Google広告新利用規約対応|AI自動生成キャンペーンの承認責任を広告主側で管理する方法

2026年7月1日、Google広告の新しい利用規約が発効しました。今回の改定で特に注目すべきは、AIが自動生成したキャンペーンや広告アセットについて、その確認・承認・編集・削除の責任が広告主側にあることが明文化された点です。Performance Maxやデマンドジェン、AI Maxといった自動化機能を使っている限り、この条項はすべての広告主に関係します。
「AIが勝手に作ったものだから、問題があってもGoogleの責任だろう」という認識は、新規約のもとでは通用しません。自動生成された広告文やランディングページの拡張先が景品表示法や業界規制に抵触した場合、その説明責任を負うのは広告主自身です。にもかかわらず、多くの企業では「誰が自動生成物を確認し、誰が承認するのか」という社内ルールが整備されていないのが実情ではないでしょうか。
本記事では、新利用規約の変更点を正確に整理したうえで、広告主側で承認責任を管理するための体制づくり、いわゆる承認チェーンの設計方法を解説します。法務・広告運用・事業責任者の役割の線引きや、代理店に任せてよい範囲と任せてはいけない範囲の切り分けまで、実務で使える形で落とし込みます。なお、本記事は執筆時点(2026年7月12日)の情報に基づいています。
目次
Google広告の新利用規約は2026年7月1日に何が変わったのか
大型改定の概要と発効日
Googleは公式ヘルプ「Google 広告の利用規約に関する重要な更新」で、新利用規約が2026年7月1日に発効し、現行規約が2026年6月30日をもって終了することを告知しました。今回の改定は広告主側の同意クリックや設定変更を必要とせず、2026年7月1日にすべてのアカウントへ自動的に適用されています。つまり「同意した覚えがない」広告主も、すでに新規約のもとで運用している状態です。
報道によると、今回は約8年ぶりの大型改定とされており、AI・自動化機能の普及を前提とした条文の整理が中心です。米国における仲裁合意文言の修正や、地域別の規制手数料に関する記述の追加、ブラジルにおけるGoogle BRの役割の明示といった地域別の変更も含まれますが、日本の広告主にとって実務への影響が大きいのは、AI自動生成に関する責任の明文化と、入力データの利用範囲の拡大の2点です。
自動適用という形式のため、広告主側で「やること」は表面上何もありません。しかしそれは対応不要という意味ではなく、規約が変わったことに気づかないまま義務だけが発生している状態になり得るということです。特に、複数の広告アカウントを保有している企業や、運用を代理店へ全面委託している企業ほど、規約変更の情報が現場に届いていないケースが目立ちます。まずは自社のアカウントに関わる全員が、この改定の存在と中身を共有するところが出発点になります。
AI自動生成キャンペーンの責任が広告主側と明文化された
新規約では、Googleが自動化機能やAIを用いて広告要素を生成・選択・最適化する権限を広告主が許諾する一方で、Google広告の機能によって自動生成されたすべてのキャンペーンと広告アセットを確認、承認、削除する義務が引き続き広告主にあることが明記されました。Google公式ヘルプでも、この確認・承認・削除の義務が広告主にある旨が変更点として挙げられています。
ここで重要なのは、自動化の権限をGoogleに与えることと、成果物の責任を負うことがセットになっている構造です。自動化を使えば使うほど生成物は増え、確認すべき対象も増えます。自動化は運用工数を減らす一方で、監督責任の範囲はむしろ広がるという前提で、体制を組み直す必要があります。
会話型AIへの入力データとクロール許可範囲の扱い
もうひとつの大きな変更が、入力データの利用範囲です。キャンペーン設定時に会話型AI機能へ入力した情報や、Googleにクロールを許可したURL上のコンテンツは、そのキャンペーン単体にとどまらず、Google広告のさまざまな機能全体で利用されることが明文化されました。担当者がAIアシスタントに気軽に入力した社内情報が、想定外の範囲で活用される可能性を意味します。
また、自動キャンペーン設定に伴うクロール・インデックス許可の範囲も更新されています。Performance Maxや最終URLの拡張を有効にしている場合、Googleは広告主のサイトを広く読み取り、広告の生成や誘導先の選定に利用します。自社サイトのどのページまで広告の誘導先になり得るのかを、規約発効を機に把握し直すべきタイミングです。
入力データの扱いは、広告運用の枠を超えて情報管理の問題でもあります。運用担当者だけでなく、情報システム部門やセキュリティ担当と連携し、生成AIツール全般の利用ガイドラインと整合を取っておくと、広告アカウントだけルールが緩いという抜け穴を防げます。
同時期に進む関連アップデートにも目配りする
今回の規約改定は単発の出来事ではなく、Google広告のAIシフトを制度面から支える一連の動きの一部と捉えるべきです。報道によると、EU・EEA諸国では金融サービス広告主の検証要件を強化する変更が2026年7月23日に施行予定とされており、海外配信を行っている広告主は地域別条項もあわせて確認する必要があります。地域別の規制手数料に関する記述の追加も、越境配信のコスト計算に影響し得る変更です。
国内配信のみの広告主であっても、規約と機能は今後も段階的に更新されていくと考えておくのが安全です。利用規約の変更は今回のように自動適用されることが多く、ヘルプページや管理画面のお知らせを定期的に確認する習慣がなければ、次の変更にも気づけません。公式ヘルプの該当ページをブックマークし、月次レビューの冒頭で規約・ポリシーの更新有無を確認する項目を設けておくと、見落としを仕組みで防げます。
入力データまわりで確認しておきたい注意点
- 会話型AI機能に未公開の売上数値・原価・競合情報を入力しない社内ルールを定める
- クロールを許可するURLの範囲を確認し、広告の誘導先にしたくないページは除外設定で制御する
- 入力してよい情報・いけない情報の基準を運用メンバー全員と代理店に共有する
広告主が負う確認・承認・編集・削除の責任の中身
責任の対象となる機能の範囲
「自動生成されたキャンペーンと広告アセット」と聞くと限定的な機能の話に思えますが、実際の対象範囲はかなり広いと考えるべきです。報道によると、Performance Maxやデマンドジェン、最終URLの拡張、自動作成アセットなどが対象として挙げられており、検索キャンペーンの拡張機能であるAI Maxや、自動適用のおすすめ(Auto-apply recommendations)も同じ文脈で管理すべき機能です。
注意したいのは、これらの機能が互いに独立しておらず、ひとつを無効にしても別の経路で自動生成が続く点です。たとえば自動作成アセットをオフにしても、Performance Maxのアセットグループでは引き続きクリエイティブの組み合わせが自動で最適化されますし、AI Maxを使わなくても部分一致キーワードと自動入札の組み合わせで配信先は動的に変わります。個別機能の設定画面だけを見るのではなく、アカウント全体でどこに自動生成のポイントがあるかを俯瞰する視点が必要です。
主要な自動化機能ごとに、何が自動生成され、どこを確認すべきかを整理すると次のようになります。自社アカウントでどの機能が有効になっているかを、この表と突き合わせて棚卸ししてみてください。
| 機能 | 自動生成されるもの | 広告主が確認すべきポイント |
|---|---|---|
| Performance Max | 広告見出し・説明文・画像・動画の組み合わせ、誘導先URL | アセットグループの生成物、URL拡張の除外設定 |
| デマンドジェン | フォーマット別のクリエイティブ組み合わせ | 面ごとの表示のされ方、ブランド表現の逸脱 |
| AI Max(検索) | 検索語句の拡張、広告文の生成、最終URLの差し替え | ブランド制御と除外語句の設定、生成広告文の表現 |
| 自動作成アセット | LP等から生成される見出し・説明文 | 生成アセットの定期レビューと不適切なものの削除 |
| 自動適用のおすすめ | キーワード追加・予算変更などの設定変更 | 自動適用の対象カテゴリ、変更履歴の監査 |
自動生成アセットが引き起こしやすいリスク
自動生成物のリスクとしてまず挙がるのが、法規制への抵触です。AIはランディングページや過去の広告文から表現を組み替えて生成するため、単体では問題のない要素が組み合わさった結果、優良誤認や最上級表現に該当する広告文が生まれることがあります。医療・金融・人材など業法の縛りが強い業界では、生成物のレビューを省略すること自体が重大なコンプライアンスリスクになります。
厄介なのは、こうした問題のある生成物が必ずしもGoogleの広告審査で弾かれるとは限らないことです。媒体審査は媒体ポリシーへの適合を見るものであり、日本の景品表示法や個別業法への適合を保証するものではありません。審査を通過して配信されている広告が、国内法の観点では問題を抱えているという状況は普通に起こり得ます。媒体の審査通過を安全の証明と誤解しないことが、レビュー体制を考える際の前提になります。
もうひとつ見落とされがちなのが、ブランド毀損のリスクです。最終URLの拡張によって、広告の誘導先が意図しない古いページや採用ページに差し替わる、自動生成された見出しがブランドのトーンから外れる、といった事象は珍しくありません。広告費を投じて自社ブランドの信頼を削るという本末転倒を防ぐには、生成物を人間の目でレビューする仕組みが不可欠です。
さらに、成果面の副作用も無視できません。自動生成された広告文が商材の実態とずれた期待値を作ると、クリックは増えてもコンバージョンにつながらず、無駄なクリック費用と品質の低いリードが積み上がります。誘導先が最適でないページに拡張されれば、ランディングページの体験悪化がコンバージョン率を押し下げます。生成物のレビューは法務リスク対策であると同時に、広告費の投資効率を守る運用施策でもあるという認識が重要です。
AIが作ったからという言い訳は通用しない
新規約の実務的な意味は、トラブルが起きた際の説明責任の所在が明確になったことです。自動生成された広告文が景品表示法に触れた場合、行政や消費者に対して説明するのは広告主であり、「Googleが勝手に生成した」という主張は、確認・承認・削除の義務を果たしていなかったことの自認にしかなりません。
社内向けの説明責任も同様です。経営層や監査部門から「AI生成広告のリスク管理はどうなっているか」と問われたとき、規約上の義務を認識したうえで確認体制を運用している、と答えられる状態にしておく必要があります。上場企業やその子会社であれば、広告のガバナンスは内部統制の一部として整理される可能性もあり、担当者個人の心がけではなく組織の仕組みとして説明できるかが問われます。
これは代理店に運用を委託している場合も同じです。代理店との契約で運用責任の一部を分担することはできても、規約上の広告主責任そのものを移転することはできません。だからこそ、社内の承認体制と代理店との責任分界を同時に設計する必要があります。自社の自動化設定がどうなっているか把握できていない場合は、専門家による広告アカウント診断で現状を可視化するところから始めるのが近道です。
検索キャンペーンでAI Maxを使う場合の制御設計については、以下の記事で詳しく解説しています。
承認責任を社内で管理する承認チェーンの設計
法務・広告運用・事業責任者の3層で役割を分ける
承認責任の管理でよくある失敗は、「広告のことは運用担当者に全部任せる」という一極集中です。運用担当者は配信効率のプロであっても、業法や景品表示法の判断、ブランド戦略上の判断まで一人で担うのは無理があります。逆に、すべての生成物を法務に回すと承認が滞留し、自動化のスピードメリットが消えてしまいます。
現実的なのは、判断の性質ごとに承認者を分ける3層構造です。表現・法規制の判断は法務、配信設定と生成物の一次チェックは広告運用、予算と自動化方針の決定は事業責任者という役割分担を明文化し、それぞれが何をどのタイミングで見るかを決めておきます。層ごとの役割は次の表のように整理できます。
| 承認レイヤー | 承認する対象 | タイミング |
|---|---|---|
| 事業責任者 | 自動化機能の採用可否、URL拡張の方針、予算規模 | 機能の有効化前・四半期ごとの方針見直し |
| 法務・コンプライアンス | 表現ルール(NGワード・必須注記)、業法上の可否基準 | 基準策定時・新しい訴求軸の追加時 |
| 広告運用担当 | 自動生成アセットの一次レビュー、除外設定、不適切生成物の削除 | 週次の定期レビュー・アラート発生時 |
従業員数十名規模の企業で、専任の法務担当がいない場合もあるでしょう。その場合でも3層の考え方自体は有効で、重要なのは人を3人置くことではなく、判断の種類を分けることです。たとえば代表者が事業責任者と法務判断を兼ね、運用は担当者または代理店が担う形でも、「表現ルールを決める場」と「日常のレビューをする場」が別に存在していれば承認チェーンは機能します。兼務であっても、どの帽子をかぶって判断しているかを意識的に区別することが要点です。
事前ルールと事後レビューを組み合わせて回す
3層構造を機能させるコツは、すべての生成物を事前承認の対象にしないことです。AIの生成はリアルタイムに行われるため、配信前にすべてを人間が承認するのは現実的ではありません。そこで、法務が事前に定めた表現ルールの範囲内であれば運用担当の判断で配信を継続し、ルールから外れる生成物を発見したら削除して記録する、という事前ルールと事後レビューの組み合わせで運用します。
事前ルールの中身は、抽象的な心構えではなく判定可能な基準にします。使用禁止の語句リスト(「最安」「業界一」「完治」など商材に応じたNGワード)、割引や実績数値を使う場合の根拠資料の指定、医療・金融など業法上の必須注記、ブランド名の表記ルールといった具体項目に落とし込めば、法務でなくても一次判定ができ、レビューのスピードが上がります。このルール集は代理店にもそのまま共有でき、委託先の品質を揃える共通言語としても機能します。
事後レビューの頻度は、リスクの大きさで変えるのが合理的です。業法規制のある商材や新規に有効化した自動化機能は週次、安定運用に入った機能は月次といった形で濃淡をつけます。重要なのは、レビューを担当者の善意に依存させず、定例のアジェンダとして固定化することです。レビュー日をカレンダーに固定し、確認した生成物の件数と削除した件数を記録に残します。
変更履歴とレビュー記録を証跡として残す
承認チェーンの最後のピースは記録です。何かあったときに「確認していました」と口頭で言えるだけでは、社内的にも対外的にも弱く、いつ・誰が・何を確認し、何を削除したかの証跡が残っていて初めて、義務を果たしていたことを示せます。Google広告の変更履歴レポートを月次で書き出し、自動適用による変更と人間による変更を区別して保管するだけでも、監査可能性は大きく変わります。
レビュー記録はスプレッドシートで十分です。日付、確認者、対象キャンペーン、確認した生成物の概要、対応(承認継続・修正・削除)の5項目を残すフォーマットを決め、運用担当者の引き継ぎ資料と兼用します。この記録は担当者の交代や代理店の乗り換えの際にも効いてきます。過去にどの生成物を削除し、なぜその判断をしたのかが残っていれば、後任者は同じ失敗を繰り返さずに済み、新しい委託先への引き継ぎも設定リストを渡すだけの表面的なものにならずに済みます。承認体制の設計に不安がある場合は、第三者の視点でガバナンス設計をレビューしてもらうのも有効です。
自動適用のおすすめを事故なく使うための承認ルールと変更履歴の監査方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
代理店に任せてよい範囲と広告主が握るべき範囲
日常運用は任せても最終承認は移譲できない
運用を代理店に委託している広告主にとって、新規約は「代理店との付き合い方」を見直す契機になります。前述のとおり、規約上の確認・承認・削除の責任は広告主にあり、委託契約によってGoogleに対する責任が代理店へ移ることはありません。代理店がレビューを怠って問題広告が配信された場合でも、Googleや行政との関係で矢面に立つのは広告主です。
だからといって、すべてを内製する必要はありません。自動生成アセットの一次レビューや除外設定の運用、変更履歴のモニタリングといった日常的な確認作業は、専門知識を持つ代理店に任せたほうが精度も速度も上がります。任せてはいけないのは、自動化機能を有効にするか否かの意思決定と、表現ルールの最終決定です。この2つはビジネスリスクの引き受けそのものであり、広告主にしか判断できません。
代理店を評価する視点としても、今回の規約改定は使えます。発効前後に代理店側から規約変更の説明や対応提案があったかどうかは、その代理店がアカウントを自分事として管理しているかを測る分かりやすい指標です。何の言及もないまま従来どおりの運用が続いているなら、自動生成物のレビューがどの程度行われているのか、定例の場で具体的に確認してみることをおすすめします。
契約書とSLAに落とすべき責任分界
役割分担は口頭の合意ではなく、契約書・SLAの条文に落とし込みます。具体的には、自動生成アセットのレビュー頻度と報告方法、不適切な生成物を発見した際の削除権限と報告期限、自動化機能の設定変更時の事前承認の要否、変更履歴の共有方法といった項目です。既存の運用委託契約はAI自動生成を想定していないものが多いため、覚書の追加だけでも交わしておく価値があります。
責任分界を文書化するプロセスは、代理店との関係を疑うためのものではなく、むしろ健全な協業の土台になります。どこまでが代理店の作業範囲で、どこからが広告主の判断事項かが明確になれば、代理店側も「勝手に設定を変えた」と後から責められる不安なく提案でき、広告主側も安心して日常運用を任せられます。曖昧な分担のまま自動化が進むことが、双方にとって最大のリスクです。
逆に、レポート枚数や定例会の回数ばかり細かく、生成物レビューの責任について何も書かれていない契約は、新規約下ではリスクの空白地帯を残します。更新のタイミングで条文を見直し、代理店側の対応が曖昧な場合は、セカンドオピニオンとして現行契約と運用体制の診断を受けてみることをおすすめします。
代理店任せにしてはいけない必須確認事項
- 自動化機能(Performance Max・AI Max・自動適用のおすすめ等)を有効にする最終判断
- 業法・景品表示法に関わる表現ルールとNGワードの決定
- クロール許可・URL拡張の範囲など、自社サイトのどこまでを広告に使わせるかの方針
- 問題発生時にGoogleへ申し立てを行うアカウント所有権と管理者権限の保持
代理店との契約条項や責任分界の定め方は、以下の記事で網羅的に整理しています。
発効後すぐに実施したい点検と運用ルールの整備
既存キャンペーンの自動化設定を棚卸しする
新規約はすでに発効しているため、対応は「これから準備する」ではなく「いま点検する」フェーズにあります。最初にやるべきは、アカウント内でどの自動化機能が有効になっているかの棚卸しです。Performance Maxのアセットグループ、検索キャンペーンのAI Max設定と最終URLの拡張、自動作成アセットのオン・オフ、自動適用のおすすめの対象カテゴリを一つずつ確認し、有効化した記憶のない設定が動いていないかを洗い出します。
特に注意したいのは、過去の担当者や旧代理店が有効化したまま放置されている設定です。自動適用のおすすめは知らないうちにキーワードや予算を変更しているケースが実際に多く、規約上はその変更結果にも広告主が責任を負います。棚卸しの結果は前述のレビュー記録と同じフォーマットで残し、不要な自動化はこの機会に無効化します。
MCC(クライアントセンター)配下に複数アカウントを持っている場合は、アカウント単位ではなくMCC全体で棚卸しの対象を洗い出します。ブランド別・事業部別にアカウントが分かれていると、設定の思想がアカウントごとにバラバラになりがちで、あるアカウントでは無効化した自動適用が別のアカウントでは動き続けている、という状態が起こりやすいためです。棚卸しの結果を一覧化すれば、全社としてどの自動化をどこまで許容するかという方針の議論にもつなげられます。
発効後の初回点検チェックリスト
- Performance Max・デマンドジェンのアセットグループと生成アセットを目視確認する
- 最終URLの拡張の設定と除外URLリストを確認し、誘導先にしたくないページを除外する
- 自動適用のおすすめの対象カテゴリと直近90日の変更履歴を確認する
- 会話型AI機能への入力ルールを策定し、運用メンバーと代理店に共有する
- レビュー担当者・頻度・記録先を決め、定例アジェンダに組み込む
アカウント権限と通知設定を見直す
承認チェーンを機能させる前提として、Google広告アカウントの権限設計も見直しておきます。誰が管理者権限を持ち、誰が編集権限で日常運用を行い、法務や事業責任者は閲覧権限で監査できる状態になっているか。権限が代理店側に偏っていて広告主側に管理者がいない状態では、不適切な生成物を発見しても自力で削除できず、確認・承認・削除の義務を果たす手段そのものを欠くことになります。
あわせて、アカウントの重要な変更に関する通知メールが、退職者のアドレスや代理店の担当者個人にだけ届く設定になっていないかも確認します。通知の宛先を運用チームの共有アドレスに変更するだけで、設定変更の見落としリスクは大きく下がります。
権限の監査は一度きりではなく、半期に一度など定期的に実施するのが理想です。退職した担当者のアカウントが残っていないか、過去に一時的に付与した外部パートナーの権限が放置されていないか、権限レベルが業務の実態に合っているかを確認します。承認チェーンは「誰が何を判断するか」の設計であると同時に、「誰がアカウントに触れられるか」の管理でもあり、両者が揃って初めてガバナンスとして成立します。
月次レビューに自動生成物の確認を組み込む
点検を一度やって終わりにせず、月次の定例レビューに「自動生成物の確認」を固定アジェンダとして追加します。具体的には、当月に生成されたアセットのサンプル確認、削除・修正した生成物の件数報告、自動適用による設定変更の一覧確認の3点です。所要時間は慣れれば15分程度で、広告の成果報告と同じ定例の場でそのまま完結させられる分量です。
この習慣は規約対応にとどまらず、配信品質の改善にも直結します。生成物のレビューを通じて「AIがどんな訴求を作りがちか」「どの素材が使い回されているか」が見えるため、アセットの追加や差し替えの判断材料になるからです。規約対応を守りのコストで終わらせず、運用改善のインプットとして活用する視点を持つと、レビュー体制は定着しやすくなります。
四半期に一度は、月次レビューより一段高い視点での見直しも行います。自動化機能ごとの成果とリスク事象の発生状況を振り返り、有効化を続けるか、設定を変えるか、無効化するかを事業責任者が判断する場です。AI関連の機能追加は今後も続くことが確実なため、新機能を検証する際の評価基準と試験導入の手順をこのタイミングで整えておくと、次の変化にも同じ枠組みで対応できます。
権限設計とアカウント所有権の整理は、代理店の乗り換えやインハウス移行の場面でも効いてきます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
まとめ:新規約への対応は承認チェーンの設計から始める
2026年7月1日に発効したGoogle広告の新利用規約は、AI自動生成キャンペーンの確認・承認・編集・削除の責任が広告主にあることを明文化しました。自動化の便利さを享受しながらリスクを管理するには、法務・広告運用・事業責任者の3層で承認責任を分担する体制を作り、証跡を残しながら回し続けることが唯一の現実解です。自動化の波は今後さらに強まるため、この体制はそのまま次の機能変更への備えにもなります。本記事の要点を3つにまとめます。
- 新規約ではAIが生成した広告でも最終責任は広告主が負う。対象はPerformance Max・AI Max・自動作成アセットなど広範囲に及ぶ
- すべてを事前承認するのではなく、事前の表現ルールと週次・月次の事後レビューを組み合わせ、記録を証跡として残す
- 代理店に日常レビューは任せられるが、自動化機能の採用判断と表現ルールの最終決定は広告主にしか下せない
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