債務整理の検索広告設計|面談数ではなく受任単価で逆算する法律事務所の案件選別

債務整理分野のリスティング広告は、法律事務所のWeb集客のなかでも特に投資判断が難しい領域です。クリック単価は全業種平均を大きく上回る水準で推移しており、同じ「債務整理」という検索語の背後には、受任額が数十万円になる個人再生の相談者と、無料相談だけで終わる問い合わせ、すでに他事務所と契約済みの相談者が混在しています。面談件数だけを追いかける運用では、広告費が増えるほど事務局の対応工数ばかりが膨らみ、利益が残らないという事態が起こりがちです。
本記事では、債務整理のリスティング広告を「面談数」ではなく「受任単価」から逆算して設計する方法を解説します。任意整理・個人再生・自己破産・過払い金請求という案件種別ごとの経済性の違いを踏まえた許容CPAの決め方、受任につながる検索語と受任に至らない検索語の見極め、利益を守るための除外キーワード設計、そして広告成果を最終的に左右する電話一次対応までを一気通貫で扱います。
また、債務整理は日弁連(日本弁護士連合会)が広告と受任のあり方に規律を設けている分野でもあります。誇大広告や誤導的な表現は懲戒リスクに直結するため、獲得効率と適正広告の両立が大前提になります。広告運用の実務担当者だけでなく、事務所経営を担う弁護士の方にも判断材料として使っていただける内容にまとめました。
目次
債務整理リスティング広告を取り巻く市場環境
設計論に入る前に、債務整理という領域がリスティング広告の中でどのような位置にあるのかを整理しておきます。クリック単価の水準、媒体側の参入条件、業界団体の規律という3つの前提を押さえないまま出稿すると、予算設計も表現もすぐに行き詰まります。
クリック単価の相場と競争構造
弁護士・法律事務所関連のリスティング広告は、全業種の中でも最高水準のクリック単価で知られています。業界調査では全業種平均が1クリックあたり400円台とされるのに対し、弁護士関連キーワードは1,000〜1,500円が目安です。債務整理領域の内訳を見ると、「任意整理」や「借金減額」に関する語では平均1,300円を超える一方、「自己破産」系の語は500〜600円台にとどまり、同じ債務整理カテゴリでも検索語によってクリック単価に2倍以上の開きがあります。
競争構造の面では、全国対応の大手弁護士法人・司法書士法人が主要キーワードを高い入札単価で継続的に押さえており、中小規模の事務所が入札額の勝負だけで正面から挑むと消耗戦になります。後述するように、地域名の掛け合わせや案件種別の絞り込みで「勝てる面」を限定することが、予算規模で劣る事務所の基本戦略になります。単価が高い語ほど受任見込みが高いとは限らないという点も、この領域の予算配分を難しくしている要因です。
Google広告の債務関連サービスポリシーという参入条件
媒体側の条件も確認が必要です。Google広告は債務整理や債務管理計画に関する広告を「限定的に許可されるコンテンツ」と位置づけており、対象国では所定の認定を受けた広告主のみが配信できる仕組みになっています。配信を始める前に、Google広告ヘルプの債務関連サービスに関するポリシーで、日本の広告主に求められる要件と手続きの最新情報を必ず確認してください。
認定や審査への対応を怠ると、キャンペーン単位ではなくアカウント単位で配信が止まるリスクがあります。債務整理はもともと審査が慎重に行われるカテゴリのため、広告文やLPに断定的な救済表現があると不承認が続き、学習データが貯まらないまま時間だけが過ぎることも珍しくありません。ポリシー対応は運用テクニック以前の土台として扱うべきです。
なお、Yahoo!広告やMicrosoft広告にも金融・法律分野に固有の掲載基準があり、媒体を追加するたびに同様の確認が必要になります。Googleで問題なく配信できている広告文がそのまま他媒体で承認されるとは限らないため、媒体拡張の際は表現の共通化よりも各媒体の基準への個別対応を優先するのが安全です。
日弁連規程が求める適正広告と直接面談の原則
日弁連は2011年に「債務整理事件処理の規律を定める規程」を制定し、債務整理事件について誇大広告・誤導広告の禁止や、受任にあたって弁護士自らが依頼者と面談して事情を聴取すること(いわゆる直接面談の原則)などを定めています。過払い金請求が過熱した時期に広告経由の大量受任による処理不全や被害が問題化したことへの対応として生まれたルールで、広告表現だけでなく受任フローそのものに関わる規律です。
この規程がある以上、債務整理の広告導線は「広告→相談予約→弁護士との面談→受任」という流れが制度上の前提になります。広告で集めた相談者を事務職員の対応だけで受任処理する運用は規程違反のリスクを伴うため、面談キャパシティを無視した広告出稿はそもそも成立しません。広告費の上限が弁護士の面談対応力で決まるという発想は、後述する予算設計の章でも軸になります。
配信開始前に確認したい項目
- Google広告の債務関連サービスポリシーと認定手続きの要否
- 所属弁護士会・日弁連の広告規程と債務整理事件処理の規律
- 「必ず減額」「借金がゼロに」など断定的・誤導的表現の排除
- 広告主体の明示(事務所名・所属弁護士会・弁護士名の表記)
弁護士広告の表現規制については、媒体審査と日弁連規程の両面から点検する手順を以下の記事で詳しく解説しています。
面談数ではなく受任単価で逆算するKPI設計
債務整理広告の成否を分ける最大の分岐点は、キーワードや広告文の巧拙ではなくKPIの置き方です。ここを「面談数」や「問い合わせ数」に置いたまま運用すると、数字上は好調に見えるのに利益が出ないアカウントができあがります。
面談数KPIが引き起こす採算悪化
広告レポートで語られるコンバージョンは、通常フォーム送信や電話発信の件数です。しかし債務整理では、その中身が受任に直結するとは限りません。無料相談だけを目的とした問い合わせ、すでに債務整理中の方からの追加質問、他事務所と比較中の相談などが相当な割合を占め、面談に進んでも受任に至るのは一部です。面談1件あたりの獲得単価が2万円と一見優秀でも、受任率が20%なら受任1件に4万円ではなく10万円の広告費がかかっている計算になります。
さらに面談には弁護士の時間という最も高い原価が投入されます。受任見込みの薄い面談が増えるほど、既存案件の処理時間が圧迫され、事務所全体の生産性が下がります。評価指標は「面談CPA」ではなく「受任1件あたり広告費(受任CPA)」と「受任単価に対する広告費率」に置くべきです。この転換だけで、伸ばすべきキーワードと削るべきキーワードの判断が大きく変わります。
この評価を実務で回すには、面談の受付時に流入キーワードやキャンペーンを記録し、受任・不受任の結果と紐づける受任台帳の整備が欠かせません。高度なツールは不要で、スプレッドシートに面談日、流入経路、案件種別、受任可否、報酬見込み額を記録するだけでも、翌月にはキーワード単位の受任CPAが見えるようになります。広告の管理画面だけを眺めていても、この数字は永遠に手に入りません。
受任単価から許容CPAを逆算する手順
逆算の手順は難しくありません。まず案件種別ごとの平均受任単価を過去実績から出します。次に、受任単価のうち広告費に充ててよい比率を決めます。仮に個人再生の平均受任単価が40万円で、広告費率を売上の20%以内と設定するなら、許容できる受任CPAは8万円です。面談からの受任率が25%であれば面談CPAは2万円まで、LPのコンバージョン率が2%であれば許容クリック単価は400円までと、媒体の管理画面で使える数値に落ちていきます。
重要なのは、この逆算式を案件種別ごとに別々に持つことです。債務整理をひとまとめにした平均値で許容CPAを決めると、単価の低い案件が混ざった瞬間に採算が崩れます。任意整理中心の相談が増えている月と個人再生の相談が多い月では、同じ面談数でも売上がまったく違うためです。キーワードやキャンペーンを案件種別に対応させておけば、この式がそのまま入札とキーワード選別の判断基準になります。
広告費率を何%に置くかは事務所の成長方針によって変わります。手持ち案件が少なく稼働に余裕がある立ち上げ期は30%近くまで許容して件数を優先し、面談枠が埋まり始めたら15〜20%に絞って案件の質を上げるというように、同じ事務所でも局面によって適正値は動きます。固定の正解を探すのではなく、四半期ごとに見直す変数として扱ってください。
案件種別ごとの経済性の違い
逆算の前提となる案件種別ごとの経済性を整理します。金額はあくまで一般的な目安であり、事務所の報酬基準や地域によって変動しますが、構造の違いを掴むには十分です。
| 案件種別 | 報酬の目安 | 経済性の特徴 | 広告との相性 |
|---|---|---|---|
| 任意整理 | 債権者1社あたり着手金2〜5万円+解決報酬 | 単価が債権者数に左右され読みにくい | 件数は取りやすいが単価管理が必須 |
| 個人再生 | 1件30〜50万円程度 | 住宅資金特別条項の相談は緊急度が高い | 高単価で許容CPAを大きく取れる |
| 自己破産 | 1件20〜40万円程度 | 法テラス利用や司法書士との価格競争あり | クリック単価は低いが価格比較されやすい |
| 過払い金請求 | 回収額の2割前後の成功報酬 | 完済者は持ち出しが少なく反応しやすい | 市場自体は縮小傾向で先細り |
この表から分かる通り、同じ「債務整理」の相談でも1件の価値には数倍の差があります。広告アカウント側でも案件種別ごとにキャンペーンを分け、それぞれの許容CPAで入札を制御する構成が合理的です。自事務所の受任データがまだ整理できていない場合は、無料の広告アカウント診断で現状の流入がどの案件種別に寄っているかを可視化するところから始めるのが近道です。
広告費を売上ではなく利益から逆算する考え方は、LTVとCACを使った利益管理のフレームで整理すると事務所全体の投資判断にも応用できます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
案件選別につながるキーワード設計
KPIを受任単価基準に置き換えたら、次はキーワード側でその方針を実装します。債務整理の検索語は量が多く見えますが、受任につながる語は一部に偏っています。検索意図の段階と案件種別のシグナルという2つの軸で仕分けるのが基本です。
検索意図の4段階と入札の濃淡
債務整理関連の検索語は、知識収集、対処法の検討、費用の比較、依頼先探しという4つの段階に整理できます。「債務整理とは」「借金 返せない どうなる」は知識収集段階、「任意整理 個人再生 違い」は対処法の検討段階、「債務整理 費用 相場」は費用比較段階、「債務整理 弁護士 相談」「地域名 債務整理」は依頼先探しの段階に対応します。段階が進むほど検索ボリュームは減りますが、面談予約への転換率は段違いに高くなります。
限られた予算で受任を最大化するなら、依頼先探し段階の語に予算の7割前後を集中させるのが定石です。知識収集段階の語はクリック単価が比較的安く件数も稼げるため放置すると予算を大量に消化しますが、無料の情報を求める層が中心で受任にはほとんど寄与しません。この段階の語を買うのは、面談キャパシティに余裕があり、比較検討層向けのリマーケティング母集団を作る意図がある場合に限定すべきです。
マッチタイプの使い分けも段階に対応させます。依頼先探し段階の主要語はフレーズ一致や完全一致で確実に押さえ、部分一致は検索語句レポートを監視できる体制がある場合に発見用として限定的に使うのが現実的です。債務整理は関連語の裾野が広いため、部分一致を無監視で放置すると、後述する除外対象の検索語へ際限なく拡張されていきます。
受任につながりやすいキーワード群
依頼先探し段階の中でも、受任単価の高い案件を示すシグナルを含む語は優先度を上げます。代表的なのは「住宅ローン 残して 借金整理」「個人再生 弁護士 地域名」のように住宅資金特別条項のニーズがうかがえる語や、「給料 差し押さえ 止めたい」のように緊急性が明確な語です。緊急性の高い相談者は事務所の比較に時間をかけず、最初に丁寧に対応した事務所へそのまま依頼する傾向があります。
地域名との掛け合わせも重要です。日弁連規程の直接面談原則がある以上、相談者の生活圏と事務所の所在地が近いことは受任率に直結します。大手法人が全国配信で薄く広く買っている検索面でも、「地域名×債務整理 弁護士」の掛け合わせ語では地元事務所の広告文とLPのほうが具体性で勝てるケースが多く、入札額で劣っていても品質側の評価で上位表示を取れる余地があります。自事務所の商圏に絞った配信は、クリック単価の抑制と受任率の改善を同時に実現します。
配信時間帯の調整も受任率に効きます。債務整理の検索は督促の電話が途切れた夜間や、給料日前後、ボーナス支給後の返済見直しのタイミングに増える傾向があり、深夜帯の検索者は切迫度が高い層です。夜間はフォーム予約に誘導する広告文へ切り替える、翌朝の折り返し時間を明示するなど、時間帯ごとに受け皿を変える運用まで踏み込むと、同じキーワードでも面談化率が変わってきます。
クリックを集めても受任に至らないキーワード群
一方で、検索ボリュームが大きくクリック単価も高いのに、受任品質が安定しない語群があります。典型例が「借金減額 シミュレーター」「減額診断」系の語です。この面はアフィリエイト型の診断LPが上位を占めており、ユーザー側も匿名診断を試す感覚で検索しているため、弁護士との面談予約という重い行動には進みにくい構造があります。クリック単価が最高値圏である点も踏まえると、費用対効果の検証を経ずに買い続けるのは危険です。
「債務整理 デメリット」「自己破産 その後 生活」のような不安解消系の語も、記事コンテンツで受け止めるべき検索意図であり、広告で買うと持ち出しが先行します。これらは除外するか、上限クリック単価を大きく下げた別キャンペーンに隔離し、依頼先探し段階の語と学習データが混ざらないようにする運用が安全です。
迷いやすいのが「過払い金」関連の扱いです。テレビCMの影響で認知度は高いものの、対象となる完済者・高金利時代の借入経験者は年々減っており、市場全体が縮小しています。過去に大きな成果を出したキーワード群だからといって現在も同じ配分を続けるのではなく、直近の受任実績で配分を見直す対象として扱うべき領域です。
除外キーワード設計は利益設計そのもの
債務整理の広告運用では、どの語を買うかと同じくらい、どの語を買わないかが利益を左右します。除外キーワードの整備は地味な作業に見えますが、受任単価逆算の考え方をアカウントに実装する手段そのものです。
除外候補の3分類
除外すべき検索語は、大きく3つの層に分類できます。第一に、すでに手続き中の層です。「債務整理中 クレジットカード」「任意整理中 借入」のような語は、既存の依頼者が生活上の疑問を調べているケースが大半で、新規受任にはつながりません。第二に、自力解決志向の層です。「債務整理 自分で」「過払い金 個人で請求」といった語の検索者は費用をかけない前提で動いており、面談に進んでも受任率が極端に低くなります。
第三に、情報収集・興味本位の層です。「官報 見方」「芸能人 自己破産」のような語は債務整理の当事者ですらない検索が中心です。ハーマンドットが法律事務所アカウントを診断してきた経験では、除外整備が不十分なアカウントは検索語句の相当な割合がこの3分類に流れており、広告費の2〜3割が受任可能性のほぼない層に消えていた例もあります。除外リストの初期整備だけで受任CPAが目に見えて下がることは珍しくありません。
注意したいのは、除外の目的が広告費の節約そのものではなく、自動入札の学習を受任シグナルに集中させることにある点です。非受任層のコンバージョンが混ざったまま学習が進むと、媒体は「反応しやすいが受任しない層」へ配信を寄せていきます。除外は配信の入口を絞ると同時に、学習データの質を守るための投資と捉えると、優先度を落とさずに続けられます。
除外登録を検討したい語句の例
- 手続き中シグナル:「債務整理中」「任意整理中」「受任通知 その後」
- 自力解決シグナル:「自分で」「個人で」「やり方」「書式」
- 興味本位シグナル:「官報」「芸能人」「体験談 ブログ」
- 求人・同業シグナル:「事務員 求人」「パラリーガル」「研修」
- 費用をかけない前提:「無料 診断 匿名」「法テラス 無料」
検索語句レポートの週次運用
除外リストは一度作って終わりではありません。後払いサービスや少額融資アプリなど新しい借入手段が次々に登場するため、それらの固有名詞を含む検索語が想定外の流入経路として現れます。部分一致やP-MAXの拡張を使っている場合はなおさら、検索語句レポートを週次で確認し、受任につながらない新出語を除外へ、受任シグナルのある新出語をフレーズ一致や完全一致へ昇格させるサイクルを回す必要があります。
このとき、除外判断の基準を担当者の感覚ではなく前章の3分類と許容CPAに紐づけておくと、担当者が変わっても判断がぶれません。除外・昇格・意図分類を週次で回す具体的なフローは、以下の記事で手順書として整理しています。
LPと電話一次対応で受任率を守る
キーワードと除外の設計で流入の質を高めても、受け皿であるLPと電話対応が弱ければ受任CPAは改善しません。債務整理は相談者の心理的ハードルが高い分野であり、クリック後の体験設計が他業種以上に成果を左右します。
債務整理LPに必要な構成要素
債務整理のLPで最初に必要なのは、解決策の提示ではなく共感です。督促や返済に追われている相談者は自責の感情を抱えていることが多く、冒頭で「借金の相談は恥ずかしいことではない」という姿勢を示せるかどうかで読み進めてもらえる率が変わります。その上で、任意整理・個人再生・自己破産という選択肢の違い、費用の明示と分割払いの可否、相談から解決までの流れ、担当弁護士の顔写真と経歴を順に提示します。
費用面では、着手金の金額だけでなく相談無料と費用の分割払い対応を明確に打ち出すことが予約率を大きく左右します。手元資金がないことこそが相談動機だからです。また、日弁連規程を踏まえ、報酬基準の表示や誇大にならない実績表現にも注意が必要です。審査落ちを繰り返すLPは配信の安定性まで損ないます。
フォーム設計にも債務整理ならではの配慮が必要です。入力項目は氏名(匿名・仮名可の明示があるとなお良い)、連絡先、連絡希望時間帯の最小構成にとどめ、借入総額や債権者名を初回フォームで細かく聞かないことが重要です。詳細を書かせるほど途中離脱が増えるうえ、正確な数字は面談で確認すれば足ります。送信後の完了画面には、折り返し連絡のタイミングと非通知や事務所名を出さない連絡への配慮を明記しておくと安心感につながります。
債務整理LPの点検項目
- 冒頭:相談者の状況への共感と秘密厳守の明示
- 選択肢:任意整理・個人再生・自己破産の違いの平易な説明
- 費用:相談無料、着手金・報酬の目安、分割払い可否
- 信頼:弁護士の顔写真・経歴・所属弁護士会の表記
- 導線:電話とフォームの両方を全スクロール位置に配置
電話一次対応が受任率を左右する
債務整理の相談者には、日中は職場で電話できず夜間や昼休みに検索して発信するという行動特性があります。せっかく広告費をかけて入電を獲得しても、営業時間外で誰も出ない、折り返し予定だけ聞いて切ってしまう、といった一次対応では面談化率が大きく落ちます。折り返し連絡は着信拒否や電話に出ないケースが多く、入電のその場で面談日時を確定できるかどうかが受任率の分水嶺になります。
受付スクリプトは、聞くべき項目を債権者数、借入総額、収入状況、住宅ローンの有無程度に絞り、ヒアリングよりも面談予約の確定を優先する構成にします。詳細な事情聴取は弁護士との面談で行えばよく、一次対応で根掘り葉掘り聞くほど相談者の心理的負担が増えて離脱します。夜間・土日の入電が多い事務所では、受付代行サービスの併用や予約フォームへの誘導SMSなど、取りこぼしを減らす仕組みも検討に値します。
電話コンバージョンの計測設計
債務整理はフォームよりも電話経由の相談が多い分野のため、電話コンバージョンを計測できていないアカウントは成果の大半が見えていない状態になります。スマートフォンでの電話番号タップの計測に加え、通話時間による足切りで営業電話や間違い電話を除外し、さらに面談化・受任に至った入電をオフラインコンバージョンとして広告側に戻す設計まで整えると、受任単価逆算の運用が初めて機能します。
通話内容の録音や要約を一次対応の改善に使う視点も有効です。面談化した入電とそうでない入電のやり取りを比較すると、受付側の言い回しや案内の順序に改善点が見つかることが多く、スクリプトの更新材料になります。広告側の改善が頭打ちになったとき、最も伸びしろが残っているのは電話対応であるケースは、債務整理に限らず電話商談型の業種に共通する傾向です。
コールトラッキングの導入から広告媒体への実装、店舗・事務所導線での運用までは、以下の記事で具体的な設定手順を解説しています。
広告費の掛け方は受任キャパシティから決める
最後に、月々の広告予算をどう決め、成果をどの時間軸で評価するかを整理します。債務整理では「出せるだけ出す」も「様子見で少額だけ」も、どちらも失敗パターンになりがちです。
面談キャパシティを起点にした予算設計
債務整理の広告予算には、他業種にはない上限が存在します。直接面談の原則がある以上、受任には弁護士本人の面談時間が必要であり、弁護士1人が既存案件を処理しながら対応できる新規面談数には物理的な限界があるからです。面談枠を超えて相談を集めると、予約が1週間先になり、その間に相談者は督促に耐えかねて他事務所へ流れます。キャパシティ超過の広告費は無駄になるだけでなく、対応遅延によって受任率まで下げるという意味で有害です。
したがって予算は、月に対応可能な面談数から逆算します。面談可能数が月20件、目標受任率が30%、面談CPAの実績が2万円なら、月予算の上限はおよそ40万円という計算になります。参考までに、予算帯ごとの現実的な設計イメージを示します。
| 月予算帯 | 配信範囲の目安 | 狙う中心案件 | 想定される月間面談数 |
|---|---|---|---|
| 〜30万円 | 事務所商圏の市区レベルに限定 | 個人再生など高単価案件に集中 | 5〜15件 |
| 30〜80万円 | 都道府県レベル+隣接商圏 | 個人再生+任意整理の併用 | 15〜40件 |
| 80万円〜 | 広域配信+指名検索の防衛 | 全案件種別+比較検討層の刈り取り | 40件以上(複数弁護士体制が前提) |
表の数値は商圏の競争環境によって変動する目安ですが、予算を増やす前に面談体制を増やすという順序は共通です。予算規模に対して配信範囲が広すぎる、あるいは全案件種別を薄く追いかけているアカウントは、まず絞り込みから着手すると同じ予算でも受任数が変わります。
季節性の考慮も予算計画に含めておきたい要素です。ボーナス払いの返済が重なる夏冬の後、年度替わりの生活環境の変化、長期休暇明けなど、債務の見直しが増えるタイミングでは検索需要と競合の入札が同時に強まります。年間を均等割りにした予算ではなく、需要期に厚く配分し、閑散期には指名検索の防衛と高単価案件の語だけに絞るといったメリハリをつけると、同じ年間予算でも受任総数を積み増せます。
効果検証の時間軸と撤退基準
債務整理では、広告クリックから面談、受任、着手金の入金までに数週間から1〜2ヶ月のずれが生じます。クリックが発生した月の管理画面の数字だけで良し悪しを判断すると、実際には受任が積み上がっているキーワードを早計に止めてしまう事故が起こります。月次レポートには前月分の面談の受任結果を反映させ、キーワード単位・キャンペーン単位の受任CPAを更新し続ける運用が必要です。
代理店に運用を委託している場合は、この受任データの受け渡しを月次の定例に組み込めるかどうかが委託先選びの分かれ目になります。事務所側が面談結果を渡さなければ代理店は面談数でしか最適化できず、逆に代理店側に受任ベースの評価習慣がなければデータを渡しても活かされません。契約前に、受任CPAでのレポートに対応できるか確認しておくとミスマッチを防げます。
継続・撤退の判断は、最低でも3ヶ月分の受任データが揃ってから行うことを推奨します。学習期間中の変動と構造的な不採算を区別するには、それだけの期間が必要だからです。現在の代理店レポートが面談数までしか追えていない、受任データを広告側に戻す仕組みがないという場合は、広告アカウントの無料診断で計測と評価軸のギャップを確認することをおすすめします。債務整理以外の分野も含めた法律事務所全体の有料集客設計は、以下の記事で体系的に解説しています。
まとめ:債務整理の広告は受任単価からの逆算で決まる
債務整理のリスティング広告は、クリック単価の高さと相談の質のばらつきゆえに、面談数を追う運用では利益が残りません。案件種別ごとの受任単価から許容CPAを逆算し、キーワードの取捨・除外・電話対応までを同じ物差しで貫くことが、この分野で広告投資を成立させる唯一の道筋です。日弁連規程が求める適正広告と直接面談の原則は制約であると同時に、面談体制を整えた事務所にとっては広告勝負を単純な資金力競争にしない防波堤でもあります。
- KPIは面談数ではなく受任CPAと広告費率に置き、案件種別ごとに許容CPAを逆算する
- 依頼先探し段階の語に予算を集中し、手続き中・自力志向・興味本位の3分類を除外で遮断する
- 電話一次対応と受任データの広告側への還元まで整えて、初めて逆算運用が機能する
まずは無料で広告アカウント診断を
ハーマンドットでは、法律事務所を含む多数の広告アカウントを診断してきた知見をもとに、債務整理広告の無料アカウント診断を実施しています。検索語句の受任可能性の仕分け、案件種別ごとの許容CPAとの乖離、電話コンバージョン計測の不備など、受任単価の視点でアカウントのどこから利益が漏れているかを具体的にレポートします。
現在の運用が面談数ベースの評価にとどまっている場合、除外設計と計測の整備だけで受任CPAが改善する余地が残っていることがほとんどです。代理店に任せている場合のセカンドオピニオンとしてもご利用いただけます。診断結果を受けての対応を自社で進めるか、運用ごと委託するかはその後にご判断いただけば問題ありません。
初回相談は完全無料・所要時間30分・オンライン対応可能




