FAQs」では、テストの検出力を高めるために、ボリュームの大きいキャンペーンを選び、より長く実施することが推奨されています。トラフィックを2つに分ける以上、各群に入るコンバージョン数は通常の半分前後になるため、もともとの月間コンバージョンが少ないキャンペーンでは差が出ても統計的な結論に至らない可能性が高くなります。

あわせて、コンバージョン計測そのものが安定しているかを確認しておきます。実験期間中にタグの改修やコンバージョンアクションの主要・副次の切り替えを行うと、両群の比較条件が崩れます。拡張コンバージョンや購入値の送信が正しく動いているか、直近数週間の計測に欠損がないかを開始前に点検しておくことが、後で結果を疑わずに済むための最低条件です。

実験中に固定する設定を把握する

公式ヘルプでは、テスト作成後にテキストのカスタマイズ、最終ページURL拡張、動画の拡張機能の設定を変更しないこと、テスト開始後にキャンペーンのアセットを変更しないことが推奨事項として挙げられています。A/Bテスト(ベータ版)では、実験が始まるとテスト対象のアセットグループでアセットの編集・追加・削除ができなくなる仕様です。

さらにExperiments FAQsでは、予算や目標値を頻繁に変えると新たな学習期間が始まり、結果が汚染される可能性があると注意喚起されています。実験期間中に予算の大幅な増減や目標CPA・目標ROASの変更が必要になりそうな繁忙期は、実験の開始時期そのものをずらす判断も必要です。

実験中に触らない設定チェックリスト

  • テスト対象アセットグループのアセット追加・削除・差し替え
  • テキストのカスタマイズ・最終ページURL拡張・動画の拡張機能
  • 予算の大幅な変更と目標CPA・目標ROASの変更
  • コンバージョンアクションの設定やタグの改修
  • 同じキャンペーンでの別テストの同時実行

仮説と判定基準を事前に文書化する

実験を始める前に、「何を変えると、どの指標が、どれくらい動くと考えているのか」を1行の仮説として書き出しておきます。たとえば「フィードのみのP-MAXに動画と画像を追加すると、コンバージョン値が増える一方でROASは大きく下がらない」といった形です。仮説が曖昧なまま始めると、結果が出たあとで都合のよい指標だけを拾って解釈してしまいがちです。

判定基準も同じタイミングで決めます。主要指標をコンバージョン数にするのかコンバージョン値にするのか、ROASやCPAの悪化をどこまで許容するのか、統計的信頼度が出なかった場合にどう扱うのかを、関係者と合意しておくことが重要です。判定基準を結果を見てから決めるのは、実験の意味を失わせる最も典型的な失敗です。

実験中に入札戦略や目標値を動かさないためにも、事前にP-MAXの入札設計を固めておくことが欠かせません。入札戦略の選び方と目標値の調整方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

管理画面での設定手順と分割率の決め方

アセット実験の設定は、Google広告の「キャンペーン」内にある「テスト」メニューから数分で完了します。手順自体はシンプルですが、サブタイプの選び方と分割率の決め方を誤ると、意図と違うテストが走ってしまうため注意が必要です。

フィードのみのキャンペーンでの設定の流れ

公式ヘルプに記載された手順では、テストメニューのプラスボタンから新しいテストを作成し、テスト対象として「アセット」を選びます。続いて変数で「お客様によって提供されたアセット」とキャンペーンの種類「P-MAX」を選択し、サブタイプとして「小売店向けキャンペーン用のアセット」を選びます。そのうえで対象となる既存のP-MAXキャンペーンとアセットグループを指定し、トラフィックの分割率を決めます。

次に、介入群に追加するテキスト、画像、動画のアセットを登録します。最後にテスト名と開始日・終了日を設定し、「スケジュールを設定」を実行すれば完了です。2026年10月時点の英語版ヘルプでは、開始日は当日に設定する仕様と記載されています。前日までにアセットの審査を通しておけるよう、介入群のアセットはあらかじめアセットライブラリにアップロードしておくと安心です。

動画テストでの設定の流れ

動画テストもテストメニューから作成する流れは同じで、サブタイプで「動画」を選ぶ点が異なります。対象として選ぶのは、既に動画アセットを含むP-MAXキャンペーンです。分割率を決めると、対照群では動画が自動的に配信されなくなり、介入群では動画を含めた通常の配信が続きます。

このテストでは新しい動画を追加する操作は求められません。つまり、まず動画を含めた状態でキャンペーンを運用し、そのうえで「動画がなかったら成果はどれだけ下がるのか」を逆方向から測る設計です。動画をこれから制作する段階であれば、先に動画を入稿して配信を安定させてからテストを組むのが現実的な順序です。

動画テストを設定する前には、動画アセットの本数と比率もあわせて確認しておきます。Google広告ヘルプでは、P-MAXの動画として横向き(16:9)、スクエア(1:1)、縦向き(9:16)のそれぞれで10秒以上の動画を推奨しており、YouTubeショート向けに10〜60秒の縦向き動画を少なくとも1本用意することが勧められています(2026年10月時点)。横向き動画しかない状態でテストすると、ショートなど縦型の面では自動でサイズ変更された動画が配信される場合があり、動画の価値を本来より低く見積もる恐れがあります。

設定項目フィードのみへの追加テスト動画テスト
テスト対象アセットアセット
変数お客様によって提供されたアセット/P-MAXお客様によって提供されたアセット/P-MAX
サブタイプ小売店向けキャンペーン用のアセット動画
対象キャンペーン商品フィードのみのP-MAX動画アセットを含むP-MAX
介入群での操作テキスト・画像・動画を追加追加操作なし(対照群の動画が非表示)
アセット実験の設定項目比較(Google広告ヘルプをもとに作成・2026年10月時点)

テスト対象のアセットグループの選び方

アセットグループが複数あるキャンペーンでは、テスト対象として最も配信量の多いアセットグループを選ぶのが基本です。配信量の少ないアセットグループを選ぶと、両群に十分なデータが集まらず、期間を延ばしても結論が出にくくなります。管理画面のアセットグループ別レポートで、直近1か月の表示回数とコンバージョン数を確認してから対象を決めましょう。

また、テスト対象にするアセットグループは、商品カテゴリや訴求が明確に1つに絞られているものが理想です。複数の商品カテゴリを1つのアセットグループにまとめている場合、追加したアセットが一部の商品とだけ相性がよいといった偏りが生じ、結果の解釈が難しくなります。必要であれば、実験の前にアセットグループの構成を整理しておくことをおすすめします。

トラフィック分割率の決め方

分割率は対照群と介入群のあいだで調整できますが、特別な理由がなければ50対50を基本にするのが合理的です。Experiments FAQsによると、トラフィック分割はオークションへの参加機会などを各群に振り分けるもので、均等に分けても広告ランクや入札の挙動、ユーザーの反応によって費用は均等にならない場合があると説明されています。

介入群の比率を下げると、未検証のアセットによるリスクは抑えられますが、その分だけ介入群のデータが集まりにくくなり、結論が出るまでの期間が延びます。売上への影響を抑えたい大規模アカウントでは介入群を少なめにする選択肢もありますが、コンバージョンが月100件に満たない規模なら均等分割から外さないほうが、期間内に判断材料をそろえやすくなります。この「月100件」は当社の運用経験に基づく目安であり、公式の基準ではない点にご留意ください。

自社のP-MAXでどのテストから着手すべきか判断がつかない場合は、広告運用の無料相談で現状のアカウント構成をもとにご提案することも可能です。

結果の読み方と適用判断の基準

アセット実験の結果は、テスト結果のレポートページで対照群と介入群の成果を比較し、統計的信頼度の表示と事前に決めた判定基準を照らし合わせて判断します。数値の差だけを見て勝ち負けを決めるのではなく、データの期間と信頼度の両方を確認することが基本です。

期間の目安と立ち上がりデータの扱い

Experiments FAQsでは、少なくとも4〜6週間、コンバージョンまでの遅延が長い場合はさらに長くテストを実施することが推奨されています。A/Bテスト(ベータ版)でも、終了日は最低4〜6週間を推奨とする案内があります。Search Ads 360のヘルプ「Experiment with Google Ads Performance Max」では、P-MAXのテストについて最初の2コンバージョンサイクルを分析から除外すること、最初の7日間のデータは立ち上がり期間として自動的に除外されることも記載されています。

実務では、検討期間が長い高単価商材ほどこの影響が大きくなります。購入までに平均2週間かかる商材であれば、最初の4週間程度は判断に使えない可能性があるため、6週間を最低ラインとして8週間程度の期間を確保しておくのが安全です。途中経過の数字で早期に適用を判断しないことが、誤った結論を避ける最大のポイントです。

指標ごとの読み方

結果を読むときは、コンバージョン数、コンバージョン値、費用、CPA、ROASを必ずセットで確認します。介入群のコンバージョン数が増えていても、費用がそれ以上に増えていればCPAは悪化しており、単純に勝ちとは言えません。前述のとおり、均等に分割しても両群の費用は一致しないため、絶対数だけでなく効率指標で比べることが欠かせません。

フィードのみへのアセット追加テストでは、介入群で配信面が広がるため、短期的にはCPAがやや上がる一方で新規顧客の獲得が増えるといった結果になることがあります。このような場合は、新規顧客獲得の目標を設定しているかどうか、LTVを加味した許容CPAはいくらかといった事業側の基準と照らし合わせて判断します。短期のCPAだけで判定すると、配信拡大の価値を過小評価しやすい点に注意してください。

統計的信頼度が出ないときの判断

公式ヘルプによると、テスト結果の概要表には結果が統計的に有意かどうかが表示されます。期間を満たしても有意差が出なかった場合、それは「アセットに効果がない」ことを意味するのではなく、「この期間とボリュームでは差を検出できなかった」という意味にとどまります。

この場合の判断は、事前に決めた方針に従います。たとえばフィードのみへのアセット追加テストで、コンバージョン値は介入群が上回っているもののROASは同水準という結果なら、配信面の拡大による新規接点の獲得を重視して適用する判断もあり得ます。逆に、動画テストで差が見えないなら、動画制作の追加投資を一度止め、既存の動画を活かしたまま別の改善に予算を回すのが合理的です。

結果のパターン推奨される判断次のアクション
介入群が有意に優位適用する適用後2〜4週間は全体の成果を追跡
対照群が有意に優位終了する介入群アセットの訴求や品質を見直す
有意差なし・介入群が数値上やや優位事前基準に従って判断許容範囲内なら適用し、追加検証を計画
有意差なし・ほぼ同水準原則終了期間延長か、より差の大きい変更で再テスト
アセット実験の結果別の判断目安(当社運用ノウハウに基づく整理・2026年10月時点)

適用と終了で何が変わるか

テストが完了したら、「テストを適用」か「テストを終了」のいずれかを選びます。公式ヘルプによると、適用を選ぶと介入群の変更が元のキャンペーンに反映され、フィードのみ向けのテストでは新しいアセットが追加され、動画テストでは動画の配信が続きます。終了を選んだ場合は変更が反映されず、キャンペーンは元の設定に戻ります。

A/Bテスト(ベータ版)では、適用時に介入群のアセットをキャンペーンに追加する選択肢と、対照群のアセットを残す選択肢が示され、対照群のアセットを残す設定がデフォルトで選ばれています。終了した場合は、テスト用に新しく追加した介入群のアセットは破棄されます。手元に元データを保管していないと再入稿の手間が増えるため、テスト用アセットの原本は必ず社内で管理しておきましょう。

クリエイティブのABテストを媒体横断でどう設計し、勝ちパターンを次の制作に活かすかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

アセット実験でよくある失敗と回避策

アセット実験で最も多い失敗は、実験そのものの機能ではなく、運用側の設計や途中の操作によって比較条件が崩れることです。代表的な4つの失敗を押さえておけば、数週間の配信を無駄にするリスクを大きく減らせます。

実験中に設定やアセットを触ってしまう

成果が伸び悩むと、実験中であってもアセットを差し替えたくなるものです。しかし公式ヘルプでも、テスト開始後のアセット変更や関連設定の変更をしないことが推奨されています。担当者が複数いるアカウントでは、別の担当者が気づかずに設定を触ってしまうケースもあるため、実験期間と変更禁止事項を社内で共有しておくことが必要です。

代理店に運用を委託している場合も同様で、レポート作成のたびに細かな調整を加える運用スタイルだと、実験の前提が崩れやすくなります。実験開始時に「この期間は何を触らないか」を書面で合意しておくと、後から結果の解釈で揉めることを防げます。

複数の実験を同時に走らせる

Experiments FAQsでは、複数の実験を同時に実施すると互いに干渉して結果の信頼性が下がるため推奨しないと明記されています。A/Bテスト(ベータ版)でも、共有予算やポートフォリオ入札戦略を使っているキャンペーン、既にテストが動いているキャンペーンでは同時に実施できないとされています。

検証したいテーマが複数ある場合は、優先順位をつけて順番に実施するのが正攻法です。おすすめの順序は、まずフィードのみへのアセット追加で配信面を広げる価値を確認し、次に動画の有無で動画投資の妥当性を測り、最後にA/Bテストで個別の訴求や画像を磨き込む流れです。大きな構造の判断から細かな表現の判断へ進むことで、各テストの結果が次のテストの前提として活きてきます。

訴求軸の異なるアセットを1つの比較に混ぜる

A/Bテストで「価格訴求の画像と見出し」と「品質訴求の画像と見出し」を一度に比較すると、どちらが勝ったとしても、勝因が画像なのか見出しなのか、訴求そのものなのかを切り分けられません。業界メディアの解説でも、1つのアセットグループは1つの訴求軸にそろえ、同じ訴求の中でバリエーションを比較する使い方が推奨されています。

比較する要素は1回のテストで1種類に絞り、それ以外は共通アセットとして両群に残すのが基本です。画像を比べるなら見出しや説明文は共通にし、見出しを比べるなら画像は共通にします。1回のテストで変える要素は1つだけという原則を守るだけで、結果を次の制作指示に落とし込みやすくなります。

自動生成動画や画像仕様の影響を見落とす

フィードのみのキャンペーンやアセットの少ないキャンペーンでは、GoogleのAIが商品フィードのテキストや画像から動画を自動生成して配信している場合があります。そのため、対照群が本当に「アセットなし」の状態と言えるのかを、事前にアセットのレポートで確認しておくことが大切です。動画テストでは自動生成動画も対照群で抑制されるため、この点を理解したうえで結果を読む必要があります。

また、介入群に追加する画像の比率やサイズが推奨仕様を満たしていないと、配信面によっては表示されにくくなり、アセットの実力を測る前に不利な条件になってしまいます。テスト前に画像・動画の仕様と審査基準を満たしているかを確認し、介入群のアセット品質を十分に整えてから実験を始めましょう。

実験が無効になりやすい典型パターン

  • 実験開始後にアセットや目標値を変更した
  • 同じアカウント内で複数のテストを並行していた
  • 訴求と素材を同時に変えて勝因が分からない
  • 介入群アセットが審査落ちや仕様不備で配信されていなかった

P-MAXに入稿する画像アセットのサイズや切り抜き事故を防ぐ制作指示の出し方は、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ P-MAXアセット実験は設計と判定基準で決まる

P-MAXのアセット実験は、同一キャンペーン内でトラフィックを分けることで、アセットの追加や動画の有無による純粋な増分を測れる強力な機能です。ただし、成果を左右するのは機能の操作よりも、開始前の設計と結果の読み方です。最後に要点を整理します。

  • 検証パターンを目的で選ぶ。配信面の拡大ならフィードのみへのアセット追加、動画投資の妥当性なら動画テスト、訴求の磨き込みならA/Bテスト(ベータ版)を使い分けます。
  • 期間と固定設定を守る。最低4〜6週間を確保し、実験中はアセット・予算・目標値・関連設定を変更せず、複数テストの同時実行も避けます。
  • 判定基準は事前に決める。主要指標と許容範囲、有意差が出なかった場合の扱いを開始前に合意し、結果は統計的信頼度とあわせて判断します。

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P-MAXのアセット実験は、正しく設計すれば「どの素材に投資すべきか」を数字で示してくれる一方、設計を誤ると数週間分の配信が判断材料にならないまま終わってしまいます。株式会社ハーマンドットでは、P-MAXをはじめとするGoogle広告の運用代行を通じて、実験設計から結果の判定、勝ちパターンの横展開までを一貫して支援しています。

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