行政書士の検索広告設計|相続と許認可の問い合わせを混線させない案件別導線の作り方

行政書士のリスティング広告には、他の士業にはない固有の難しさがあります。それは扱う相談分野の幅広さです。相続・遺言といった個人向けの民事業務から、建設業許可・産業廃棄物収集運搬・古物商・入管業務といった許認可業務、さらに会社設立や定款変更などの法人手続きまで、同じ事務所の看板の下にまったく性質の異なる相談が同居しています。この幅広さこそが行政書士の強みである一方、広告設計の面では「誰に何を売る広告なのか」が曖昧になりやすい最大の原因になっています。

実際によくあるのが、「行政書士 ○○市」のような職業名キーワードで1本のキャンペーンを作り、着地先を事務所のトップページにしてしまう構成です。この設計では、相続で悩む個人と、営業開始日が迫って建設業許可を急ぐ事業者が、同じ広告文を見て同じ問い合わせフォームに流れ込みます。結果として広告費は消化されるのに、届く問い合わせは「何の相談か開いてみないと分からない」状態になり、電話対応や振り分けの工数だけが積み上がっていきます。

本記事では、行政書士のリスティング広告を「相続」「許認可」「法人手続き」という案件タイプ別に分解し、問い合わせを混線させない導線の作り方を解説します。単に問い合わせ数を増やす話ではなく、案件ごとの受任単価と対応工数の差まで踏み込み、どの案件に広告費を寄せるべきかを判断できる状態を目指します。これから広告を始める事務所にも、すでに出稿していて成果に伸び悩んでいる事務所にも使える設計手順です。

目次

行政書士のリスティング広告が混線しやすい理由

最初に押さえるべきは、行政書士のリスティング広告がうまくいかない典型パターンの多くが、媒体設定の巧拙ではなく導線設計の段階で決まっているという事実です。全国で5万人を超える行政書士が登録されている中で、Web集客に力を入れる事務所は年々増えていますが、広告アカウントの中身を見ると、業務の異なる検索需要を1つの入口に流し込んでいるケースが目立ちます。同じ「士業の広告」でも、取扱分野が事実上1つに集約される社労士や税理士と違い、行政書士は分野ごとに顧客層そのものが入れ替わるため、他士業向けの広告ノウハウをそのまま流用すると設計を誤ります。

相続と許認可では検索している人がまったく違う

相続関連のキーワードを検索しているのは、多くの場合、家族を亡くした直後か、亡くなる前の準備を考え始めた個人です。初めての手続きに対する不安が強く、複数の事務所や司法書士・税理士のサイトを見比べながら、平日の夜や週末にじっくり情報収集をします。検索から問い合わせまでの期間が長く、信頼できそうかどうかという情緒的な判断が受任を左右します。

一方で許認可関連のキーワードを検索しているのは、事業を営む法人や個人事業主です。建設業許可がなければ請けられない工事がある、営業開始日までに古物商許可が必要になった、更新期限が迫っているなど、ビジネス上の期限に追われた緊急性の高い検索が中心になります。彼らが知りたいのは共感ではなく、いつまでに取れるか、いくらかかるか、自分の要件で通るかという実務情報です。同じ「行政書士」を探す検索でも、求めているものがここまで違う以上、同じ広告文と同じLPで両方を受け止めることには最初から無理があります。

事務所トップに全業務を載せた導線で起きること

全業務を並べた事務所トップページに広告を着地させると、まず広告文とページ内容の関連性が下がり、品質スコアの低下を通じてクリック単価が割高になります。検索した人にとっても、相続の不安を抱えてクリックしたのに最初に目に入るのが建設業許可の実績では、自分向けのページだと感じられずに離脱します。行政書士業務のように検索意図が明確な領域では、広告文・キーワード・LPの三点が同じ案件タイプで一致していることが成果の前提条件です。

この混線は費用面の損失にとどまりません。相続の相談者が建設業許可の実績が並ぶページを見て「ここは会社向けの事務所だ」と判断して離脱した場合、その人は二度と同じ広告をクリックしてくれない可能性が高く、検討期間の長い相続では取り返しがつきにくい機会損失になります。逆に許認可を急ぐ事業者にとっては、家族の写真と温かみのある相続向けトーンのページは「スピード感がなさそう」という印象につながります。同じページが両方の検索者にとってマイナスに働くのが、全業務同居型の導線の本質的な問題です。

さらに深刻なのは、問い合わせが来た後の混線です。フォームの件名が「相談したいことがあります」だけでは、相続なのか許認可なのか開封するまで分かりません。どのキャンペーンがどの案件を生んだのかを切り分けられないため、広告の評価も「なんとなく問い合わせは来ている」以上に踏み込めなくなります。改善の打ち手を判断できない広告は、続けるほど機会損失が膨らみます。リスティング広告の運用そのものの基本と代理店活用の考え方は、以下の記事で全体像を整理しています。

案件タイプ別に見る検索需要と受任単価の構造

導線を分ける前に、行政書士の主要な案件タイプごとに、検索需要と受任後の経済性がどう違うのかを整理しておきます。ここを曖昧にしたまま広告費を配分すると、問い合わせは増えたのに事務所の利益が増えないという結果になりがちです。広告の良し悪しは問い合わせ数ではなく、受任単価と対応工数を差し引きした後の粗利で判断する必要があります。

相続案件は比較検討が長く単価は中位から高位

相続手続きの一式サポートや遺産分割協議書の作成は、案件単価が比較的高く、遺言書作成や死後事務委任など周辺業務への広がりも期待できます。ただし検索してから依頼するまでの検討期間が長く、司法書士・税理士・銀行の相続サービスとも競合するため、クリック単価は上昇しやすい領域です。1回のクリックで受任が決まることはまれで、無料相談という中間コンバージョンを挟んで信頼を積み上げる設計が前提になります。検索から数週間後に問い合わせが入ることも珍しくないため、短い期間の数字だけで広告の良し悪しを判断せず、少なくとも2〜3ヶ月単位で受任までの流れを追う姿勢が必要です。

また相続は、問い合わせの中に「まだ何も起きていないが不安で聞きたい」という即受任につながらない相談が一定割合で混ざります。これ自体は将来の顧客候補として価値がありますが、広告の許容単価を計算するときには、問い合わせのうち受任に至る割合が許認可より低くなることを織り込んでおく必要があります。

許認可案件は緊急度が高く実質的な即決型

建設業許可・産廃収集運搬・宅建業免許・風俗営業許可・入管業務などの許認可は、依頼者に明確な期限があるため、検索から問い合わせ、問い合わせから受任までの速度が速いのが特徴です。要件確認と見積もりの返答が早い事務所がそのまま受任する傾向が強く、比較検討サイトを何日も回遊する相続とは行動がまったく異なります。

単価面では、建設業許可の新規申請や経営事項審査、入管の在留資格関連など、報酬相場が10万円台後半から数十万円に届く業務が多く、さらに更新・変更届・決算変更届といった継続業務が毎年発生します。初回受任のCPAが多少高くても、更新まで含めた顧客生涯価値で回収できるのが許認可広告の強みで、リスティング広告との相性は行政書士業務の中で最も良い領域といえます。

法人設立や変更手続きは低単価高回転で広告採算が崩れやすい

会社設立や定款変更、議事録作成などの法人手続きは、検索ボリュームこそ大きいものの、設立代行の価格競争が激しく、税理士事務所が顧問契約獲得のために設立手数料を実質無料にするビジネスモデルとも正面からぶつかります。単発の設立報酬だけを目的に広告を出すと、クリック単価に対して受任単価が見合わず採算が崩れやすい領域です。

この領域で広告を出す意味があるのは、設立後の許認可や補助金申請、創業融資サポートまで含めた継続取引を設計できている場合に限られます。単体の案件経済性ではなく、後工程の業務に接続できるかどうかで出稿判断をする、という視点を持っておくべきです。たとえば建設業・運送業・飲食業のように設立直後に許認可が必要になる業種の創業者に絞り、「会社設立と許可申請のセット」で訴求できるなら、設立単体では赤字に見えるCPAでも取引全体では十分に採算が合います。3つの案件タイプの違いを整理すると次のようになります。

比較軸相続・遺言許認可(建設業・入管など)法人設立・変更手続き
主な検索者個人(家族)法人・個人事業主創業者・法人担当者
緊急度低〜中(検討期間が長い)高(期限起点で即決型)中(設立日目標あり)
受任単価の目安15万〜50万円程度10万〜30万円程度+更新継続5万〜10万円程度
対応工数の傾向面談・調整が多く重い要件確認後は定型化しやすい軽いが価格競争が激しい
広告での狙い方無料相談を中間CVに置く業種×許可名×地域で確度優先後工程の業務接続が前提

混線させない案件別導線の設計手順

案件タイプごとの構造が見えたら、次はそれを広告アカウントの設計に落とし込みます。原則はシンプルで、検索する人が違うものは、キャンペーンもLPも問い合わせ窓口も分けるということに尽きます。ここでは実際に手を動かす順番で設計手順を追っていきます。

キャンペーンを案件タイプで分けて予算を独立させる

まず、相続・許認可・法人手続きは必ず別キャンペーンに分けます。広告グループでの分割ではなくキャンペーン単位で分ける理由は、予算を独立させるためです。同一キャンペーン内に同居させると、クリック単価が高く検索数も多い相続系キーワードが予算を先に食い尽くし、本来採算の良い許認可の広告が表示されないという配分の歪みが起きます。

キャンペーンを分けておけば、月次の予算配分を案件タイプ単位で意思決定できるようになります。たとえば決算変更届が集中する時期に建設業関連へ予算を寄せる、相続は検討期間が長いので金額を抑えつつ年間を通して継続露出する、といった調整が可能になります。案件タイプごとに入札戦略を変えられる点も重要で、データが貯まりやすい許認可は自動入札へ、検索数の少ない相続のロングテールは手動運用のまま、という使い分けもキャンペーンが分かれていて初めて成立します。予算配分の判断単位と受任管理の単位を一致させることが、後述する粗利ベースの評価にもそのまま効いてきます。

業務専用LPを用意して広告文と見出しを一致させる

着地先は事務所トップページではなく、案件タイプごとの専用LPにします。相続LPなら手続きの流れと費用、相談者の不安に寄り添う文面と相談者の声を、許認可LPなら対応可能な許可の種類、標準処理期間を踏まえたスケジュール感、報酬額と法定費用の内訳を、それぞれ最初の画面で伝えます。広告文で約束した内容がLPの見出しにそのまま書かれていることが、CVRと品質スコアの両方を支えます。

LPを分けると、問い合わせフォームも案件タイプ別に持てるようになります。相続フォームには被相続人との関係や不動産の有無を、許認可フォームには業種・希望する許可・営業開始予定日を入れておけば、届いた時点で案件の中身と急ぎ度が判別でき、事務所側の初動対応が大幅に速くなります。フォームの入力項目は多すぎると離脱するため、判別に必要な最小限に絞るのがバランスの取りどころです。専用LPをすぐに複数用意できない場合でも、既存サイトの業務別ページに問い合わせフォームを設置して着地先にするだけで、トップページ着地よりは混線をかなり減らせます。完璧な形を待たず、分けられるところから分けていく進め方で十分です。

地域設定も案件タイプごとに変える

見落とされがちですが、配信地域の設計も案件タイプで変えるべき要素です。相続は面談を伴うことが多く、相談者は自宅や実家から通える範囲で事務所を探すため、事務所を中心とした来所圏に配信を絞るのが基本です。一方、建設業許可などの許認可は申請先が都道府県単位であることが多く、「県内の申請に対応できる事務所」として県全域に配信する方が理にかなっています。入管業務やオンライン完結できる手続きであれば、さらに広域への配信も選択肢になります。

キャンペーンを案件タイプ別に分けていれば、この地域設定の使い分けは設定画面上の操作だけで実現できます。逆に1キャンペーンに全業務を同居させていると、地域設定は全業務共通の妥協点しか選べず、相続では広すぎ、許認可では狭すぎるという中途半端な配信になります。地域の粒度が違うという一点だけでも、キャンペーンを分ける価値は十分にあります。

除外キーワードで相互流入を断つ

キャンペーンを分けたら、相互の除外キーワード設定で流入の混線を止めます。許認可キャンペーンには「相続」「遺言」「遺産」を、相続キャンペーンには「許可」「申請代行」「建設業」などを除外語として登録し、意図しないキャンペーンに検索が吸われるのを防ぎます。部分一致やインテントマッチを使う場合、この相互除外を怠ると、媒体の自動拡張が案件の境界を平気で越えてきます。

もうひとつ判断が必要なのが、「行政書士 ○○市」のような職業名単体キーワードの扱いです。この検索には相続も許認可も混ざっているため、どちらかの専用LPに着地させると半分の検索者にとってミスマッチになります。予算が限られているうちは職業名単体を思い切って停止し、案件が特定できるキーワードに絞る方が、混線を根本から断てます。運用を始めた後は、検索語句レポートを週次で確認し、意図とずれた語句を除外し続ける地道な管理が効いてきます。検索語句レポートの具体的な回し方は以下の記事で詳しく解説しています。

案件別導線の設計チェック項目

  • キャンペーン分割:相続・許認可・法人手続きが別キャンペーンで予算独立しているか
  • 着地先:広告文の訴求と専用LPの最初の見出しが一致しているか
  • 相互除外:各キャンペーンに他案件タイプの除外キーワードが入っているか
  • フォーム設計:届いた時点で案件タイプと急ぎ度が判別できる項目になっているか

案件タイプ別キーワードと広告文の勘所

導線の骨格ができたら、キーワードと広告文を案件タイプの検索行動に合わせて作り込みます。同じ事務所の広告でも、相続と許認可では拾うべき言葉も約束すべき内容も変わります。ここを共通の文面で済ませてしまうと、せっかく分けた導線の効果が半減します。

相続は状況語と地域で拾い無料相談への心理的ハードルを下げる

相続の検索は「相続 手続き 誰に頼む」「親 亡くなった 銀行口座」のように、職業名を含まない状況語から始まることが多いのが特徴です。「相続 行政書士」のような顕在キーワードだけでなく、手続き名や困りごとを表す言葉と地域名の掛け合わせまで広げて設計すると、競合がまだ薄い接点で出会えます。ただし状況語は検討初期の検索が多いため、入札は顕在語より抑えめにして、確度に応じた単価の傾斜をつけます。

広告文とLPでは、いきなり「依頼」を求めず、初回相談無料・費用は相談後に明示という安心材料を先に出すことが反応率を大きく左右します。相続の相談者は「これくらいのことで専門家に聞いていいのか」というためらいを抱えているため、相談のハードルを下げる文面が最初の仕事になります。あわせて、司法書士や税理士との業務の違いに触れ、登記や相続税申告が必要な場合の連携体制を示しておくと、どこに頼むべきか迷っている層の受け皿になれます。相続の検索者は「そもそも誰に頼めばいいのか」の段階でつまずいていることが多く、この交通整理をしてくれるページ自体が信頼の獲得につながります。

許認可は業種×許可名×地域の掛け合わせで確度を最優先する

許認可のキーワードは「建設業許可 申請代行 大阪」「古物商 許可 最短」のように、許可名と行動語の掛け合わせで検索意図がほぼ確定します。検索ボリュームは小さくても、この確度の高いロングテールを許可の種類ごとに積み上げるのが基本戦略です。広告文では、対応スピード・報酬額の目安・実績件数という事業者が比較する3点を具体的な数字で示します。標準処理期間など行政側の所要期間はGoogle広告の設定でどうにかなるものではないため、「申請書類の作成着手まで最短○日」のように事務所がコントロールできる速さを約束するのが誠実かつ効果的です。

また許認可は業種の言葉で検索されることも多く、「解体業 始める 許可」「中古車販売 開業 手続き」のような開業文脈のキーワードは、許可申請だけでなくその後の更新や変更届まで含めた長い取引の入口になります。更新期限の3〜6ヶ月前に検索が増える更新系キーワードも、新規系より競合が緩く、既存の許可業者という優良顧客に出会える狙い目です。広告表示の面では、サイトリンク表示アセットで「建設業許可」「産廃許可」「経審」など許可の種類ごとの入口を並べたり、構造化スニペットで対応業務を列挙したりすることで、検索結果上の占有面積を広げながら、クリック前に案件の振り分けを済ませることもできます。

士業広告ならではの表現ルールに気を配る

行政書士の広告は、弁護士や司法書士ほど厳格な広告規程があるわけではありませんが、行政書士法上の品位保持義務と業際の制約は常に意識する必要があります。特に「相続トラブルを解決」「交渉します」のような表現は、紛争性のある案件の代理を想起させ弁護士法との業際問題に触れかねません。相続分野の広告文は、書類作成と手続きサポートという行政書士の業務範囲に収まる言葉を選びます。

報酬表示にも注意が必要です。「○万円〜」という表示だけで実際には加算項目が多い構成は、景品表示法の有利誤認と受け取られるリスクがあるうえ、面談時の金額差で信頼を失います。広告とLPには基本報酬に含まれる範囲と、法定費用・加算が発生する条件を明記しておく方が、結果的に受任率を上げます。士業広告の表現チェックの考え方は、弁護士向けに整理した以下の記事が行政書士にもそのまま応用できます。

行政書士の広告文で確認しておきたい注意点

  • 業際表現:紛争解決・交渉・登記・税務申告を想起させる文言を使っていないか
  • 報酬表示:基本報酬の範囲と法定費用・加算条件をLPに明記しているか
  • 断定表現:「必ず許可が取れる」「審査に通る」など結果保証と読める文言がないか
  • 資格表示:広告主体が行政書士事務所であることと登録番号を明示しているか

問い合わせ数ではなく対応工数と粗利で評価する

案件別の導線ができると、次はどの案件に広告費を寄せるかという配分の意思決定が必要になります。このとき問い合わせ単価(CPA)の安さだけで判断すると、ほぼ確実に間違えます。行政書士の案件は、受任単価だけでなく1件を処理するのに必要な対応工数が案件タイプで大きく異なるからです。評価軸を粗利に揃えることで、広告は初めて事務所経営の道具になります。

受任単価と工数から許容CPAを逆算する

計算の考え方は難しくありません。案件タイプごとに、平均受任単価から外注費・法定費用の立替などの直接費を引き、そこに問い合わせから受任に至る割合を掛け合わせて、問い合わせ1件が生む期待粗利を出します。その期待粗利のうち広告費に回せる割合を決めれば、それが許容CPAです。たとえば建設業許可の新規申請で受任単価18万円・受任率50%なら、問い合わせ1件の期待売上は9万円で、許容CPAを期待売上の3割と置けば2.7万円まで払える計算になります。

ここに対応工数の視点を加えます。相続案件は面談・親族調整・金融機関対応で1件あたりの実働時間が重くなりがちで、受任単価が高くても時間あたり粗利では許認可の定型案件に劣ることがあります。事務所の人員が限られている場合、広告で増やすべきは売上ではなく時間あたり粗利の高い案件です。下の表のように案件タイプ別に一度数字を置いてみると、感覚で決めていた予算配分の歪みが見えてきます。この試算表は一度作って終わりではなく、実際の受任率や工数の実績値で四半期ごとに更新していくと、事務所の実力に合った許容CPAへ精度が上がっていきます。数字の置き方に自信がなければ、ハーマンドットの無料の広告アカウント診断で許容CPAの逆算からご一緒することも可能です。

試算項目相続手続き一式建設業許可(新規)会社設立
平均受任単価(例)30万円18万円8万円
問い合わせ→受任率(例)30%50%40%
問い合わせ1件の期待売上9万円9万円3.2万円
1件あたり想定工数25時間12時間5時間
許容CPA(期待売上の3割)2.7万円2.7万円+更新価値約1万円

電話とフォームを分けて計測し案件タイプ別にCVを見る

許容CPAを決めても、コンバージョン計測が混ざっていては配分判断ができません。行政書士への問い合わせは電話比率が高く、特に期限に追われた許認可の相談者はフォームより電話を選びます。フォームCVだけを見ていると許認可キャンペーンの成果を過小評価し、本来伸ばすべきキャンペーンの予算を削るという逆の判断をしてしまいます。電話番号は広告経由専用の計測番号を使い、キャンペーン別に入電を紐付けます。少なくともGoogle広告の電話表示オプション経由の発信と、LP上の電話番号タップは分けて計測できる状態にしておきたいところです。

さらに一歩進めるなら、問い合わせ時点ではなく受任時点の成果を広告側に戻す設計です。案件管理簿に「どのキャンペーン経由か」を1列足すだけでも、キャンペーン別の受任率と受任単価が集計でき、期待粗利ベースの予算配分が毎月更新できるようになります。問い合わせ時点の評価では同じに見えた2つのキャンペーンが、受任率まで追うと倍近い差を持っていた、という発見は士業の広告運用では珍しくありません。広告管理画面の中の数字だけで完結させず、事務所の受任データと突き合わせる習慣が、配分判断の精度を根本から変えます。電話コンバージョンの具体的な実装手順は以下の記事にまとめています。

少額予算から始める配分と外注の判断

ここまでの設計を、限られた予算の中でどう実行するかを最後に整理します。行政書士事務所の広告予算は月10万〜30万円程度から始まるケースが多く、大手代理店が前提とするような予算規模ではありません。少額だからこそ、案件を絞る決断が成果を左右します。

月10万円台なら許認可の得意分野1本に絞る

月10万円台の予算で相続と許認可の両方に広告を出すと、どちらも学習に必要なデータが貯まらず、中途半端な結果に終わりがちです。この予算帯での定石は、自事務所が最も得意とする許認可1分野に予算を集中させることです。許認可は検索意図が明確でロングテールのクリック単価が比較的抑えられ、受任までの期間が短いため、少額でも成果の手応えを早くつかめます。まず1分野で「広告費→問い合わせ→受任→粗利」の数字がつながる状態を作り、その利益で相続など検討期間の長い分野に広げるのが健全な順番です。

逆に、検討期間が長くクリック単価も高い相続から少額で始めると、成果が出る前に予算と気力が尽きる失敗が典型です。相続を主力にしたい事務所でも、広告の立ち上げ期は許認可や自動車関連などの回転の速い業務で広告運用の勝ちパターンを作る方が、結果的に相続広告の成功も早めます。相続分野は広告と並行してブログやセミナーなど時間をかけて信頼を積む施策の比重が高く、広告単独で完結させようとしないことも大切です。

自分で回すか士業案件に慣れた運用者へ任せるか

ここまでの設計は、時間さえかければ事務所自身でも実行できます。ただし検索語句の週次メンテナンス、案件タイプ別の入札調整、LPの改善検証を本業の合間に回し続けるのは現実には相当な負担で、開店休業状態のアカウントになっている事務所が少なくありません。月の広告費が20万円を超えてきたあたりからは、運用手数料を払ってでも専門の運用者に任せ、事務所の時間を受任対応に使う方が時間あたり粗利では合理的になるケースが多くなります。

外注する場合は、士業や店舗ビジネスのようなローカル×高単価案件の運用実績があるか、そして本記事で述べたような案件タイプ別の導線設計を提案してくるかを見極めてください。「問い合わせ数を増やします」としか言わない相手は、混線した問い合わせを量産するだけの可能性があります。初回の打ち合わせで受任単価や1件あたりの対応工数について質問してくる運用者であれば、本記事で述べた粗利ベースの評価を共有できる相手だと判断してよいでしょう。ハーマンドットでは受任単価と工数を踏まえた案件別設計を前提に、無料の広告アカウント診断で現状の配信構造を可視化するところからお手伝いしています。少額予算での代理店の選び方は以下の記事も参考になります。

外注前に必ず確認しておきたい事項

  • アカウント所有権:広告アカウントが自事務所名義で、解約時もデータが手元に残る契約か
  • レポート範囲:キャンペーン別のCPAだけでなく検索語句・LP別の数値まで開示されるか
  • 導線提案:案件タイプ別のキャンペーン分割とLP分離を初回提案に含んでいるか
  • 士業理解:業際・報酬表示など行政書士特有の表現制約を理解しているか

まとめ:案件別の導線設計が行政書士のリスティング広告の成否を分ける

行政書士のリスティング広告は、相続・許認可・法人手続きという性質の異なる検索需要を1つの入口に流し込んだ時点で、ほぼ勝負が決まってしまいます。逆にいえば、キャンペーン・LP・フォームを案件タイプ別に分け、受任単価と対応工数から逆算した許容CPAで予算を配分するだけで、同じ広告費でも事務所に残る粗利は大きく変わります。すでに出稿中で自分のアカウントの混線度合いを確かめたい場合は、無料の広告アカウント診断から現状把握を始めるのが近道です。本記事の要点を3つに絞ると次のとおりです。

  • 相続・許認可・法人手続きは検索者も緊急度も違うため、キャンペーンとLPを必ず分けて相互除外で混線を断つ
  • 広告の評価軸は問い合わせ数ではなく、受任率×受任単価×対応工数から逆算した時間あたり粗利に揃える
  • 少額予算は得意な許認可1分野への集中から始め、数字がつながってから相続など長期検討型へ広げる

まずは無料で広告アカウント診断を

ハーマンドットは、100社以上の広告運用支援実績をもとに、行政書士事務所をはじめとする士業・ローカルビジネスの検索広告設計を支援しています。既存アカウントをお持ちの場合は、キャンペーン構成・検索語句・LPの対応関係を拝見し、案件タイプの混線がどこで起きているかを具体的に指摘したうえで、受任単価と工数を踏まえた予算配分案までご提案します。

これから広告を始める事務所には、得意分野の選定と許容CPAの逆算から一緒に設計します。売り込みのための面談ではなく、診断結果はそのまま自社運用や他社への依頼にもお使いいただけます。初回相談は完全無料・所要時間30分・オンライン対応可能です。まずは現状のアカウント状況をお聞かせください。

一覧へ戻る