P-MAXで既存顧客を除外して新規顧客を増やす方法

P-MAXで既存顧客を除外しないと広告費が無駄になる理由

Google広告のP-MAXキャンペーンは、検索・ディスプレイ・YouTube・Gmail・Discover・マップのすべての配信面に横断的に広告を配信できる強力なキャンペーンタイプです。機械学習が自動的に最適な配信面・入札・クリエイティブの組み合わせを見つけてくれるため、運用工数を抑えながら高い成果を得られるとして多くの広告主が積極的に採用しています。

しかしP-MAXには、広告主が見落としがちな重大な課題があります。それは、デフォルト設定のままではコンバージョンの多くが「既存顧客への再アプローチ」によるものになりやすいという点です。すでに商品を購入した顧客や問い合わせ済みのユーザーに対して広告が配信され続けると、見かけ上のコンバージョン数は増えるものの、実質的には既存顧客の再購入を促しているだけで新規顧客の獲得にはつながっていません。P-MAXの機械学習は「コンバージョンしやすいユーザー」を優先的にターゲティングするため、過去にコンバージョンした既存顧客に配信が集中するのは構造的な必然なのです。

ハーマンドットが支援してきた広告主の中にも、P-MAXのコンバージョンの60%以上が既存顧客からの再購入だったというケースがありました。月間広告費100万円のうち60万円が既存顧客への配信に使われていたことになり、新規顧客獲得の観点では大きな機会損失です。本記事では、P-MAXで既存顧客を適切に除外し、新規顧客の獲得に広告予算を集中させるための具体的な設定方法と運用戦略を解説します。

P-MAXの機械学習が既存顧客を優先する仕組み

P-MAXの機械学習アルゴリズムは、広告主が設定した目標(目標CPA、目標ROAS等)を達成するために、最もコンバージョンの確率が高いユーザーを自動的に見つけて配信します。ここで問題になるのは、過去にコンバージョンした既存顧客は「コンバージョンしやすいユーザー」の筆頭候補だということです。

たとえば、ECサイトで一度購入したユーザーは、そのブランドや商品に対する信頼がすでに形成されており、再度広告を見た場合のコンバージョン率は新規ユーザーの数倍になることが一般的です。ブランド名で検索してくる既存顧客は商品ページに直接アクセスして購入するため、広告のクリック率もコンバージョン率も極めて高くなります。P-MAXの機械学習から見ると、既存顧客に広告を配信することが最も効率よく目標CPAを達成できる手段であり、新規の見込み顧客よりも既存顧客に配信を寄せることは「正しい最適化」なのです。結果として、広告レポート上のCPAは良好に見えるにもかかわらず、実際には新規顧客がほとんど増えていないという状況に陥ります。

しかし広告主のビジネス目標が「新規顧客の獲得」である場合、この最適化は本質的にずれています。既存顧客はメールマーケティングやLINE公式アカウント、リテンション施策など、広告費をかけずにアプローチできるチャネルが他にあります。広告予算を新規顧客の獲得に集中させ、既存顧客へのアプローチは別のチャネルで行うという役割分担が、広告費全体のROIを最大化する合理的な戦略です。

特にBtoB領域やサブスクリプションモデルのビジネスでは、この問題の影響がより顕著になります。BtoBの場合、一度問い合わせや資料請求をした企業の担当者がP-MAXの広告に再度クリックしてフォーム送信しても、営業チームから見れば「同じ見込み客の重複リード」でしかなく、広告費の浪費以外の何物でもありません。サブスクリプションモデルでは、すでに月額課金中のユーザーにサービス紹介の広告を配信しても解約防止にはならず、ユーザー体験としてもネガティブな印象を与えかねません。こうした構造的な問題を解決するために、P-MAXでの既存顧客除外は事実上の必須設定といえます。

P-MAXで既存顧客を除外する3つの方法

方法1は「新規顧客の獲得」目標を設定すること

Google広告には「新規顧客の獲得」という専用の目標設定があり、P-MAXキャンペーンでこの目標を有効にすると、新規顧客のコンバージョンを優先的に獲得するよう機械学習が最適化されます。この設定には「新規顧客値モード」と「新規顧客のみモード」の2種類があり、それぞれ異なる挙動をします。

新規顧客値モードでは、新規顧客のコンバージョンに対して追加の価値(ボーナス値)を設定できます。たとえば通常のコンバージョン値が5,000円の場合、新規顧客のコンバージョンにはさらに3,000円のボーナスを加算して8,000円として扱われます。これにより、機械学習が新規顧客のコンバージョンをより高い価値と認識し、新規顧客への配信を強化します。既存顧客への配信が完全に止まるわけではないため、バランスの取れたアプローチが可能です。

一方、新規顧客のみモードを選択すると、既存顧客として識別されたユーザーへの配信が完全にブロックされます。新規顧客の獲得に100%集中したい場合に適していますが、既存顧客の判定精度に依存するため、実際には一部の既存顧客に広告が配信されたり、逆に新規ユーザーが誤って除外されたりすることがあります。このモードを選択すると配信ボリュームが減少するため、予算を十分に消化できないケースも生じます。そのため、まずは新規顧客値モードで運用を開始し、データを蓄積しながら徐々にボーナス値を引き上げていき、最終的に新規顧客のみモードに切り替えるという段階的な移行が推奨されます。

2つのモードの使い分け

  • 新規顧客値モード:新規と既存の両方にバランスよく配信したい場合。ボーナス値の設定で新規の比率をコントロール可能
  • 新規顧客のみモード:広告予算を100%新規顧客の獲得に充てたい場合。既存顧客には別チャネルでアプローチする前提

方法2はカスタマーマッチリストによる除外

カスタマーマッチとは、広告主が保有する顧客データ(メールアドレス、電話番号、住所など)をGoogle広告にアップロードし、該当するユーザーをターゲティングまたは除外する機能です。P-MAXでの既存顧客除外において、カスタマーマッチは最も精度の高い方法とされています。

カスタマーマッチリストを使った除外の手順は以下のとおりです。まず、自社のCRMやECプラットフォームから既存顧客のメールアドレスをCSV形式でエクスポートします。次に、Google広告の管理画面でオーディエンスマネージャーにアクセスし、「顧客リスト」としてこのCSVをアップロードします。Googleは提供されたデータをハッシュ化して照合し、一致するGoogleアカウントをリスト化します。このリストをP-MAXキャンペーンの除外リストとして設定することで、既存顧客への広告配信をブロックできます。CSVのフォーマットについては、Googleが公式テンプレートを提供しているのでそれに従うのが確実です。列名のスペルミスやデータ形式の不一致があるとアップロードエラーが発生するため、テンプレートをダウンロードしてそのまま使用することを強く推奨します。

カスタマーマッチの精度を高めるためには、できるだけ多くの顧客情報を提供することが重要です。メールアドレスだけでなく、電話番号や住所も合わせてアップロードすると、Googleアカウントとのマッチ率が上がります。一般的に、メールアドレスのみの場合のマッチ率は30〜50%程度ですが、複数の情報を組み合わせることで60〜80%まで向上させることが可能です。なお、アップロードする顧客データはGoogleのサーバーに送信される前にSHA-256でハッシュ化されるため、個人情報がそのままGoogleに渡ることはありません。プライバシーの観点からも安心して利用できる設計になっています。

カスタマーマッチリストは定期的に更新することが不可欠です。新たに顧客になったユーザーがリストに含まれていなければ、そのユーザーには既存顧客であるにもかかわらず広告が配信され続けます。理想的には週次、最低でも月次でリストを更新する運用フローを確立しておくべきです。自社のCRMとGoogle広告をAPI連携して自動的にリストを更新する仕組みを構築できれば、更新漏れのリスクを大幅に低減できます。Google広告のCustomer Match APIを使えば、プログラムから自動的にリストの追加・削除ができるため、エンジニアリングリソースがある企業はAPI連携を優先的に検討することをおすすめします。

方法3はGoogleタグによるコンバージョンベースの識別

カスタマーマッチリストを使わずに既存顧客を識別する方法として、Googleタグ(グローバルサイトタグ)を活用したコンバージョンベースの識別があります。この方法では、過去にコンバージョンを完了したユーザーをGoogleの自動検出機能が既存顧客として識別し、除外の対象とします。

具体的には、Google広告のコンバージョン設定で「新規顧客の獲得」目標を有効にし、顧客の検出方法として「Google タグを使用した自動検出」を選択します。この設定を行うと、Googleは過去540日以内にコンバージョンしたユーザーを「既存顧客」として自動的に分類し、P-MAXの配信対象から除外します。540日という期間はGoogleが自動的に設定するもので、広告主側で変更することはできません。この期間設定はほとんどのビジネスモデルにおいて十分な長さですが、購入サイクルが極端に長い高額商材(不動産、自動車など)では、540日以上前に購入した顧客が「新規顧客」として扱われる可能性がある点には留意が必要です。

Googleタグによる自動検出のメリットは、顧客データのアップロードが不要なため導入が容易である点です。しかしデメリットとして、Googleが把握できるのはGoogle広告経由でコンバージョンしたユーザーに限られるため、オフラインで購入した顧客やSNS経由で問い合わせた顧客は除外対象に含まれません。カスタマーマッチリストと組み合わせることで、より網羅的な除外が実現できます。

実務上の使い分けとしては、まだ顧客データの整備が進んでいない企業やP-MAXの運用を始めたばかりの段階では、まずGoogleタグの自動検出で既存顧客除外をスタートし、並行してCRMからのデータエクスポート体制を構築するのが現実的な進め方です。データ整備が完了したらカスタマーマッチリストを追加し、さらに「新規顧客の獲得」目標を有効にすることで三重の除外構造を構築します。この段階的なアプローチにより、運用負荷を最小限に抑えながら除外精度を着実に向上させることができます。

比較項目新規顧客の獲得目標カスタマーマッチGoogleタグ自動検出
導入の容易さ簡単(設定変更のみ)中程度(データ準備が必要)最も簡単
除外精度中(Googleの推定に依存)高(自社データベース)低〜中(広告経由のみ)
カバー範囲広い自社リスト範囲内Google広告経由のみ
更新頻度自動手動(週次〜月次推奨)自動(540日間)
推奨利用シーンすべてのP-MAX運用CRMデータが充実している企業まず手軽に始めたい場合

広告のコンバージョン計測について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

既存顧客除外の設定手順(画面付きステップバイステップ)

ステップ1はアカウントレベルで顧客リストを定義する

P-MAXで既存顧客を除外するための第一歩は、Google広告のアカウントレベルで「誰が既存顧客か」を定義することです。Google広告の管理画面にログインし、左側メニューから「ツールと設定」→「オーディエンスマネージャー」に移動します。そこで「セグメント」タブを選択し、「既存の顧客リスト」を作成します。

既存の顧客リストには、カスタマーマッチで使用するCSVファイルをアップロードします。CSVにはメールアドレス、電話番号、名前と住所のいずれかまたは複数を含めることができます。アップロード後、Googleがデータの照合を行い、マッチしたユーザー数が表示されます。リストのサイズが1,000人未満の場合は除外に使用できないため、ある程度の顧客基盤がある企業でないとカスタマーマッチは活用しにくい点に注意が必要です。

リストの作成が完了したら、「ツールと設定」→「コンバージョン」→「顧客の獲得」タブに移動し、先ほど作成した既存の顧客リストを「既存の顧客の定義」としてリンクします。この設定はアカウントレベルで適用されるため、一度設定すればアカウント内のすべてのP-MAXキャンペーンに反映されます。

なお、カスタマーマッチリストのアップロード時には「データの処理に最大48時間かかる」とGoogleの管理画面に表示されます。実際にはほとんどの場合24時間以内にマッチングが完了しますが、大量のデータ(10万件以上)をアップロードする場合や繁忙期(年末年始など)は処理が遅延することがあります。リストの処理状況はオーディエンスマネージャーの「セグメント」画面で確認できるため、マッチ率の数値が表示されたことを確認してから次のステップに進むのが確実です。また、同一アカウント内で複数のP-MAXキャンペーンを運用している場合でも、アカウントレベルで設定した顧客リストはすべてのキャンペーンに自動的に適用されるため、キャンペーンごとに個別設定する必要はありません。

ステップ2はP-MAXキャンペーンで新規顧客の獲得目標を有効にする

アカウントレベルで既存顧客の定義が完了したら、次はP-MAXキャンペーンの設定で「新規顧客の獲得」目標を有効にします。対象のP-MAXキャンペーンの設定画面を開き、「顧客の獲得」セクションに移動します。ここで「新規顧客値モード」または「新規顧客のみモード」を選択できます。

新規顧客値モードを選択した場合は、新規顧客1件あたりの追加価値(ボーナス値)を設定する必要があります。このボーナス値の決め方は、自社の顧客LTV(顧客生涯価値)から逆算するのが合理的です。たとえば、新規顧客の平均LTVが5万円で、初回購入の平均単価が1万円の場合、差額の4万円が「新規顧客を獲得することの追加価値」に相当します。ただし実運用では、この値を段階的に調整しながら最適な水準を探る必要があります。

設定を有効にした後、すぐに効果が出るわけではありません。P-MAXの機械学習が新しい目標に適応するまでには通常2〜4週間の学習期間が必要です。学習期間中はコンバージョン数が一時的に減少することがありますが、これは機械学習がターゲティングを再最適化している正常なプロセスです。この期間中に焦って設定を変更すると学習がリセットされるため、最低2週間は設定を変えずに様子を見ることが重要です。なお、学習期間の長さはキャンペーンの規模(日予算やコンバージョン数)によっても変わります。月間コンバージョン数が100件以上ある大規模なキャンペーンでは2週間程度で学習が安定する傾向がありますが、月間30〜50件程度の中小規模のキャンペーンでは4週間以上かかることも珍しくありません。

学習期間中の注意点

  • 設定変更後2〜4週間は学習期間として成果の変動を許容する
  • 学習期間中に予算や入札戦略を変更しない
  • 一時的なCPA悪化に焦って設定をオフにしない
  • 学習期間後も成果が改善しない場合は、ボーナス値の調整やリストの精度向上を検討する

ステップ3は効果を測定して継続的に最適化する

設定が完了し学習期間を経たら、既存顧客除外の効果を定量的に測定します。効果測定で見るべき主要な指標は、新規顧客率(全コンバージョンに占める新規顧客の割合)、新規顧客のCPA、新規顧客のROAS、そして全体の費用対効果です。

Google広告の管理画面では、P-MAXキャンペーンのレポートに「新規顧客」「既存顧客」の内訳が表示されます。設定前と設定後で新規顧客率がどれだけ変化したかを比較し、広告費が新規顧客の獲得にどれだけ振り向けられるようになったかを確認します。ハーマンドットの経験では、適切に既存顧客除外を設定した場合、新規顧客率は平均して30〜50%ポイント改善することが多いです。

継続的な最適化としては、カスタマーマッチリストの定期更新に加えて、ボーナス値の調整が重要です。新規顧客値モードの場合、ボーナス値が高すぎると新規顧客を過剰に追い求めてCPAが上昇し、低すぎると既存顧客への配信が十分に抑制されません。初期設定から2〜4週間ごとにボーナス値を10〜20%ずつ上下させ、新規顧客率とCPAのバランスが最も良いポイントを探していくのが実践的なアプローチです。なお、ボーナス値を変更する際も学習期間が発生するため、頻繁に変更しすぎると機械学習が安定しません。ボーナス値の調整は月1回を目安とし、変更幅も一度に大きくしすぎないよう注意してください。

品質スコアの改善方法について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

既存顧客除外と組み合わせるべき施策

オーディエンスシグナルの活用で新規顧客の質を高める

P-MAXでは「オーディエンスシグナル」という機能を使って、機械学習にターゲットの方向性を指示できます。既存顧客を除外するだけでなく、オーディエンスシグナルに「理想的な新規顧客像」を設定することで、より質の高い新規顧客を効率的に獲得できます。

具体的には、自社の優良顧客(LTVが高い顧客、リピート率が高い顧客)のデータをカスタマーマッチでアップロードし、これをオーディエンスシグナルの「類似顧客」として設定します。P-MAXの機械学習は、このシグナルを参考に優良顧客と似た属性・行動パターンを持つ新規ユーザーを優先的にターゲティングします。単に「新規顧客を獲得する」のではなく「将来的に優良顧客になりそうな新規ユーザーを獲得する」というより高度な最適化が可能になります。

オーディエンスシグナルにはカスタムセグメント(検索キーワードやWebサイトのURLで定義)も追加できます。自社の商品やサービスに関連するキーワードを検索したユーザーや、競合サイトを閲覧したユーザーをシグナルとして設定することで、購買意欲が高い新規ユーザーへの配信を強化できます。ただしオーディエンスシグナルはあくまで「参考情報」であり、機械学習はシグナルに完全に従うわけではない点に注意が必要です。シグナルに設定していないユーザーにも広告が配信されることがあり、これはP-MAXが最適な成果を追求するための正常な挙動です。シグナルの効果を高めるためには、できるだけ具体的かつ絞り込んだシグナルを設定し、定期的に成果を確認しながらシグナルの内容を更新していくことが重要です。

アセットグループの最適化で新規ユーザーへの訴求力を高める

P-MAXのアセットグループ(広告テキスト・画像・動画の組み合わせ)は、新規ユーザー向けと既存顧客向けで最適な訴求内容が異なります。既存顧客を除外して新規顧客に集中する場合、アセットグループの内容も新規ユーザーの視点で再構成する必要があります。

新規ユーザーは、自社のブランドや商品をまだ知らない、あるいは認知はあるが購入経験がないユーザーです。このようなユーザーに効果的なのは、「なぜこの商品を選ぶべきか」「他社と何が違うか」「初めてでも安心できる理由」といった訴求です。既存顧客向けの「リピート特典」「新商品のお知らせ」といった訴求は新規ユーザーには響きません。具体的には、初回限定の割引や返品保証、導入事例や第三者レビューなど、初めて購入するユーザーの不安を取り除く要素をアセットに盛り込むことが効果的です。BtoBの場合は「無料トライアル」「初回無料相談」「導入実績○社以上」といった信頼性を担保する訴求が有効です。

アセットグループに含める画像についても、商品の使用シーンや顧客の体験を可視化するものが新規ユーザーには効果的です。動画アセットがある場合は、ブランドの世界観を伝える短いストーリー動画や、商品の使い方を簡潔に紹介する動画が新規ユーザーのエンゲージメントを高めます。P-MAXではアセットの成果がA〜D(最良〜低)の4段階で評価されるため、この評価を参考に定期的にアセットを差し替えていくことが重要です。評価がDのアセットは速やかに差し替え、評価がAのアセットの訴求パターンを分析して新しいアセット制作に反映するPDCAサイクルを確立すると、新規ユーザーへのクリエイティブ訴求力が着実に向上していきます。

既存顧客には別のキャンペーンでアプローチする

P-MAXから既存顧客を除外した場合、既存顧客へのアプローチは別のチャネルやキャンペーンで行う必要があります。広告費の最適化という観点からは、既存顧客へのアプローチは広告費をかけないチャネル(メールマーケティング、LINE公式アカウント、プッシュ通知など)を優先すべきですが、広告での再アプローチが有効なケースもあります。

たとえば、リピート購入までの期間が長い商材(高単価商品、BtoBサービス等)の場合、一度購入した顧客が次回の購入を検討するタイミングで広告を配信するリターゲティング施策は高いROIを期待できます。この場合、P-MAXとは別に検索キャンペーンやディスプレイキャンペーンで既存顧客向けのリターゲティングリストを設定し、それぞれのキャンペーンで予算と入札を分けて管理するのが合理的です。

新規獲得用のP-MAXと既存顧客向けのリターゲティングキャンペーンを分離して運用することで、それぞれの目的に最適化された配信が実現し、広告費全体のROIが最大化されます。この戦略は広告運用の代理店に依頼している場合にも伝えるべき重要な方針であり、代理店がこの分離運用を提案してくるかどうかも運用体制の質を測る指標になります。

予算配分の目安としては、新規顧客の獲得が最優先の成長フェーズにある企業であれば広告予算の70〜80%をP-MAX(新規獲得用)に、残りの20〜30%を既存顧客向けリターゲティングに配分するのが一般的です。一方、LTVを重視するサブスクリプションモデルやリピート購入型のECでは、新規獲得と既存顧客維持を50:50に近い比率で配分するケースもあります。自社の事業フェーズとKPIに応じた予算配分を設計し、四半期ごとに実績データをもとに見直すことで、広告費の投資効率を継続的に最適化できます。

広告代理店の運用体制の見極め方について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

P-MAXの既存顧客除外でよくある失敗と対策

カスタマーマッチリストの更新漏れ

最も多い失敗は、カスタマーマッチリストの更新を怠ることです。リストが古いまま放置されると、新たに顧客になったユーザーが除外対象に含まれず、結局既存顧客に広告が配信されてしまいます。特にECサイトのように日々新しい顧客が増えるビジネスでは、月次更新では不十分なケースがあります。

対策としては、自社のCRMやECプラットフォームからGoogle広告へのデータ連携を自動化することが最善です。Shopify、Salesforce、HubSpotなどの主要なプラットフォームにはGoogle広告との連携機能が組み込まれており、顧客データの自動同期が可能です。自動連携が難しい場合は、毎週月曜日にリストを更新するなどのルーティンを決めて運用フローに組み込みましょう。

リスト更新の漏れを検知する仕組みも重要です。Google広告のカスタマーマッチリストには「最終更新日」が表示されるため、週次の運用レポートにリストの更新日を記載するルールを設けておくと、更新漏れを早期に発見できます。ハーマンドットが運用を支援する場合は、リストの最終更新日が14日以上前になると自動的にアラートを出すチェック体制を敷いており、更新漏れによる広告費の無駄遣いを未然に防いでいます。

学習期間中の設定変更による学習リセット

もう一つの頻出する失敗は、新規顧客の獲得目標を設定した直後にCPAが悪化し、焦って設定を元に戻してしまうケースです。前述のとおり、P-MAXの機械学習が新しい目標に適応するには2〜4週間の学習期間が必要であり、学習期間中のCPA悪化は想定内のものです。特に社内の経営層や上長に対して「一時的にCPAが悪化するが、中長期的には新規顧客の獲得効率が大幅に改善する」という説明ができていないと、学習期間中に設定の巻き戻しを指示されるリスクが高まります。

この問題を防ぐには、設定変更前に社内(または代理店との間で)学習期間の存在とその間の成果目標について合意を取っておくことが重要です。「設定変更後2週間はCPAが30%程度悪化する可能性がある。3週目以降に改善傾向が見られるかを判断基準にする」といった具体的な期待値を事前に共有しておけば、一時的な悪化に対して冷静に対応できます。ハーマンドットでは、設定変更の前に「学習期間レポート」というドキュメントをクライアントに共有し、変更内容・想定される影響・判断基準・次のアクションを明文化しています。こうした事前合意があることで、学習期間中に「成果が落ちているから戻してほしい」という依頼を受けるケースはほとんどなくなりました。

除外が厳しすぎてコンバージョンが激減する

新規顧客のみモードを選択した場合に起こりがちな問題として、除外が厳しすぎてP-MAXのコンバージョン数が大幅に減少するケースがあります。特にリピート購入が売上の大部分を占めるビジネスモデルでは、既存顧客を完全に除外すると、P-MAXが獲得できるコンバージョンの絶対数が著しく減少し、機械学習に必要なデータ量が確保できなくなります。

このような場合は、新規顧客のみモードではなく新規顧客値モードを選択し、ボーナス値で新規顧客の比率をコントロールする方が適切です。また、P-MAXの月間コンバージョン数が30件を下回ると機械学習の精度が大幅に低下するため、除外設定後もこの水準を維持できるかどうかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。

シミュレーションの方法としては、現在のP-MAXの月間コンバージョン数から既存顧客の割合を差し引いた数値が30件以上あるかを計算します。たとえば月間80件のコンバージョンがあり、そのうち60%が既存顧客の場合、新規顧客のみモードにすると残り32件になります。ギリギリ30件を超えていますが、月によるブレを考慮すると余裕がある水準とは言えません。このような場合は新規顧客値モードで段階的に新規比率を高めていく方が、機械学習の安定性を維持しつつ新規顧客獲得を強化できる賢明な選択です。

広告運用で失敗しがちなパターンについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。

実践的な運用フレームワーク

導入前の準備チェックリスト

P-MAXの既存顧客除外を導入する前に、以下の項目を確認しておくことでスムーズに設定を進められます。準備不足のまま設定を行うと、期待した効果が得られないだけでなく、既存の運用成果まで悪化させるリスクがあります。特に顧客データの整備状況と社内の合意形成は、技術的な設定以上に重要な成功要因です。ハーマンドットが支援した企業の中で、既存顧客除外の導入がスムーズにいかなかったケースの多くは、データの準備不足か社内の期待値の不一致が原因でした。

導入前チェックリスト

  • 自社の既存顧客データ(メールアドレス等)を1,000件以上エクスポートできるか
  • 現在のP-MAXコンバージョンのうち、既存顧客と新規顧客の比率を把握しているか
  • 新規顧客のLTV(顧客生涯価値)を算出しているか
  • 学習期間(2〜4週間)のCPA悪化を許容できる予算的余裕があるか
  • 既存顧客へのアプローチを代替するチャネル(メール、LINE等)が整備されているか

月次の運用サイクル

既存顧客除外を設定した後の月次運用サイクルとして、ハーマンドットが推奨するフレームワークを紹介します。このサイクルを回すことで、除外精度と新規顧客の獲得効率を継続的に向上させることができます。

月初にまず行うべきは、カスタマーマッチリストの更新です。前月中に新たに顧客になったユーザーのデータをCRMからエクスポートし、Google広告の顧客リストに追加します。リストの更新が完了したらオーディエンスマネージャーでマッチ率を確認し、前月から大きな変動がないことを確認します。次に、前月の新規顧客率・CPA・ROASを確認し、目標値との乖離を分析します。新規顧客率が目標を下回っている場合はボーナス値を引き上げ、CPAが目標を大幅に超えている場合はボーナス値を引き下げます。

月中には、アセットグループの成果を確認し、評価が低いアセットを新しいものに差し替えます。特に新規ユーザー向けの訴求として効果が出ているアセットと出ていないアセットを分析し、効果的な訴求パターンをチームで共有します。月末には、オーディエンスシグナルの見直しを行い、より精度の高い新規顧客ターゲティングに改善していきます。

この月次サイクルを3ヶ月以上継続すると、十分なデータが蓄積されて傾向分析が可能になります。季節変動の影響や特定のキャンペーン期間での新規顧客率の変化を把握できるようになれば、翌年の同時期に向けた先手の施策を打てるようになります。たとえばECサイトでは年末商戦の時期に新規ユーザーの流入が急増するため、11月からボーナス値を引き上げて新規獲得に注力し、1月以降はリターゲティングキャンペーンで年末に獲得した新規顧客のリピート購入を促進するといった、年間を通じた戦略設計が可能になります。

広告アカウントの所有権や権限管理について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

まとめはP-MAXの既存顧客除外で新規獲得を最大化すること

P-MAXキャンペーンは強力な配信能力を持つ一方で、デフォルト設定のままでは既存顧客へのリーチに広告費が偏りがちです。この構造的な課題を認識し、適切な対策を講じることが新規顧客獲得を目的とするP-MAX運用の出発点です。本記事で解説した「新規顧客の獲得」目標の設定、カスタマーマッチリストによる除外、Googleタグによる自動検出の3つの方法を組み合わせることで、広告予算を新規顧客の獲得に効果的かつ効率的に集中させることができます。

  • P-MAXは既存顧客を優先する構造になっている。新規顧客の獲得を目的とする場合は、意図的に既存顧客を除外する設定が必須
  • 3つの除外方法を組み合わせて精度を最大化する。カスタマーマッチ+新規顧客目標+Googleタグの三重構造で除外漏れを防ぐ
  • 学習期間を見守り、月次サイクルで継続的に最適化する。リスト更新とボーナス値調整を定期的に行うことで、新規顧客率は大幅に改善する

まずは無料で広告アカウント診断を

P-MAXの運用で「新規顧客がなかなか増えない」「コンバージョンの多くが既存顧客からの再購入になっている」とお感じの方は、アカウントの設定を見直すことで状況が大きく改善する可能性があります。ハーマンドットでは、P-MAXキャンペーンの設定内容を無料で診断し、既存顧客除外の最適な設定方法と期待できる改善効果を具体的にご提案しています。

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