【2026年版】Google広告の予算シミュレーション完全ガイド|目標CPA・CV数・商談数から逆算する広告費の決め方

Google広告を始めようとすると、必ずぶつかるのが「月額いくら用意すればいいのか」という問いだ。ネットで調べれば「最低10万円〜」「業界平均は月30〜50万円」といった相場情報がすぐに見つかる。しかし、その数字を鵜呑みにして予算を組んだ結果、費用対効果が合わずに撤退したケースは後を絶たない。「Google広告に月30万円かけたが1件も問い合わせが来なかった」という話は、実は予算の使い方の問題ではなく、予算額の決め方の問題であることがほとんどだ。

Google広告の予算は、競合他社の相場ではなく、自社のビジネス構造から逆算して決めるものだ。許容できるコンバージョン単価(CPA)、目標とするCV数、業態に応じたCVR(コンバージョン率)を組み合わせれば、論理的に「毎月いくら投下すべきか」が計算できる。この記事では、その逆算プロセスを実務レベルで解説する。

広告代理店への依頼を検討している方にとっても、この計算ができるかどうかが、まともな代理店を選ぶ基準になる。「うちの業界では最低30万円必要です」と言ってくる代理店に対し、「では1件のCVに対して許容CPAはいくらですか」と返せるかどうかで、提案の質が変わる。ぜひ最後まで読んで、予算決定の考え方を身につけてほしい。

Google広告の予算を「相場」で決めてはいけない理由

「月額30万円が相場」という情報は、異なる業種・商材・ターゲットを平均化したものにすぎない。同じ「月30万円」でも、BtoBのSaaS企業と美容室では、クリック単価もコンバージョン率も数倍以上開きがある。相場に合わせた予算は、自社に合わせた予算ではない。むしろ「相場を参考にした結果」を「自社に当てはまる数字」だと誤解することが、多くの広告費無駄遣いの根本原因になっている。

相場で予算を決めると起きる典型的な問題が2つある。一つは、予算が少なすぎてGoogleの入札アルゴリズムが学習できないケースだ。スマート入札(目標CPA・目標ROAS)が正常に機能するには、月間で30件以上のコンバージョンデータが必要とされている。月10万円の予算でBtoBリード獲得を狙う場合、1クリック500円とすると200クリックしか得られず、CVRが1%なら月2件のCVにしかならない。学習完了まで数ヶ月かかる上、そのあいだにも広告費が垂れ流しになる。

もう一つは逆のパターン、つまり初月から大きな予算を投入して大量のデータを集めようとする失敗だ。キーワード選定やLPが最適化されていない段階で高予算を投入しても、不適切なクリックにコストをかけ続けることになる。学習データは集まるが、そのデータが低質であれば入札戦略は誤った方向に最適化される。後から「なぜかCVが増えない」という状況に陥ってから修正しようとすると、学習をリセットするコストが追加でかかる。

では、正しい予算決定の出発点はどこにあるか。「自社のビジネスにとって1件のCVがいくらまでなら許容できるか」という問いに答えることだ。これを許容CPA(Cost Per Acquisition)と呼ぶ。この数字が明確にならない限り、どんな予算を設定しても「効果があるかどうか」を判断する基準がない。

相場で予算を決めるとどうなるか

  • 業種の違いを無視した予算設定になり、学習完了前に撤退するリスクが高い
  • 競合の予算規模に引きずられて、自社の利益構造に合わないCPAで運用し続ける
  • 効果検証のベースラインがないため、改善の方向性が定まらない
  • 広告代理店に「この業界は最低30万円必要です」と言われたまま、根拠を確認できない

以下の記事では広告運用代行の費用相場を詳しく解説している。代理店手数料込みの総コスト感を把握した上で、本記事の逆算プロセスと組み合わせて活用してほしい。

許容CPAから月額予算を逆算する3ステップ

Google広告の予算を論理的に決めるには、ビジネスゴール(受注・売上)から広告費まで、段階的に逆算する思考が必要だ。順番を間違えると積み上げ計算になり、「予算がいくらあれば何件取れるか」という受け身の発想になる。逆算することで、「何件取るためにいくら使うべきか」という主体的な予算設計ができる。この3ステップを身につけるだけで、広告運用の議論の解像度が大きく変わる。

ステップ1:許容CPAを設定する

許容CPAとは、1件のコンバージョンを獲得するために投下できる広告費の上限だ。ビジネスモデルによって計算式は異なるが、基本的な考え方は「1件CVを獲得した場合の期待利益から逆算した広告費の許容額」だ。ここでいうCVは、最終的なコンバージョン(受注・購買)ではなく、広告で設定したCV(問い合わせ・資料請求・初回来院など)を指す。

BtoBサービスの例で考えてみよう。平均受注単価が100万円、商談化率(問い合わせから商談になる確率)が20%、受注率(商談から受注になる確率)が30%の場合、問い合わせ1件あたりの期待売上は100万円 × 0.2 × 0.3 = 6万円になる。粗利率が40%なら期待粗利は2.4万円。この2.4万円を1問い合わせあたりに使えるコストの上限と考えると、広告費として使えるのはさらにその一部(例えば60%、すなわち14,400円)が許容CPAの目安になる。

この計算が「感覚的に高すぎる」と感じた場合は、受注単価・商談化率・受注率のいずれかの見直しが必要だ。一方、「これくらいなら余裕で払える」という場合は、競合が届いていない高CPCのキーワードにも入札できる強みになる。

業態許容CPA計算式計算例
BtoB(リード獲得)受注単価 × 商談化率 × 受注率 × 粗利率 × 広告費率100万円 × 20% × 30% × 40% × 60% = 約14,400円
EC(通販)初回購入LTV ÷ 広告費率逆数LTV5,000円 × 30% = 1,500円以内
採用(中途)採用コスト許容額 × 応募→採用率採用費用100万円 × 5% = 5万円/応募
来店型(クリニック等)初回来院LTV × 広告費率LTV8万円 × 30% = 24,000円以内

ステップ2:目標CV数から必要クリック数を算出する

月に何件のコンバージョンが必要かを決めたら、次は逆算で必要なクリック数を算出する。計算式はシンプルで「目標CV数 ÷ ランディングページのCVR」だ。ここで出てくる数字が「月に何回広告をクリックされる必要があるか」であり、これが予算計算の第2の基礎になる。

ここで多くの担当者が躓くのが、CVRの設定だ。Googleキーワードプランナーはクリック数やCPCの予測はできるが、CVRは出てこない。自社の実績データがあればそれを使う。過去データがない場合は、業種別の目安値を使う。BtoBのSaaS・コンサルは0.5〜2%、ECは1〜3%、採用は1〜3%、来店型は1〜2%が実務的な初期設定の目安だ。LPのデザインや訴求内容によって実際のCVRは大きく変わるため、3ヶ月後には必ず実績値に更新することを忘れないでほしい。

たとえば月10件のCVが目標で、CVRが1%と設定した場合、必要なクリック数は10 ÷ 0.01 = 1,000クリックになる。CVRを2%に改善できれば、500クリックで同じ成果が出る。つまり同じ目標を半分の広告費で達成できる計算だ。これがLPの改善が広告費削減に直結する理由だ。

ステップ3:月額予算を算出する

必要クリック数が決まれば、あとは想定CPCをかけるだけだ。月1,000クリックで、平均CPC300円の場合、純広告費は30万円になる。これに代理店手数料(通常は広告費の20%)を加えると、総コストは36万円になる。代理店手数料は実費ではなく利益を圧迫するコストなので、許容CPAの計算段階から含めておくべきだ。

逆に許容CPAから上限を算出した場合はこうなる。許容CPA14,400円で月10件のCVを目標とした場合、許容広告費は144,000円。CPC300円で試算すると、480クリックしか得られない。CVRが1%なら月4.8件のCV。目標の10件には届かない。この場合、LPを改善してCVRを2%に引き上げるか、許容CPAを見直すか(ビジネス側の改善)、目標CV数を下げるかのいずれかを選ぶことになる。

月額予算逆算チェックリスト

  • 許容CPA:受注単価 × 商談化率 × 受注率 × 粗利率 × 広告費率で算出した
  • 目標CV数:営業目標から逆算して月間必要問い合わせ数を決めた
  • 想定CVR:自社過去データか業種別目安値を設定した(0.5〜2%)
  • 想定CPC:キーワードプランナーで対象KWの入札相場を確認した
  • 計算式:必要クリック数(= 目標CV ÷ CVR)× 想定CPC = 純広告費

広告のKPI設計についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事が参考になる。

業態別の月額予算シミュレーションモデル

逆算の考え方は同じでも、業種・業態によって入力する数値は大きく変わる。ここではBtoB、EC、採用、来店型の4業態について、典型的な数値を使った月額予算シミュレーションモデルを示す。これらはあくまで初期設定の目安値であり、実際の運用では自社データで継続的に更新していく必要がある。

BtoB(SaaS・法人サービス)の予算モデル

BtoB法人サービスは、1件あたりの受注単価が大きいため、CPAの許容幅も広い。一方でCVRが低く、1クリックあたりのコストが高い傾向があるため、学習に必要なCV件数を確保するための最低予算が他業態より高くなる。また、BtoBはリードから受注までのリードタイムが長い(数週間〜数ヶ月)ため、短期的なCPA評価ではなく「リード獲得から商談・受注まで追った実績CPA」で評価することが重要だ。

月30件のCVを確保するためには(スマート入札が安定稼働する最低ライン)、CVR1%なら月3,000クリック必要になる。BtoBのCPCは競合状況にもよるが、300〜1,500円が目安だ。CPC500円で試算すると、月150万円の純広告費が必要になる。代理店手数料込みでは月180万円程度が月額コストの目安だ。

月150万円が確保できない場合、スマート入札は使わず、手動CPC+できるだけ狙ったキーワードに絞ることで、学習なしでも一定のCVを積み上げることができる。この場合は月30〜50万円から始め、データが蓄積されてきた段階でスマート入札に移行するステップアップ方式が現実的だ。

BtoBでGoogle広告を使う際のもう一つの重要な視点は、「クリックしてくれる人のフェーズ(検討段階)」だ。BtoBサービスの場合、検索クエリによって情報収集段階のリードと、今すぐ発注先を探している購買意欲の高いリードが混在している。「広告運用代行 費用」で検索している人は費用感を比較している段階、「広告運用代行 依頼 東京」で検索している人はすでに発注先を絞り込んでいる段階だ。後者はCPCが高くなりやすいが、CVRも高く許容CPAの範囲内に収まりやすい。キーワードを意図別に分類し、それぞれに適したLPを用意することで、同じ予算でもCPAを大幅に改善できるケースがある。

また、BtoBで広告を始める際には、CRMやSalesforceとの連携設定も早めに済ませておくことを推奨する。広告経由の問い合わせが商談になったか、受注になったかを追跡できれば、「どのキーワードが最もROIが高いか」が明確になる。この情報なしで運用しているうちは、CPAの改善に限界がある。

EC・通販の予算モデル

ECは商品単価とLTVの設計によって許容CPAが大きく変わる。単品販売(ウォーターサーバーや健康食品など)で初回購入を損して後続の定期購入で回収するビジネスモデルであれば、初回購入CPAは売上単価を大きく超えても許容できる。逆に、単品買い切り型の商品であれば、許容CPAは商品単価の50〜100%以内が目安になる。

CPCはカテゴリによって50〜300円と幅がある。CVRは1〜3%。月30万円の純広告費(CPC100円で3,000クリック)でCVR2%なら月60件のCVを見込める計算になる。ECはCVRに対するLP改善の影響が特に大きい。同じ広告費で2倍のCVを得るためにはCVRを2倍にする必要があり、それはLP改善で達成できることが多い。広告費を増やす前にLP改善を先行させることが費用対効果の改善につながる。

ECでP-MAXキャンペーンを使う場合は、商品フィードの品質がCPCとCVRの両方に影響する。商品名・価格・画像・説明文が適切に設定されていれば、P-MAXは競合より有利なタイミングで広告を配信できる。フィードの最適化は「広告費を抑えながら成果を出す」ための最も費用対効果の高い投資だ。月30万円の広告費をかける前に、商品フィードの整備に時間をかけることを推奨する。

採用・人材系の予算モデル

採用系は「応募単価(CPA)」と「採用単価」を分けて考える必要がある。求人媒体の代替手段としてGoogle広告を使う場合、採用単価100万円なら応募1件への許容CPAは採用率の逆数倍になる。10応募で1採用なら許容CPA10万円。これは他業態と比べて許容CPAが高い部類に入るため、競合が多いキーワードにも入札できる強みがある。

ただし、採用領域はキーワードによってCPCが100〜1,000円以上と幅広い。「○○職 求人 東京」のような具体的な職種×地域キーワードはCPCが高騰しやすいが、CVRも高い。月10人の応募獲得を目標とし、CVR2%・CPC400円で計算すると、月20万円の純広告費が必要になる。ただし、採用においてはCV数だけでなく「応募者の質」も重要なため、キーワード選定と広告文でターゲット像を絞り込む設計が必須だ。たとえば「リモートワーク可能な○○職の求人」と絞り込むことで、ターゲット外の応募を減らしてCPAの質を高めることができる。

来店型(クリニック・士業・スクール等)の予算モデル

美容クリニックや法律事務所、英会話スクールなどの来店型ビジネスは、エリアターゲティングが重要になる。全国配信と都市部への絞り込みではCPCが大きく変わり、都市部のクリニックでは「○○ 美容クリニック 新宿」のような地域×施術キーワードのCPCが500〜2,000円に達することがある。

初回来院のLTVが8万円のクリニックの場合、許容CPAは20,000〜30,000円程度が目安になる。CPC1,000円・CVR2%で計算すると、1CVに必要なクリック数は50件、つまりCPA50,000円。許容CPAを超えているため、CVRの改善(3%へ)かCPCの削減(700円以下)が先決になる。こうした業種では、競合状況に応じて入札価格上限を設定しつつ、ランディングページの改善(ビフォーアフター写真の追加、口コミ数の表示など)を並行して進めることが重要だ。

来店型ビジネスでは、MEO(Googleビジネスプロフィールの最適化)とSEO(検索上位表示)と広告を組み合わせることで、1件あたりの集客コストを下げられるケースが多い。広告だけに頼る戦略より、低コストの自然流入を補完として活用することで、許容CPAの範囲内での運用が現実的になる。

業態想定CPC想定CVR許容CPA目安月30万円での月間CV見込み
BtoB(SaaS・法人)500〜1,500円0.5〜1%1〜3万円2〜6件
EC(通販)50〜300円1〜3%1,500〜5,000円33〜180件
採用・人材200〜1,000円1〜3%1〜10万円3〜45件
来店型(クリニック等)500〜2,000円1〜2%2〜5万円2〜12件

この表から見えるのは、業態によって月30万円で得られるCVの差が数十倍以上あるという事実だ。「月30万円が相場」という情報が自社に当てはまるとは限らない理由がこれだ。ECではCPA1,500円で運用できているのに、BtoBでは月30万円使って2件しかCVが取れないというケースは珍しくない。業態を無視した相場の参考は、むしろ判断を歪める。

代理店費込みの総コストシミュレーション

Google広告の費用を考えるとき、純広告費だけを見ていると実際の出費を過小評価する。代理店に運用を委託する場合、別途管理手数料が発生する。この手数料を含めた「総コスト」で予算設計をしなければ、想定より大きな支出になることがある。特に月50万円以上の純広告費になると、手数料だけで10万円以上になるため、許容CPAの計算に手数料を含めるかどうかの判断が重要になる。

一般的な代理店の手数料体系は、「広告費の20%」という従量制が多い。月30万円の純広告費なら手数料が6万円、総コストは36万円になる。月100万円なら手数料20万円で総コスト120万円。手数料率は代理店によって異なり、10〜30%の幅がある。初期費用が別途かかる場合もある。中には「固定月額」という料金体系を取る代理店もあり、広告費が少額の時は割安、多額になると割高になることが多い。

費用体系を理解した上で代理店を比較する方法については、以下の記事で詳しく解説している。

自社運用と代理店委託のどちらが費用対効果が高いかは、運用に割けるリソースと必要なノウハウの有無によって変わる。月30万円以下の純広告費なら、代理店への手数料より先に広告費自体に回した方が学習データを早く蓄積できるケースもある。月50万円以上になれば、専門知識を持つ代理店の最適化が費用対効果を大きく改善する可能性が高い。月100万円以上であれば、P-MAXを含む複数キャンペーンの組み合わせ、入札戦略の使い分け、LPのA/Bテスト設計など、専門的な運用設計が必要になるため、代理店委託を強く推奨する。

代理店委託を検討すべき月額予算の目安

  • 月50万円以上:代理店の最適化効果が手数料を上回りやすいライン
  • 月30〜50万円:自社担当者のスキルと代理店提案内容を比較して判断
  • 月30万円未満:自社運用の方がトータルコストを抑えられるケースが多い
  • 月100万円以上:複数媒体・P-MAXなど複雑な運用設計が必要になるため代理店推奨

予算不足で陥る3つの失敗パターン

広告予算の失敗は「少なすぎる」か「多すぎる」かの二極に分かれる。どちらも損失につながるが、仕組みが違う。特に少額予算での失敗は「効果がなかった」という誤った結論につながりやすいので、注意が必要だ。ここでは実際にある3つの典型的な失敗パターンを解説する。

パターン1:月20万円未満でBtoB獲得を狙う

BtoBのリード獲得でCPC800円のキーワードに月20万円を投入した場合、250クリックしか得られない。CVR1%で月2.5件のCV。スマート入札が学習期間を終えるには最低30件のCVが必要なため、12ヶ月かかっても学習が完了しない計算になる。この状態で「効果が出ない」と感じ撤退する企業は多い。実際には、予算不足が原因であって、Google広告が効かないわけではない。

対策としては、まずキーワードを絞って完全一致のみに限定し、1クリックあたりのCPCを下げること。それでも予算が足りない場合は、純広告費を月50万円以上に引き上げてデータ収集を加速させることが有効だ。また、BtoBでは「問い合わせ」よりも「資料ダウンロード」や「ウェビナー申込み」など、ハードルの低いCVポイントを設定して数を稼ぎ、段階的に温度感の高いリードに絞り込んでいく方法も有効だ。

パターン2:初月から高予算で無計画に学習させる

逆のパターンとして、「早く成果を出したい」という焦りから初月に月200万円を投入するケースがある。LP(ランディングページ)が最適化されていない段階でインプレッションを増やしても、不適切なクリックにコストをかけ続けることになる。スマート入札は「コンバージョンにつながりやすいオーディエンス」を学習するが、そのデータの質が悪ければ最適化の方向性も狂う。後から「なぜかCPAが高止まりしている」という状況に陥ってから修正しようとすると、学習をリセットするコストが追加でかかる。

正しい順序は、まず月30〜50万円で学習を始め、LPのCVRを確認・改善してから予算を段階的に増やすことだ。特に新規キャンペーン開始後1〜2ヶ月は「学習フェーズ」として位置づけ、CPAを強く求めすぎないことが重要だ。3ヶ月で30件以上のCVが蓄積されてから、スマート入札への切り替えを検討するのが安全だ。

パターン3:許容CPAを超えているのに運用を継続する

「せっかく始めたから」という惰性で、CPAが許容値を大幅に超えたまま数ヶ月運用を続けるケースも多い。月20件のCVで各CPA40,000円、計80万円の広告費を使っているが、1件受注のための期待利益が3万円しかない場合、運用継続は赤字の拡大を意味する。しかも「CPAが改善されていく」という希望的観測のもとで継続してしまう。

月次でCPA目標対比を確認し、2ヶ月連続で許容CPAの150%以上になった場合は運用設計を見直すルールを作っておくことが重要だ。キーワードの見直し・LPの改善・入札戦略の変更・ターゲティングの絞り込みのいずれかで改善できない場合は、いったん運用を停止して設計から見直すことを検討すべきだ。代理店に委託している場合は、この指標を報告書に含めることを契約前に確認すること。

Googleの公式ツールで予算を検証する

逆算で月額予算の目安を算出したら、Google広告の公式ツールで現実的な数値かどうかを検証する。ここでのポイントは「ツールで目標を設定するのではなく、自分で算出した目標をツールで検証する」という順序だ。ツールはあくまで相場の確認手段であり、目的や許容CPAはビジネス側から決めるものだ。

キーワードプランナーの活用

キーワードプランナーでは、狙うキーワードの想定CPC(低価格・高価格の範囲)と月間検索ボリュームを確認できる。たとえば「広告運用代行」のCPCが500〜1,200円の幅で表示された場合、逆算で使った500円という想定CPCが現実的かどうかを確認できる。もし最低CPCが800円だった場合、前の計算を見直す必要が出てくる。

より具体的なシミュレーションは「検索のボリュームと予測のデータを確認する」から行える。狙うキーワードリストを入力し、「予測」タブを開くと、1日の平均予算を動かしながらクリック数・表示回数・CPC・費用の予測値が確認できる。ここにコンバージョン率を入力すれば(コンバージョン指標を追加から)、予測CV数と予測CPAも算出できる。注意すべきは、ここで出てくるCPAはあくまでクリック後のCVR入力次第であり、LP改善前後で大きく変わる点だ。

パフォーマンスプランナーの活用

パフォーマンスプランナーは、既存の稼働キャンペーンがある場合に使うツールだ。「予算をこれだけ増やしたらどれだけCVが増えるか」または「CPAを維持しながら予算を増やす上限はどこか」をシミュレーションできる。スケールアップの意思決定において特に有効なツールだ。

利用条件として、過去7日間にコンバージョンが5件以上あること、7日間以上稼働していること、最近予算による制限がないことが必要だ。新規キャンペーンでは使えないが、3〜6ヶ月運用した後のスケールアップ判断に非常に有効だ。「今の月50万円の予算を100万円に増やしたらCVはどう変わるか」を数値で確認してから意思決定できるのは大きなメリットだ。

既存のGoogle広告シミュレーションツールの使い方については、以下の記事でも詳しく解説している。

予算スケールアップの判断タイミング

初期設定した予算を増やすかどうかの判断は、多くの企業が「なんとなく」や「上期の予算が余っているから」という理由で行いがちだ。しかし正しいスケールアップは、データに基づいたタイミングで行うべきだ。無計画な予算増額は学習をリセットするリスクを伴う。

スケールアップに適したタイミングの目安は以下の3つだ。まず、月間CVが安定して30件を超え、目標CPAを継続的に達成していること。次に、キーワードの予算消化率が90%以上で、「予算による機会損失」が発生していること。そして、パフォーマンスプランナーで予算増額後のCPA維持が確認できること。この3条件が揃ったタイミングで、月20〜30%程度ずつ予算を増やしていくのが安全な方法だ。

スケールアップ後の最初の2〜4週間は「学習再開期間」として位置づけることも重要だ。予算を大幅に増やすとGoogleのアルゴリズムが新しい配信量に合わせて再最適化を始めるため、一時的にCPAが悪化することがある。これを見て「予算を増やしたら悪化した」と判断して戻してしまうと、学習が繰り返しリセットされる。増額から4週間は目標CPAの130%以内であれば許容する姿勢が必要だ。5週目以降に安定するかどうかを判断基準にするとよい。

また、スケールアップの方法にも「予算増額」と「キャンペーン数増加」の2種類がある。既存のキャンペーンの予算を増やす方法は学習データを引き継げるメリットがある一方、配信量が急増すると学習が不安定になるリスクがある。一方、新しいキャンペーンを追加する方法は既存の学習に影響を与えないが、新キャンペーンの学習完了に別途時間が必要になる。どちらが適切かは現在のキャンペーンの状況と目標によって異なる。

一方、スケールアップを急いではいけないケースもある。CVが月30件を下回っている段階での予算増額は、学習を不安定にさせるリスクがある。また、CPA目標を大きく超過している状態での予算増額は、損失を拡大させるだけだ。代理店から「予算を増やせば改善できる」と言われた場合は、「どのデータをもとにそう判断しているか」を必ず確認することが重要だ。

予算スケールアップの判断基準

  • 月間CV30件以上が2ヶ月連続で達成できている
  • 目標CPAの110%以内で安定運用できている
  • キーワードの予算消化率が90%以上(機会損失が発生している)
  • パフォーマンスプランナーでCPA維持のまま増額余地があることを確認した
  • LP改善が一段落し、CVRが安定していること

無料相談前に準備すべき5つの数字

代理店への相談や社内での予算承認を取り付ける前に、以下の5つの数字を準備しておくと話が早い。これらが揃っていれば、代理店側から「この予算でこのCPAを目指す」という具体的な提案を引き出せるし、社内への説得材料にもなる。逆に、これらの数字が揃っていない状態で相談に行くと、「この業界だと最低30万円です」という一般論しか返ってこないことになる。

1つ目は月間の目標CV数だ。これは「営業目標から逆算した問い合わせ件数」であり、月に何件の新規リードが必要かを決める。2つ目は許容CPA(コンバージョン単価の上限)だ。前述の計算式で算出した数字を用意する。3つ目は現在のLPのCVR(過去データがなければ「不明」で可)。4つ目は想定する配信エリア(全国か地域限定か)。5つ目は代理店への委託予算上限(純広告費+手数料の総額)だ。

これら5つが揃っている状態で代理店に相談すると、「想定CPCが○○円のキーワードで○件のCVを達成するには月△万円が必要」という具体的な回答が得られる。曖昧な相談は曖昧な提案しか生まない。準備が提案の質を決める。

代理店相談前の確認事項(これがないと提案精度が下がる)

  • 月間目標CV数(例:月10件の問い合わせが必要)
  • 許容CPA(例:1問い合わせあたり最大15,000円)
  • 現在のLPのCVR(過去データがあれば、なければ目安値でOK)
  • 配信エリア(全国 / 関東限定 / 特定都市)
  • 総予算上限(純広告費+代理店手数料込みの月額予算)

代理店選びの詳しい比較ポイントは以下の記事を参考にしてほしい。

まとめ:Google広告の予算は逆算で決める

この記事では、Google広告の予算を相場に頼らず、自社のビジネス構造から逆算して決める方法を解説した。重要なポイントをまとめておく。

  • 許容CPAを起点に逆算する。受注単価・商談化率・受注率・粗利率から「1CV獲得に投下できる広告費の上限」を計算する。
  • 業態によって同じ予算でも得られるCVは数十倍異なる。BtoBとECでは許容CPA・CPC・CVRがすべて違う。相場で決めることがなぜ危険かはここにある。
  • 月30万円未満でBtoBを狙うと学習が回らない。スマート入札は月30件以上のCVデータが必要。予算不足は「効果なし」という誤った結論を招く。

これらの計算を一人でやるのが難しい場合や、自社のビジネスモデルに合わせた具体的なシミュレーションが必要な場合は、専門家への相談が近道だ。

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