この広告の作成方法ラベルは AI生成クリエイティブの承認基準をどう変えるか

「この広告の作成方法」は、Googleが2026年7月9日に公式ブログで発表したAI利用の開示表示です。Google検索・YouTube・Discoverに配信された広告について、その広告がAIで作成または編集されたのかどうかを、利用者がマイアドセンターのパネルから確認できるようになりました。2026年8月時点で段階的にグローバル展開が進んでおり、閲覧そのものは世界中の利用者に開かれています。
広告主にとって重要なのは、機能が増えたことではありません。これまで社内でどう作られたかを外から知る手立てがなかった制作工程が、限定的とはいえ利用者の側から覗ける状態になった、という一点です。しかもGoogleの生成AIツール由来のアセットは自動で開示される場合がある一方、サードパーティのAIツールで制作したクリエイティブについては、広告主自身がGoogleの開示設定で「AIを使用した」旨を申告する必要があります。つまり表示責任も申告責任も広告主側に置かれています。
この記事では、ハーマンドットが100社超の広告運用支援で実際に使っている承認設計の考え方をベースに、ラベル表示の対象範囲の読み方、広告主が確認すべき表現リスク、AI生成素材と人手制作素材を切り分ける管理台帳の作り方、ブランドガイドラインとの整合、そして社内承認フローの見直しまでを、実務の手順に落として整理します。制度の紹介で終わらせず、来週から回せる形にすることを目的にしています。
この記事の要点
- 開示の仕組み:Google検索・YouTube・Discoverの広告に、マイアドセンター内の「この広告の作成方法」セクションが追加された(2026年7月9日発表・2026年8月時点で段階展開中)
- 責任の所在:Google純正AI由来のアセットは自動開示され得るが、外部AIツール由来のクリエイティブは広告主の自己申告が前提で、Google側の独立検証は行われない
- 地域差:開示情報の閲覧は世界中で可能。EU・インド・ニューヨーク州では広告そのものにラベルがオーバーレイ表示される
- 実務の勘所:ラベル設定はアセット単位。したがって管理すべき単位も「キャンペーン」ではなく「アセット」に変わる
- やるべきこと:AI利用の管理台帳を作り、ブランドガイドラインにAI条項を足し、入稿前の承認フローに申告判断を組み込む
この広告の作成方法ラベルはGoogleが広告のAI利用を利用者に開示する仕組み
「この広告の作成方法」とは、Google検索・YouTube・Discoverに配信された広告について、その広告がAIで作成または編集されたかどうかを利用者が確認できる開示セクションのことです。広告の三点メニューや情報アイコンから開くマイアドセンターのパネル内に新設されました。Googleは2026年7月9日の公式ブログでこの導入を告知しており、以降、段階的にグローバル展開が進んでいます。
従来からGoogleには「広告主について」の情報開示があり、誰が出稿しているかは追えました。今回加わったのは、誰が出したかではなく、どう作られたかという情報です。広告の内容そのものを審査する仕組みとは別のレイヤーで、制作工程に関する属性が広告に紐づくようになった、と捉えると位置づけを見誤りません。審査に通るかどうかと、AI利用が開示されるかどうかは、別々に判断される話です。
背景には規制動向があります。EU AI Actの透明性義務は施行時期が迫っており、合成コンテンツの開示を求める流れは各国で強まっています。Googleは2024年に政治広告に限定して合成コンテンツの透明性ルールを始めていましたが、今回それを一般の商用広告へ拡大した形です。規制対応を待ってから動くのではなく、規制が来ても崩れない社内基準を先に作るのが、実務としては最も安く済みます。
開示情報が表示される面と閲覧の導線
対象面はGoogle検索、YouTube、Discoverの三つです。利用者は広告右上の三点メニューから「この広告の作成方法」を開き、AIが作成または編集に使われたかどうかを確認します。逆に言えば、AIで作成・編集されたアセットを含まない広告には、このセクション自体が現れません。パネルが出ること自体がAI利用のシグナルになる、という理解が正確です。
広告主側から見ると、この導線は「熱心な一部の利用者しか見ない」ものに映るかもしれません。ただし競合他社、業界メディア、消費者団体、そして自社の営業現場は確実に見ます。実際、新機能が出た直後は競合クリエイティブの調査ついでにパネルを開く運用者が増えます。閲覧数の多寡ではなく、見られたときに説明できる状態かどうかで備えを決めるべき領域です。
EU・インド・ニューヨーク州で広告そのものにラベルが載る意味
開示情報の閲覧は世界中で可能ですが、EU・インド・ニューヨーク州では、地域の要件に応じて広告そのものにラベルがオーバーレイ表示されます。日本国内向けの配信では2026年8月時点でパネル内の開示にとどまりますが、海外展開している事業者や、越境ECのようにEU圏へ配信が伸びる可能性がある事業者は、クリエイティブの見え方が変わる前提で設計しておく必要があります。
オーバーレイが載ると、ビジュアルの構図によっては訴求要素がラベルに隠れます。特に画像の四隅にロゴや価格を置く設計は影響を受けやすく、配信国によって印象が変わってしまいます。海外配信を含むアカウントでは、ラベルが重なっても訴求が壊れないセーフエリアを制作指示に入れておくと、後からの作り直しを避けられます。
| 区分 | 開示情報の確認方法 | 広告上のラベル表示 |
|---|---|---|
| 日本を含む多くの国・地域 | マイアドセンターの「この広告の作成方法」 | なし(パネル内での開示のみ) |
| EU | マイアドセンターの「この広告の作成方法」 | あり(広告にオーバーレイ表示) |
| インド | マイアドセンターの「この広告の作成方法」 | あり(広告にオーバーレイ表示) |
| ニューヨーク州 | マイアドセンターの「この広告の作成方法」 | あり(広告にオーバーレイ表示) |
自動開示と自己申告で表現責任の所在が分かれる
広告主にとって最重要の論点は、開示のトリガーが二系統に分かれていることです。Googleの生成AIツールで作成・編集したアセットは自動で開示される場合がある一方、サードパーティのAIツールで制作したクリエイティブは、広告主がGoogleの開示設定で「AIを使用した」旨を申告しない限り開示されません。この非対称が、そのまま責任の非対称になります。
自動開示側は、極端に言えば広告主が何もしなくても情報が出ます。だからこそ「知らないうちに開示されていた」という事故が起きます。Performance Maxやアセット自動生成、画像の生成拡張といった機能を有効にしているアカウントでは、担当者が意図せずAI由来のアセットを配信に混ぜている可能性があり、まずそこを棚卸しするのが出発点になります。
自己申告側はもっと重い問題を抱えます。申告するかどうかの判断が広告主に委ねられ、Googleが独立に検証する仕組みは用意されていないためです。申告しなければ表示されない、という状態は「申告しない自由」ではなく「申告しなかった説明責任」を生みます。後から外部指摘を受けたときに、判断の根拠を出せるかどうかが分かれ目になります。
ここで重要なのは、Googleのヘルプ自身が、AIラベル設定を使ったからといって特定の法規制への準拠が保証されるわけではない旨を明記している点です。プラットフォームの機能は開示の器であって、法務判断の代替ではありません。媒体側の設定と、自社の法務・広報としての判断は、別々に記録を残す運用にしておくのが安全です。
| 制作手段 | 開示のされ方 | 広告主に必要な作業 | 起きやすい事故 |
|---|---|---|---|
| Googleの生成AIツール(アセット生成・画像編集など) | 自動で開示される場合がある | 追加操作は原則不要。ただし何が生成されたかの把握は必要 | 自動生成の有効化を把握しておらず、開示に気づかない |
| サードパーティのAIツール(外部の画像・動画・文章生成) | 広告主が申告した場合のみ開示 | Google広告などのAIラベル設定でアセット単位に申告 | 制作会社任せで申告漏れ。判断の記録も残っていない |
| AIを使わない制作(撮影・人手デザイン・人手コピー) | 開示対象外 | 申告は不要。ただし「使っていない」証跡は残す | AI利用の有無を後から誰も特定できない |
Google純正ツール由来のアセットは広告主の操作なしで開示され得る
Google広告の自動化機能は年々アセット生成の比重を増しており、テキストアセットの自動作成、画像の生成、静止画のアニメーション化などが標準機能として組み込まれています。これらを一度でも有効化していれば、生成物が配信に乗っている可能性があります。アカウント設定の「アセットの自動作成」や、Performance Maxのアセットグループを開き、どれが生成由来かを確認するところから始めてください。
この確認は、単に開示の有無を知るためだけの作業ではありません。生成された表現が自社の言い回しとして許容できるものかを、あらためて人の目で見る機会になります。自動生成は便利ですが、業種によっては表現の粒度が合わないことがあり、開示が付く前提になったことで、その粗さが外から推測されやすくなりました。
サードパーティAIの申告は広告主の判断に委ねられている
外部のAIツールを使う場合、判断のグレーゾーンが一気に広がります。背景を生成で差し替えたバナー、AIでアップスケールした素材、コピーの叩き台をAIで作って人が全面的に書き直した広告文。どこからが「AIで作成または編集された」に当たるのかは、2026年8月時点の公開情報では細部まで明文化されていません。
実務では、線引きを社内で決めて明文化するしかありません。ハーマンドットが支援先に勧めているのは、判断に迷う場合は申告する側に倒すという原則です。開示して不利益になる範囲は限定的である一方、開示しなかった場合の説明コストは案件ごとに膨らみます。この非対称性を踏まえると、迷ったら申告のほうが総コストは低く収まります。
自動化された生成アセットの承認責任をどこまで広告主側で引き取るかという論点は、利用規約の観点からも整理しておくと判断が早くなります。
ラベルの対象範囲はアセット単位で決まる
AIラベルの設定はアセット単位で行います。キャンペーン単位でも広告グループ単位でもなく、画像・動画・テキストといった個々のアセットに対して「AIで作成または編集された」という属性を付ける仕組みです。この粒度を最初に理解しておかないと、社内の管理単位とプラットフォームの管理単位がずれ、後から突き合わせができなくなります。
アセット単位である以上、同じキャンペーンの中にAI由来のアセットと人手制作のアセットが混在する状態が普通に起こります。むしろ現場では、写真は撮影、背景の一部は生成、コピーはAI下書きに人の手を入れた、といった混成が主流です。管理台帳をキャンペーン軸で作ると必ず破綻するので、最初からアセットIDを主キーにして設計してください。
もうひとつ見落としやすいのが、アセットの再利用です。一度作った画像を別キャンペーンや別媒体に流用したとき、AI利用の属性も一緒に運ばないと、片方だけ申告済みという不整合が生まれます。素材フォルダのファイル名や管理シートに属性を持たせておけば、流用のたびに判断し直す手間がなくなります。
設定はアセットライブラリと入稿画面の両方から触れる
Google広告では、アセットライブラリからまとめてラベルを設定する方法と、キャンペーン作成やアセット追加の流れの中で個別に設定する方法があります。既存アカウントの棚卸しにはライブラリからの一括確認が向いており、新規制作分は入稿の流れで確定させるのが実務的です。棚卸しと新規運用で入口を分けておくと、担当者が変わっても手順が崩れません。
キャンペーン マネージャー 360では、クリエイティブ作成時のAIラベルのプルダウンから指定します。Merchant CenterやDisplay & Video 360、Google Ads Editorも対象に含まれており、扱う媒体が複数にまたがる事業者ほど、どこで設定するかを一覧にしておく価値があります。設定場所がばらけたまま運用すると、必ずどこかで抜けます。
対象プロダクトごとに設定場所が違う
対象プロダクトはGoogle広告、Display & Video 360、キャンペーン マネージャー 360、Merchant Center、Google Ads Editorです。設定の入口も画面名も揃っていないため、運用担当が複数いる組織では、プロダクトごとの担当と確認タイミングを決めておかないと責任が宙に浮きます。棚卸しの初回だけは、プロダクト横断で一気に見るのが結局早いというのが支援現場での実感です。
画像アセットの仕様そのものを見直すタイミングでもあります。ラベル前提でクリエイティブの構図を組み直すなら、入稿サイズや切り抜きの扱いを同時に整理したほうが手戻りが減ります。
広告主が確認すべき表現リスクは三つの層に分けて洗い出す
AI利用が見える前提になると、確認すべきリスクは「表現の中身」だけでは足りなくなります。実務では、事実性のリスク、権利処理のリスク、そして開示によって受け手側に生じる解釈のリスクという三つの層に分けて棚卸しすると、抜けが出にくくなります。層ごとに責任を持つ部署が違うので、分けること自体に意味があります。
ひとつ目の事実性は、生成物が事実と食い違う可能性の管理です。存在しない機能を描いた製品画像、実在しない受賞歴を匂わせるコピー、実物と異なる色や形状の再現。生成AIは自然な出力を作るのが得意なぶん、誤りも自然に見えます。景品表示法上の優良誤認や有利誤認は、AIかどうかに関わらず広告主の責任です。
ふたつ目は権利処理です。学習データ由来の類似、既存キャラクターやロゴへの近似、実在人物に似た顔の生成といった論点が絡みます。人物が写っているように見える生成画像は、モデルリリースが存在しないぶん、実写以上に確認の手間がかかると考えたほうが実態に合います。
三つ目が今回新しく増えた層で、開示されたときに受け手がどう解釈するかというリスクです。医療、金融、教育、士業のように信頼性が購買判断の中心にある業種では、「この広告はAIで作られた」という情報が単なる事実以上の意味を帯びます。業種によって開示の重みが違うことを前提に、AIを使う工程を選ぶという発想が必要になります。
開示前提で見直したい表現チェック
- 事実性:製品の外観・機能・実績が生成物と実物で一致しているか、原稿と現物を突き合わせて確認する
- 権利:人物・ロゴ・キャラクターに似た要素がないか、生成画像は実写より厳しめに見る
- 体験訴求:使用者の感想やビフォーアフターを生成物で表現していないか。体験の再現は開示との相性が特に悪い
- 規制業種:医療広告ガイドラインや薬機法に触れる領域では、生成物を最終原稿にしない運用を検討する
- 地域差:EU・インド・ニューヨーク州向け配信では、オーバーレイに訴求要素が隠れないか確認する
なお、AI利用の申告と広告審査は別の判定です。申告したから審査が厳しくなるという公開情報は2026年8月時点で確認できていませんし、逆に申告しなければ審査を回避できるという性質のものでもありません。審査で落ちる原因は従来どおり表現とポリシーの側にあります。
AI生成素材と人手制作素材を切り分ける管理台帳を先に作る
開示対応で最初に着手すべきは、設定作業ではなく台帳の整備です。どのアセットがどの工程でAIを使ったのかを記録していなければ、申告の要否を毎回ゼロから判断することになり、担当者が変わった瞬間に運用が止まります。逆に台帳さえあれば、設定作業自体は数分で終わります。
台帳は凝ったシステムである必要はありません。支援先の多くはスプレッドシート1枚で回しています。重要なのは形式ではなく、アセットIDを主キーにして、制作工程ごとにAI利用の有無を分けて記録することです。「この画像はAIを使った」という粗い記録では、後から線引きを見直したときに再判定ができません。
工程を分けて記録しておくと、社内基準を変えたときの再点検が一気に楽になります。たとえば「背景生成は申告する」「アップスケールは申告しない」という線引きに変えた場合、工程列でフィルタするだけで対象が特定できます。粗い台帳だと、全アセットを目視で見直す羽目になります。
| 台帳の項目 | 記録する内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
| アセットID・ファイル名 | 媒体側のIDと社内ファイル名を両方持つ | 媒体設定との突き合わせ、流用時の追跡 |
| 制作工程 | 構図・撮影・背景・レタッチ・コピー・翻訳など工程を分けて記載 | 線引き変更時の再判定、申告要否の判断 |
| AI利用の有無とツール名 | Google純正か外部かを区別し、ツール名まで記載 | 自動開示か自己申告かの切り分け |
| 人手の介在度 | 叩き台のみ/部分修正/全面書き直しの三段階 | 社内基準に照らした申告判断 |
| 権利確認の状況 | 素材の出所、モデルリリースの有無、確認者名 | 権利クレーム発生時の一次対応 |
| 申告状況と判断日 | 申告済み・非申告の別と、判断した日付・担当者 | 説明責任、監査、代理店との責任分界 |
配信・計測・検証のタグを媒体横断で管理する台帳を運用している組織なら、その延長線上にAI利用の列を足すのが最も定着します。新しい管理表を増やすより、既にメンテナンスされている台帳に相乗りさせたほうが更新が続きます。
ブランドガイドラインにはAI利用の可視化を前提とした条項を足す
既存のブランドガイドラインは、色・書体・トーン&マナー・禁止表現といった「出来上がった表現」の規定が中心です。AI利用が開示される前提では、ここに「どう作ったか」の規定を足す必要があります。出力だけを縛っても、工程が開示される以上、説明が追いつかなくなるからです。
具体的には、AIを使ってよい工程と使ってはいけない工程を明記します。多くの企業で相性がよいのは、アイデア出し・構成案・コピーの叩き台・バリエーション量産までは許容し、実績数値の記述、人物の表情や体験の再現、製品の外観描写は人手または実写に限定するという線引きです。開示されて困る工程にAIを使わない、という基準の立て方が最も運用しやすいと考えています。
あわせて、ブランドとしてAI利用をどう説明するかの言い回しも決めておきます。問い合わせが来てから広報が文面を考えると必ず遅れますし、担当ごとに説明が食い違います。ガイドラインに一文入れておけば、営業も運用担当も同じ説明ができます。
オンブランドを保ったままAIで量産する運用は、Meta側の生成ツールでも同じ課題が出ています。ガードレールの設計思想は媒体を問わず共通なので、先行事例として参照する価値があります。
社内承認フローは申告判断を工程の中に埋め込んで再設計する
承認フローの再設計で外してはいけないのは、申告の判断を入稿直前に持ってこないことです。入稿直前は情報が最も足りないタイミングで、しかも急いでいます。ここで「これAI使いましたっけ」と聞き始める運用は、必ず抜けが出ます。判断は制作着手前と納品時の二段階に前倒しするのが正解です。
制作着手前には、発注書や制作指示書にAI利用の可否を明記します。外部制作会社に依頼する場合はここが生命線で、指示に書いていなければ制作側は自由に判断します。発注書にAI利用の申告欄を1行足すだけで、後工程の確認コストが大きく下がります。
納品時には、納品物と一緒にAI利用の申告を受け取ります。工程ごとにどこで何を使ったかを書いてもらい、そのまま台帳に転記できる形式にしておくと運用が続きます。制作会社側にとっても、後から責任を問われないための記録になるので、説明すれば協力は得られます。
入稿時にやることは、台帳を見てラベル設定を反映するだけの機械的な作業に絞ります。判断を伴う作業と、判断を伴わない作業を分離するのが、承認フロー設計の基本です。入稿担当が判断しなくてよい状態を作れているかどうかが、フロー設計の成否を分けます。
入稿直前に確認する項目を固定する
それでも入稿直前の最終確認はゼロにできません。ここでは判断ではなく照合だけを行います。台帳に記載されたAI利用の有無と、媒体側のラベル設定が一致しているか、地域配信の設定に応じてオーバーレイの影響が出ないか、この二点に絞れば1分もかかりません。
確認項目を増やしたくなる気持ちは分かりますが、増やすほど形骸化します。実際に運用が続いているのは、項目を絞ったチェックリストを持っている組織です。差し戻しを減らす入稿前チェックの作り方は、リアルタイム審査への対応でも同じ考え方が使えます。
入稿直前に照合する項目
- 台帳のAI利用欄と、媒体側のAIラベル設定が一致しているか
- 流用アセットに、流用元と同じAI利用属性が引き継がれているか
- 自動生成系の機能が意図せず有効になっていないか
- EU・インド・ニューヨーク州向けの配信がある場合、オーバーレイで訴求要素が隠れない構図か
- 判断日と担当者が台帳に記録されているか
代理店と広告主の責任分界は契約とレポートで固める
運用を外部に委託している場合、AI利用の申告責任がどちらにあるのかを契約段階で決めておく必要があります。媒体アカウントを操作するのは代理店でも、広告主として表示責任を負うのは発注側です。設定を代行してもらう場合でも、判断そのものを丸ごと預ける形にすると、事故が起きたときに説明ができません。
実務的に機能しているのは、判断は広告主、設定は代理店、記録は共有台帳という三分割です。代理店側は台帳の申告欄を見て設定を反映し、月次レポートに設定状況を1行入れる。広告主側は台帳の判断欄を埋め、四半期に一度は棚卸しをする。この分担なら、どちらかが不在でも記録から状況を復元できます。
契約書やSLAに落とすときは、AI利用アセットの申告責任、記録の保管期間、外部指摘があった場合の一次対応窓口の三点を明記しておくと十分です。細かく書きすぎると運用されないので、争点になりやすいところだけを押さえます。責任分界が曖昧なまま外部AIツールの利用が広がるのが、いま最も危うい状態です。委託先の見直しを検討している段階であれば、ハーマンドットの無料相談で現行契約の穴を洗い出すところから始めることもできます。
ラベル前提のクリエイティブ運用は検証設計から変える
開示が前提になったことで、クリエイティブ運用の検証設計にも影響が出ます。AI由来のアセットと人手制作のアセットが同じキャンペーン内で競合している場合、成果差の要因に開示の有無が混ざる可能性があるためです。2026年8月時点で開示の有無がCTRやCVRにどう効くかを示す信頼できる公開データは見当たらず、断定はできません。
だからこそ、自社アカウントで測れる形にしておく価値があります。アセット命名規則にAI利用の有無を入れておけば、アセットレポートを開示属性別に集計できます。特別なツールは不要で、命名規則を変えるだけです。外部データを待つより、自社の数字で判断できる状態を先に作るほうが早いという判断です。
注意したいのは、開示の有無を成果の言い訳にしないことです。AI由来のアセットが負けている場合、原因の大半は開示ではなく単純に訴求が弱いことにあります。検証は「開示のせいかどうか」を確かめるためではなく、勝ちパターンを見つけるために回すものです。
AI生成の初稿を量産して検証速度を上げる運用と、開示前提の管理は両立します。むしろ台帳が整っているほうが、量産しても管理が破綻しません。
開示対応でつまずきやすい点と確度の整理
ここまでの内容のうち、公開情報として確認できているのは、2026年7月9日の発表、対象面が検索・YouTube・Discoverであること、マイアドセンター内に「この広告の作成方法」が新設されたこと、閲覧は世界中で可能でEU・インド・ニューヨーク州では広告上にラベルが出ること、対象プロダクトがGoogle広告・Display & Video 360・キャンペーン マネージャー 360・Merchant Center・Google Ads Editorであること、そして外部AIツール利用時は広告主の申告が必要であることです。
一方で、申告漏れに対する罰則の有無、審査への影響、開示の有無が成果に与える影響、そして「AIで作成または編集された」の厳密な線引きについては、2026年8月時点の公開情報では確認できていません。この記事でも断定はしていません。確認できていない事項について社内で決め切ってしまうのは危険で、暫定基準として運用し、Googleの追加告知に合わせて見直す前提にしておくべきです。
一次情報はGoogle公式ブログの発表記事、設定手順はキャンペーン マネージャー 360 ヘルプのAIコンテンツのラベル設定と開示情報が該当します。仕様は段階展開の過程で変わり得るので、四半期に一度は原典を確認する運用にしてください。
断定を避けるべき論点
- 申告漏れに対する罰則やアカウント上の措置:2026年8月時点で公開情報からは確認できない
- AI申告が広告審査の結果に与える影響:関連を示す公式説明は見当たらない
- 開示の有無とCTR・CVRの相関:信頼できる公開データがなく、自社検証で判断するしかない
- 軽微な編集の扱い:どこからが「編集」かの線引きは明文化されていない
制度が固まりきっていない時期に大事なのは、完璧な基準を作ることではなく、後から基準を変えられる記録の形を持っておくことです。台帳を工程単位で持っていれば、線引きが変わっても再判定できます。逆に記録がなければ、変更のたびに全件見直しになります。運用体制の整備を含めて相談したい場合は、無料の広告アカウント診断から現状を見せていただくのが早いです。
まとめはAI開示を機能ではなく承認設計の問題として扱うこと
「この広告の作成方法」は、広告のAI利用が利用者から見える状態を作りました。広告主に求められているのは新機能への対応ではなく、制作工程を説明できる体制の整備です。2026年8月時点で細目は流動的ですが、台帳・ガイドライン・承認フローという土台は、仕様が変わっても使い回せます。
- 責任は広告主側にある。Google純正AI由来は自動開示され得る一方、外部AIツール由来は広告主が申告しない限り開示されない。申告しない判断にも説明責任が伴う
- 管理単位はアセット。ラベル設定はアセット単位で行うため、社内の管理台帳もアセットIDを主キーにし、制作工程ごとにAI利用を記録しておく
- 判断は前倒し、入稿は照合だけ。発注時と納品時に申告判断を済ませ、入稿直前は台帳と媒体設定の一致を確認する作業に絞ると運用が続く
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