Amazon Brand Lift実務ガイド|Sponsored DisplayとStreaming TVの認知効果をどう測るか

Amazon広告の成果を語るとき、会話はほぼ必ずROASと広告経由売上に着地します。ところがSponsored DisplayやStreaming TVのように、購入直前ではなく「まだ買う気になっていない人」に当てる枠を増やした瞬間、その物差しは急に役に立たなくなります。クリック直後のコンバージョンを取りにいっていない広告を、クリック直後のコンバージョンで採点しているからです。

この評価のズレを埋めるためにAmazon Adsが用意しているのがAmazon Brand Liftです。広告に接触した人と接触していない人にアンケートを配り、認知や購買意向といった上流の指標がどれだけ持ち上がったかを差分で見る仕組みで、売上レポートには絶対に出てこない情報を返してくれます。ただし、申し込めば勝手に答えが出る道具ではありません。設計を誤ると「有意差なし」の一行だけが返り、翌期の上流予算が削られます。

この記事では、Amazon Brand Liftで何が測れて何が測れないのかを整理したうえで、Sponsored DisplayとStreaming TVで設計をどう変えるべきか、結果をどう読んで社内の予算判断に接続するかまでを実務の順序で解説します。結論を先に言えば、ブランドリフトは配信が終わってから思い出す調査ではなく、配信を始める前に主指標と対照群を決めておく設計作業です。

この記事の要点

  • Amazon Brand Liftは広告接触群と非接触群にアンケートを配り、認知・広告想起・購買意向など上流6指標の差分を測る調査機能
  • 2026年9月時点で日本の広告主が使える中心経路はAmazon DSP。スポンサー広告での実施は米国が先行しており、日本での提供範囲は営業担当への確認が必要
  • Sponsored Displayは広告想起と好意、Streaming TVは認知と好感度が動きやすく、同じ質問設計を流用すると結論を読み違える
  • 結果は相対リフト倍率ではなく、接触群と対照群の絶対差とサンプルサイズをセットで読む
  • 有意差が出ない原因はサンプル不足・対照群の汚染・指標選定・クリエイティブの順に疑うと切り分けが早い

Amazon Brand Liftは接触群と非接触群の差で上流効果を測る仕組み

Amazon Brand Liftとは、広告に接触したユーザー群と接触していない対照群の双方にアンケートを実施し、その回答差から広告の上流効果を定量化するAmazon Ads公式の測定機能です。売上やROASのように購買行動の結果を見るのではなく、購買に至る前の心理的な変化を直接聞きにいく点が他の計測と決定的に違います。

測れるのは売上ではなく認知から購買意向までの六つの目標

Amazon Adsの公式ページ「ブランドリフト:広告の影響を調査する」によれば、この機能で測定できるのは認知、動向(態度)、好み、好感度、意図、広告想起の六つの目標です。どれも商品ページのセッション数やカート追加数からは推し量れず、アンケートでしか取れません。

実務で混同されやすいのは「好み」と「好感度」です。好感度はブランドへの良い印象という感情面の指標で、好みは競合と並べたときにどちらを選ぶかという相対的な選好を指します。広告想起は「最近この広告を見た記憶があるか」という接触の確からしさを測る指標です。

この違いを曖昧にしたまま六つ全部を並べて眺めると、どの数字が動いたら何をするのかが決まりません。調査を設計する段階で主指標を一つに絞り、残りは参考指標として扱うのが、結果を意思決定に接続するための最低条件になります。

対照群はAmazon Shopper Panelへのアンケートで作られる

Amazon Brand Liftの調査対象は、Amazon Shopper Panelというアンケート参加者コミュニティです。Amazon Adsは同パネルを「規模が大きく、代表的で高いエンゲージメントを誇る」コミュニティと説明しており、ここに対して広告接触の有無で分けた二群にアンケートを配ることで、プライバシーを守りながら比較可能な対照群を確保しています。

広告主側が自前でサーベイパネルを買い、広告接触データと突き合わせようとすると、接触判定の精度と個人情報の扱いの両方で壁にぶつかります。配信プラットフォーム内部で接触フラグを持ったまま調査を回せることが、この機能の実質的な価値です。逆に言えば、Amazon内部で接触が判定できない広告は対象にならないため、Amazon外で配信したバナーやテレビCMの効果をここで測ることはできません。

結果は提出からおよそ十営業日で返ってくる

Amazon Adsは、調査はキャンペーンのフライト期間前または期間中にリクエストでき、提出後わずか十営業日で結果が得られると案内しています。四半期のレビューに間に合わせたいなら、フライト設計と同時に調査リクエストのスケジュールも引いておく必要があります。

実務上ありがちな事故は、キャンペーンが終わってから上流効果も見たいと言い出し、すでに接触群の配信が止まっているケースです。アンケートは配信中の接触を前提に設計されるため、調査の申し込みはフライト開始前に済ませておくのが原則と考えてください。

日本の広告主が使える範囲はAmazon DSPが中心

2026年9月時点で、日本の広告主がAmazon Brand Liftを実施する主経路はAmazon DSPです。Amazon Adsの公式案内では、Amazon DSP広告主が利用できる国として米国・カナダ・ドイツ・スペイン・フランス・メキシコ・日本・英国が挙げられており、スポンサー広告の広告主については米国が対象として記載されています。

日本の広告主が利用可能になったのは二〇二五年四月

Amazon Adsは2025年4月30日付の発表で、日本の広告主がAmazonブランドリフトでブランドインパクトを評価できるようになったと告知しました。同発表ではセルフサービスとマネージドサービスの双方に対応し、アクセス経路としてAmazon DSPとAmazon Ads APIが挙げられています。レポートはクリエイティブ、ユーザー属性、フリークエンシーといった詳細軸とあわせてインサイトを返す設計です。

この分解軸を持つという点は見落とされがちですが、後述する結果の読み方に直結します。次のフライトで何を変えるかを決めるには、どのクリエイティブがどの頻度帯で効いたのかを見る必要があるからです。

スポンサー広告での実施は米国が先行している

米国では2024年6月30日の発表で、Sponsored Display、Sponsored Brands、Sponsored TV、そしてAmazon DSPのキャンペーンがAmazon Brand Liftの対象になったと案内されています。またAmazon Adsの別ページでは、スポンサー広告を通じて実施されるすべての広告キャンペーンのうちスポンサープロダクト広告のみが対象外であると記載されています。

したがって日本のアカウントでSponsored Displayのブランドリフトを単体で回せるかどうかは、公開情報だけでは確定できません。この点は担当のAmazon Ads営業担当または代理店に、自社アカウントで実施可能な広告タイプを名指しで確認するのが確実です。公開ヘルプの記述と実際のアカウント権限は一致しないことがあるため、提案書に書く前の確認を強く推奨します。

費用は無料だが最低基準の具体値は公開されていない

費用面について、Amazon Adsはキャンペーンが支出とインプレッションの最低基準を満たしている限り無料であると明記しています。追加の調査費が発生しないのは、上流測定の予算を取りにくい企業にとって大きな利点です。

ただし、その「最低基準」の具体的な金額やインプレッション数は公式には数値が公開されていません。海外の代理店ガイドには媒体費一万ドル以上、配信十四日以上といった目安が載っていますが、これは公式値ではなく事業者の経験則であり、日本市場にそのまま当てはまる保証はありません。社内の稟議に数字を載せるなら、営業担当に自社の出稿規模での可否を確認してから書いてください。

提案前に確認しておく三点

  • 自社アカウントで実施可能な広告タイプ(DSPのみか、スポンサー広告も含むか)
  • 自社の出稿規模が支出・インプレッションの最低基準を満たすか(具体値は公式非公開のため要問い合わせ)
  • リクエストから結果返却までのスケジュールが社内レビューに間に合うか

Amazon DSPそのものの配信設計や、スポンサー広告との役割分担から整理したい場合は、以下の記事をご覧ください。

Sponsored Displayで主指標に据えるべきは広告想起と好感度です。商品詳細ページやAmazon外のディスプレイ面に出るこのフォーマットは、初めてブランドを知らせる役割よりも、検討中の買い物客に繰り返し姿を見せて想起の網に入り続ける役割のほうが強いためです。

商品ページ面のディスプレイは認知より想起が動きやすい

Sponsored Displayの接触は、多くの場合すでに何らかのカテゴリー関心を持ったユーザーに対して発生します。競合商品の詳細ページや自社商品の閲覧履歴をもとに配信するため、ゼロからブランドを認知させる場面は構造的に少なくなります。

この前提で認知を主指標に置くと、差分が小さく出て「効果がなかった」と結論づけやすくなります。実際に動いているのは「カテゴリーを買おうと思ったときに自社ブランドが頭に浮かぶ確率」であり、これは広告想起と好感度の組み合わせで捉えるほうが素直です。フォーマットの役割と主指標を揃えることが、リフト調査の成否を分ける最初の分岐点になります。

オーディエンス設計がそのまま対照群の質を決める

Sponsored Displayはオーディエンスの指定幅が広いぶん、接触群の性質が設定次第で大きく変わります。自社商品の購入者リマーケティングを含んだまま調査を回せば、もともとブランドを知っている層が接触群に厚く入り、リフトが出にくくなります。

調査に使うキャンペーンは、既存顧客への再接触と新規層への到達を同じキャンペーンに混ぜないほうが読みやすくなります。運用効率だけを考えると分けないほうが楽ですが、測定を目的に据えた期間だけは分離しておくべきです。測りたい仮説が先にあり、それに合わせて配信を分けるという順序を崩さないでください。

検索棚取りの数字と混ぜない

Sponsored Displayの評価でもう一つ起きやすいのが、Sponsored ProductsやSponsored Brandsの売上と同じダッシュボードに並べて、貢献度の奪い合いを始めてしまう事故です。上流フォーマットの成果をラストクリック基準の売上表に並べると、必ず負けます。

ブランドリフトの結果は売上表とは別のレポートとして扱い、上流の指標が動いたかどうかだけで単独評価するのが原則です。そのうえで、検索棚取りの指名検索ボリュームや新規顧客比率の推移を並走指標として見ると、上流投資の効きが立体的に見えてきます。

検索面との予算配分や数字の重複の切り分けについては、以下の記事で詳しく解説しています。

Streaming TVのブランドリフトは到達とフリークエンシーで決まる

Streaming TVで主指標に据えるべきは認知と好感度です。音と映像で数十秒にわたって注意を占有できるフォーマットは、まだブランドを知らない層に対して新規の認知を作る力があり、ディスプレイよりも上流側の指標が動きやすい構造になっています。

動画は認知と好感度が動きやすい

動画広告はスキップ不可の枠で流れることが多く、接触の質がディスプレイと比べて安定しています。接触したかどうかが曖昧になりにくいぶん、アンケートで返ってくる差分もノイズが小さくなります。ブランドの世界観を伝える尺があるため、好感度の変化も拾いやすくなります。

一方で購買意向は、商品が高関与か低関与かで動きやすさが変わります。検討期間が短いカテゴリーなら意図まで動きますが、検討期間の長い耐久財では認知と好感度までしか動かないことも珍しくありません。カテゴリーの検討期間に応じて、どの指標まで動けば成功とみなすかを事前に合意しておく必要があります。

フリークエンシー分解を必ずレポートで見る

Amazon Brand Liftのレポートはフリークエンシーを含む分解軸を持っています。全体では有意差が出なくても、接触回数が一定を超えた層でだけ明確なリフトが出るというパターンは頻繁に起きます。この分解を見ずに「効果なし」と結論づけるのは、最も惜しい失敗です。

逆に、極端に高い頻度帯でリフトが頭打ちになっているなら、フリークエンシーキャップを下げて同じ予算でリーチを広げる判断ができます。ブランドリフトは合否判定の道具ではなく、次のフライトのフリークエンシー設計を決めるための入力データとして使うのが正しい向き合い方です。

ディスプレイとの併用が効くというメタ分析

Amazon Adsが2024年12月に公表したブランドリフトのメタ分析では、2022年第4四半期から2024年第3四半期にかけての三千件超の測定を分析した結果として、ディスプレイ広告と動画広告を併用した場合に動画単独と比べて認知が2.2倍になったと報告されています。同分析では購買意向が2.9倍、好みが2.3倍、顧客満足に関する指標が1.9倍という数字も示されました。

ただしこれはAmazon Ads自身が自社プロダクトについて公表した集計であり、業種や出稿規模の内訳は限定的にしか開示されていません。自社の期待値としてそのまま使うのではなく、併用の方向性を支持する傍証として扱うのが妥当です。次の表は、フォーマットごとに主指標をどう置き分けるかの整理です。

フォーマット主に狙う役割主指標に置くべき項目参考指標
Sponsored Display検討層への反復接触と想起維持広告想起・好感度好み・購買意向
Streaming TV未認知層への新規到達認知・好感度広告想起・好み
Amazon DSP(ディスプレイ)オーディエンス拡張と再接触広告想起・好み認知・購買意向
Sponsored Brands(動画)検索結果内でのブランド訴求広告想起・購買意向好感度
フォーマット別に主指標を置き分ける整理(2026年9月時点の運用方針)

Streaming TVの効果を指名検索の増加という側面から評価する方法については、以下の記事で解説しています。

調査を申し込む前に決めるのは指標と期間と質問文

ブランドリフト調査の成否は、申し込みフォームを開く前の三つの決めごとでほぼ決まります。主指標を一つに絞ること、フライト開始前にリクエストを出すこと、そして質問文で自社ブランドがどう表記されるかを確認することです。

主指標は一つに絞る

六つの目標を全部測れるからといって全部を主指標にすると、どれか一つでも動けば成功、動かなければ失敗という都合の良い解釈が入り込みます。上流投資の継続可否を判断したいなら、事前に「この指標がこの水準動いたら継続、動かなければ配分を変える」というルールを文書にしておくべきです。

この合意は広告担当者だけでは作れません。ブランド側の担当者や経営層を巻き込み、フライト前に決めておく必要があります。結果を見てから成功の定義を決めるのは、測定ではなく後付けの説明になってしまいます。

期間はフライトに合わせて前倒しで申し込む

調査のリクエストはフライト前または期間中に出せますが、実務上はフライト前に出しておくのが安全です。配信途中で申し込むと、それ以前の接触が調査設計にどう扱われるかが不透明になり、結果の解釈に余計な但し書きが増えます。

また結果が返るまでにおよそ十営業日かかるため、四半期末のレビューに間に合わせたい場合は、フライト終了から逆算して二週間以上の余裕を見ておく必要があります。社内レビューの日程が先に決まっているなら、そこから逆算してフライト終了日を設計してください。

質問文はブランド名の表記ゆれまで確認する

アンケートで提示されるブランド名や商品カテゴリーの表記が、生活者の認識とずれていると、それだけで回答が鈍ります。正式社名で聞いているのに市場では略称やブランド名で認知されている、英字表記で聞いているのに店頭ではカタカナが主流、といったズレは珍しくありません。

競合として並べるブランドの選定も同様に重要です。市場での実際の競合ではなく、カテゴリー内の最大手だけを並べると、自社の好みの数字が構造的に低く出ます。次の表は、申し込み前の設計チェックの整理です。

設計項目決めておく内容放置したときに起きること
主指標継続判断に使う指標を一つ指定動いた指標だけを拾う後付け解釈
成功水準何ポイント動けば継続かを事前合意結果が出ても判断が進まない
申込時期フライト開始前にリクエスト接触の扱いが不透明になる
質問文の表記ブランド名・カテゴリー名の実際の呼称認知が実態より低く出る
競合の選定実際に比較検討される相手を指定好み指標が構造的に低く出る
ブランドリフト調査の申し込み前チェック項目

結果は差分の絶対値とサンプルサイズをセットで読む

ブランドリフトのレポートを読むときに最初に確認すべきは、相対リフトの倍率ではなく接触群と対照群の回答率の絶対差、そして各群の回答者数です。この二つを見ないまま倍率だけを社内に共有すると、ほぼ確実に過大評価になります。

相対リフトだけ見ると過大評価する

対照群の認知率が2%で接触群が4%なら、相対リフトは100%増という派手な数字になります。しかし絶対差は2ポイントしかなく、サンプルサイズが小さければ誤差の範囲に収まる可能性があります。報告資料に「認知2倍」とだけ書くのは、数字としては正しくても意思決定材料としては危険です。

社内に共有する形式は「対照群◯%に対し接触群◯%、差は◯ポイント」という絶対値の並記に統一してください。倍率表現は必ず絶対差とセットで書くというルールを、レポートテンプレートの段階で決めておくのが効果的です。

セグメント分解は仮説を持って見る

レポートはクリエイティブ、ユーザー属性、フリークエンシーといった軸で分解できます。ただしセグメントを細かく切るほどサンプルサイズは小さくなり、偶然の差が大きく見えるようになります。全部の組み合わせを眺めて一番差が大きいセルを探しにいくと、再現しない発見を掴まされます。

分解を見る前に「このクリエイティブのほうが好感度を上げているはず」といった仮説を二つか三つ書き出し、その検証としてだけ分解軸を使ってください。探索ではなく検証として分解を使うと、次に打つ手が明確になります。

有意差が出ないことは効果がないことと同じではない

統計的に有意な差が検出されなかったという結果は、「効果がゼロである」ことを証明したものではなく、「今回の設計とサンプル規模では差を検出できなかった」という意味にとどまります。ここを取り違えると、実際には効いている上流投資を打ち切ってしまいます。

有意差が出なかった場合に報告すべきは、検出できなかったという事実と、次に何を変えれば検出力が上がるかという具体案です。出稿規模を増やすのか、対象セグメントを絞るのか、主指標を想起側に寄せるのか、選択肢を添えて報告してください。

リフトが出なかったときに疑う順番

リフトが出なかったときは、サンプル不足、対照群の汚染、指標の選び方、クリエイティブの順に疑うと切り分けが最短で終わります。この順序を守らずにいきなりクリエイティブの作り直しに走ると、原因が別のところにあった場合に同じ結果を繰り返します。

サンプル不足を最初に疑う

最初に見るのは各群の回答者数です。母数が小さければ、どれだけ実際の効果があっても統計的には検出されません。出稿規模が最低基準ぎりぎりだった場合、そもそも検出力が足りていない可能性を最初に排除しておくべきです。

この場合の対処は単純で、次回は配信予算か配信期間のどちらかを増やすことになります。予算を増やせないなら、対象オーディエンスを絞って同じ予算内で接触密度を上げる選択肢もあります。

次に対照群の汚染を疑う

対照群に、実際にはブランドを知っている層が多く含まれていると、差分は構造的に小さくなります。すでに自社商品を購入したことがある層や、Amazon外の別キャンペーンで接触済みの層が対照群に入っている場合がこれにあたります。

特に、同じ期間にAmazon外で大規模なテレビCMやSNSキャンペーンを打っていた場合、対照群も外部で接触している可能性が高くなります。ブランドリフト調査を回す期間は、他チャネルの大型施策とできるだけ重ねないのが設計上の鉄則です。

最後にクリエイティブと指標の選び方を疑う

ここまで潰してもなお差が出ない場合に、はじめてクリエイティブと主指標の選定を見直します。Sponsored Displayで認知を主指標にしていた、Streaming TVで検討期間の長い商材の購買意向を主指標にしていた、といった設計側の問題が残っていないかを確認してください。

クリエイティブ側では、ブランド名やロゴの露出タイミングが遅すぎないか、音声オフでも伝わる構成になっているかが典型的な確認ポイントになります。広告想起が伸びないときは、多くの場合クリエイティブの問題というより、ブランド識別要素の出し方の問題です。

結論を出す前に必ず確認すること

  • 各群の回答者数を見たか(母数が小さいなら結論を保留する)
  • 調査期間に他チャネルの大型施策が重なっていなかったか
  • 主指標がフォーマットの役割と合っていたか
  • フリークエンシー分解で、特定の接触回数帯だけリフトしていないか

ブランドリフトは他の計測と役割分担させる

ブランドリフトは単独で完結する測定ではなく、Amazon Attribution、Amazon Marketing Cloud、指名検索の推移と組み合わせて初めて意思決定に使える測定スタックになります。それぞれが答えられる問いが違うため、役割を混ぜないことが重要です。

Amazon Attributionは外部流入の売上を測る

Amazon Attributionは、Amazon外で配信した広告や検索流入がAmazon内の売上にどう結びついたかを測る仕組みです。ブランドリフトが「気持ちがどう動いたか」を測るのに対し、Attributionは「実際に買ったか」を測ります。上流施策の評価では、この二つを並べて初めて全体像が見えます。

実務では、ブランドリフトで上流指標が動いたことを確認し、同じ期間にAttribution側で新規顧客比率が上がっているかを確認する、という二段構えが有効です。片方だけで上流投資の是非を判断しないことが、社内での合意形成を安定させます。

Amazon Marketing Cloudは経路を測る

Amazon Marketing Cloudは、広告接触から購買までの経路を匿名化されたログレベルで分析できる環境です。ブランドリフトが示すのは「差があったかどうか」という結論であり、その背後でどんな接触の組み合わせが起きていたかは見えません。そこを補うのがAMCの役割になります。

たとえばStreaming TVの認知リフトが確認できたとして、その後に検索広告経由で購入しているのか直接商品ページに来ているのかはAMCでしか分かりません。次のフライトで検索側の予算をどう動かすかを決めるには、この経路情報が必要です。

指名検索は日次で動く先行指標

ブランドリフトは結果が出るまでに十営業日前後かかるため、配信中の異常検知には使えません。その役割を担うのが、自社ブランド名での検索ボリュームや指名キーワードのインプレッションシェアといった日次で観測できる指標です。

上流施策を打ち始めた週から指名検索が伸びているかを毎日見ておけば、ブランドリフトの結果が返る前にクリエイティブの差し替え判断ができます。日次の先行指標と十営業日後の確定指標を二段で持つのが、上流投資を止めずに回すための運用設計です。

外部広告とAmazon売上を一本の線でつなぐ計測設計については、以下の記事で詳しく解説しています。

上流指標を社内の予算判断に接続する

ブランドリフトの結果を予算判断に接続する鍵は、調査を実施する前に「どの数字がどう動いたら次期予算をどうするか」というルールを文書にしておくことです。結果が出てからルールを作ると、必ず解釈の綱引きが始まります。

上流予算の継続可否を決めるルールを先に作る

実務で機能するのは、主指標の絶対差に閾値を置き、それを上回れば同額継続、大きく上回れば増額、下回れば配分変更という単純な三分岐です。閾値の水準は業種や出稿規模で変わるため、初回の調査は閾値を決めるための基準づくりと位置づけてしまうのが現実的です。

一度でも自社の数字を持てば、二回目以降は前回比で語れるようになります。他社事例のベンチマークより、自社の前回値のほうが判断材料として強いため、まずは一回目を回して基準線を引くことを優先してください。

代理店に任せる範囲を決める

調査設計を代理店に任せる場合でも、主指標の選定と成功水準の決定は広告主側が握っておくべき領域です。ここを丸ごと預けると、結果が出たときに「その指標を選んだ理由」を社内で説明できなくなります。

逆に、フリークエンシー分解の読み解きやクリエイティブ改善の具体案は、複数ブランドの実施経験がある運用者のほうが速く出せます。ハーマンドットでも、上流指標の設計を広告主と一緒に固めたうえで、レポートの分解と次フライトの配信設計を引き受ける形で支援しています。上流施策の評価軸づくりから相談したい場合は、無料の広告アカウント診断からお問い合わせください。

代理店を選ぶ際の判断基準を整理したい場合は、以下の記事をご覧ください。

まとめはブランドリフトを設計してから配信する

Amazon Brand Liftは、ROASでは採点できない上流フォーマットに、社内で説明可能な数字を与えてくれる仕組みです。ただしその価値は、配信を始める前にどれだけ設計を固めたかに比例します。申し込みフォームを開く前に、主指標と成功水準と調査期間を決めておくことが、結果を意思決定につなげる唯一の方法です。

  • 主指標はフォーマットの役割に合わせて一つだけ選ぶ。Sponsored Displayは広告想起と好感度、Streaming TVは認知と好感度が動きやすく、役割とズレた指標を置くと効果があっても検出できません。
  • 結果は絶対差とサンプルサイズをセットで読む。相対リフトの倍率だけを共有すると過大評価になり、フリークエンシー分解を見ないと有効だったパターンを見落とします。
  • リフトが出ない原因はサンプル・対照群・指標・クリエイティブの順に疑う。いきなりクリエイティブを作り直すと、原因が別にあった場合に同じ失敗を繰り返します。

まずは無料で広告アカウント診断を

Amazon広告で上流フォーマットに予算を配分したいものの、社内で効果を説明する物差しがないという課題は、多くの広告主に共通しています。ハーマンドットでは、現在のアカウント構成とレポート体制を確認したうえで、ブランドリフトを含む上流測定をどう組み込むべきか、具体的な設計案をお渡ししています。

Amazon DSPやStreaming TVの出稿規模が最低基準を満たすかどうか、どのキャンペーンを調査対象にすべきかといった実務的な判断も含めて、現状の数字を見ながらご相談いただけます。診断では既存アカウントの構成と計測設計を確認したうえで、改善余地を具体的な施策単位でご提示します。

初回相談は完全無料・所要時間30分・オンライン対応可能です。

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