自社商標を他社の広告文に使われたら|Google広告の商標侵害申し立て前の証拠収集と対象確認

商標侵害の申し立て前の証拠収集

自社の社名や商品名で検索したところ、他社の広告が表示され、しかも広告文の中に自社の商標が書かれていたという相談は少なくありません。こうした場面に出会ったとき、多くの担当者が最初に考えるのは「Googleに申し立てれば止められるのか」という点です。ところが、Google広告の商標ポリシーは、商標がキーワードとして使われている場合と、広告文の中で使われている場合とで扱いをはっきり分けています。

この違いを確かめないまま申し立てると、受付の対象外になったり、根拠が足りずに制限されなかったりします。逆に、申し立ての対象になる使い方であっても、商標の権利範囲・国・広告主のドメインを正しく特定できていないと、手続きは前に進みません。申し立ての成否は、フォームに向かう前の準備でほぼ決まります。

この記事では、商標権者の立場から、他社の広告に自社商標が使われたときに「申し立ての対象になるか」を確認する手順と、そろえておくべき証拠の残し方を解説します。自社キャンペーン側の指名語管理や除外設定の話は扱いません。なお、商標権侵害に当たるかどうかの法的判断は、最終的に弁護士・弁理士へご確認ください。

この記事の要点

  • Google広告はキーワードとしての商標使用を制限しないため、申し立ての主な対象は広告文の中での使用です
  • 申し立ては特定の広告主に対して、商標権を示した国と業種の範囲で受け付けられます
  • 申し立て前に、登録商標の区分・指定商品、広告主のドメイン、例外に当たらないかを確認します
  • 証拠は検索語・日時・地域・端末・広告文・最終ページURLを1件ずつ記録シートに残します
  • 相手に悪意がなさそうな場合は、直接の除外依頼を先に検討する選択肢もあります

他社広告での商標使用は キーワードと広告文で扱いが分かれます

他社の広告に自社商標が関わる場面は、Google広告のポリシー上、キーワードとしての使用と広告文での使用の2つに分かれます。Google広告の商標侵害の申し立てとは、商標権者またはその代理人が、自社の商標を広告内で無断使用している特定の広告主について、Googleに使用の制限を求める手続きです。対象になるのは広告内の表示であり、検索語との一致だけでは対象になりません。

キーワードとしての使用は媒体ポリシーでは制限されません

Googleの広告ポリシー「商標」は、商標を広告のキーワードとして使用する場合は制限しないと明記しています。表示URLのセカンドレベルドメインに商標が含まれる場合や、商標が通常の意味で記述的に使われている場合も同様です。つまり、他社が自社の社名で入札しているだけで、広告文に商標が出ていないケースは、Googleへの申し立てでは止められません。

Yahoo!広告も、商標使用制限の案内で制限の対象を検索広告の広告文とし、キーワードは対象外としています。キーワード入札そのものを問題にしたい場合は、媒体のポリシーではなく、相手への依頼や法的な検討の領域になります。ここを混同すると、時間をかけて書類をそろえても受付されない結果になりがちです。

広告文での使用が制限されるのは競合による使用と誤認を招く使用です

Googleが制限の対象として挙げているのは、直接競合している他社が広告に商標を使う場合と、紛らわしい・虚偽的・誤解を与える方法で使う場合です。英語版のポリシーでは、商標が広告自体に使われている必要があり、ランディングページだけに使われている場合は対象にならないと説明しています。

また、Googleはヘルプの翻訳版を提供していますが、措置は公式言語である英語版の記述に沿って行うとしています。日本語版の表現だけで判断が微妙な場合は、英語版のTrademarks policyもあわせて確認しておくと、申し立ての書き方を誤りにくくなります。

商標が使われている場所Google広告の扱いYahoo!広告の扱い権利者が取れる主な手段
キーワード(入札語)だけ制限しない制限の対象外相手への除外依頼、法的な検討
広告文(見出し・説明文)競合による使用・誤認を招く使用は制限の対象商標登録がある場合に申請可媒体への申し立て
表示URLのドメイン部分制限しない案内ページに明記なし法的な検討
ランディングページだけ広告内に無ければ対象外案内ページに明記なしサイト運営者への連絡、法的な検討

自社側の指名語の管理やブランド除外の切り分けについて詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。

申し立て前に 権利の範囲と広告主を特定します

申し立ての前に確認すべきことは、自社の商標権がどの国のどの商品・役務に及ぶのかと、相手の広告主をどのドメインで特定できるのかの2点です。Googleは、商標権の申し立てを、商標権所有者が権利を示した国と業種の範囲内で、URLによって特定された広告主に限って受け付けるとしています。

過去には、権利者が商標を登録すると業種内の広告主全体を対象に監視される仕組みがありましたが、Chambers掲載の法律事務所の解説によると、2023年7月24日からは特定の広告主に対する申し立てのみを受け付ける形に変わっています。そのため、新しい広告主が現れるたびに、権利者側で見つけて個別に申し立てる必要があります。日々の監視と記録の仕組みが、以前よりも重要になったといえます。

登録商標の区分と指定商品を確認します

最初に、特許庁の情報を検索できるJ-PlatPatで、自社の商標の登録番号、権利者名、区分、指定商品・指定役務、存続期間を確認します。社名として使っている言葉でも、商標登録がされていない、あるいは相手の業種と区分が重ならないケースは珍しくありません。権利者名が旧社名や代表者個人のままになっていないかも、このタイミングで見ておきます。存続期間の満了が近い場合や、更新手続きの状況が分からない場合は、申し立ての前に弁理士へ権利の状態を確認しておくと安心です。登録証の写しや登録番号の控えは、媒体への申し立てでも専門家への相談でも使うため、記録シートと同じフォルダに保管しておきます。

次に、広告が表示されている国を確認します。日本で登録した商標であれば、主張できるのは日本国内での権利です。海外向けの広告にも自社商標が使われている場合は、その国での権利の有無を別に確認する必要があります。国ごとに権利を整理しておくと、申し立てで記載する範囲が明確になります。

広告主とドメインを広告の透明性センターで特定します

相手の広告主は、Googleの「広告の透明性について」(Ads Transparency Center)で確認できます。Google公式ブログ(2023年3月29日)によると、確認済みの広告主が配信した広告、特定の地域で表示された広告、最終掲載日や広告フォーマットを見ることができます。検索結果の広告横のメニューから広告主情報を開く方法もあります。

あわせて、広告の最終ページURLのセカンドレベルドメインを控えます。Googleは、制限を決定した場合、通常は最終ページURLで同じセカンドレベルドメインを使う広告すべてに継続して適用するとしています。広告主名とドメインがずれている場合は、代理店経由の出稿やアフィリエイトの可能性もあるため、両方を記録しておきます。

再販業者や情報サイトに当たらないかを点検します

Googleのポリシーには、商標を使っていても制限されない例外があります。商標に対応する商品の販売や、交換部品・互換品の販売を主な目的とし、価格など商業上の情報を示しているページは、再販業者であることが広告とページで明確であれば対象外です。商標の商品について情報を提供するページも同様に扱われます。

正規の販売店や比較サイトが自社商品を紹介している場合、申し立てても制限されない可能性が高いといえます。ここで「直接の競合か」「誤認を招く表現か」を冷静に分けておくと、申し立ての主張がぶれません。迷う場合は、その時点で専門家に相談する前提で記録を進めます。

法的判断と媒体の判断は別物です

  • 媒体の制限は広告ポリシーに基づく措置で、商標権侵害の有無を裁判所のように判断するものではありません
  • Yahoo!広告も、申請しても制限が保証されるものではなく、制限しない理由は回答しないと案内しています
  • 差止や損害賠償を検討する場合は、商標法上の「使用」に当たるかを弁護士・弁理士に確認してください

商標法の条文はe-Gov法令検索の商標法で確認できますが、検索連動型広告での使用が侵害に当たるかは個別事情で判断が分かれます。広告主の確認手続きの仕組みについて詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。

証拠は画面とURLと日時と条件をそろえて残します

申し立てや相手への連絡で使える証拠は、検索結果の画面だけでなく、検索語・日時・地域・端末・最終ページURLを1件ずつそろえた記録です。広告は時間帯や地域、端末によって表示が変わるため、「いつ、どこで、何と検索したら、どの広告が出たか」を後から再現できる形にしておくことが重要です。

検索結果画面の記録方法

検索結果は、広告の見出し・説明文・表示URL・広告主表示が一画面に入るように保存します。ブラウザの拡張機能や個人の検索履歴の影響を減らすため、シークレットウィンドウなど履歴の影響が少ない状態で検索し、画面上の時計や日付が写る形で残すと、表示日時の証明がしやすくなります。PCとスマートフォンで表示が異なる場合は、両方を記録します。

1回の記録だけでは、たまたま表示された広告と受け取られることがあります。日を変えて複数回記録し、同じ広告主が継続して商標入りの広告文を出していることを示せると、主張の説得力が増します。記録したファイルは、記録日と検索語がわかる名前で保存し、記録シートと番号で対応させておきます。

遷移先ページと広告主情報の記録

次に、広告の遷移先ページで、商品・価格・会社名・運営者情報を記録します。ページ上で商標がどう使われているかは、再販業者や情報サイトの例外に当たるかを判断する材料になります。ただし、広告を何度もクリックすると相手に費用が発生するため、遷移先の確認は必要最小限にとどめ、URLは広告の透明性センターの情報と照合します。

広告主名、確認済みの表示の有無、最終掲載日も、同じタイミングで画面ごと保存します。相手が広告を止めたり書き換えたりすると、後から同じ画面は取れません。気づいた当日のうちに一式をそろえることが、最も確実な証拠保全になります。

商標権者が申し立て前に行う対象確認と証拠収集の流れ
申し立て前の確認は、権利範囲と広告の使用箇所の分類から始めます

次の表は、1件の広告について残しておきたい項目をまとめた記録シートの記入例です。社内の共有シートにこの列をそのまま作り、広告1件につき1行で記録すると、申し立てや弁護士への相談でそのまま使えます。

記録項目記入例確認のポイント
記録番号・記録者TM-001/マーケ担当画像ファイル名と番号をそろえる
検索日時11月4日 10:15画面内の時計も写す
検索語「(自社商標) 料金」入力した語をそのまま残す
地域・端末東京都/iPhone・ChromePCとスマホの差も記録
広告文の該当箇所見出し2に自社商標を表示見出し・説明文のどこかを特定
表示URL・最終ページURLexample.jp/lp/セカンドレベルドメインを控える
広告主名・確認状況透明性センター上の表示名運営会社名との一致を確認
自社商標の情報登録番号・区分・指定役務相手の業種と重なるか
例外の該当可能性正規販売店ではない再販・情報サイトかを判断

記録のときに避けたいこと

  • 相手の広告を繰り返しクリックすることは、遷移先の確認に必要な範囲を超えないようにします
  • 画像を加工・切り抜きしすぎると、表示日時や前後関係が分からなくなります
  • 担当者の記憶だけで報告せず、必ず画面とURLを残します

記録の取り方や監視の体制づくりに不安がある場合は、指名検索で表示される他社広告の点検方法からご相談いただけます。オークション分析で競合の表示状況を把握する方法について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。

申し立てに進むか 直接依頼にするかは判定表で決めます

記録がそろったら、媒体への申し立て、相手への直接依頼、専門家への相談のどれを先に選ぶかを決めます。判断の軸は、商標がどこに使われているか、相手が直接の競合か、表現が誤認を招くかの3点です。次の判定表を目安にしてください。

確認した状況先に取る手理由
入札語だけで広告文に商標なし相手への除外依頼媒体ポリシーでは制限されない
競合が広告文に商標を表示媒体への申し立てGoogleの制限対象に当たり得る
公式・提携と誤認させる表現申し立てと専門家相談誤認を招く使用として主張できる
正規販売店が商品名を表示原則として静観・確認再販業者の例外に当たり得る
商標登録がない・区分が違う弁理士へ権利範囲を相談申し立ての前提が欠ける

直接の除外依頼が先に向くケース

相手の広告文に商標がなく、部分一致などで意図せず表示されているように見える場合は、相手企業に除外キーワードの設定を依頼する方法が現実的です。依頼の際は、除外してほしい語をそのまま登録できる一覧で渡し、強い表現を避けて丁寧に伝えます。相手に応じる法的義務はないため、依頼は交渉として位置付けます。

広告文に商標が入っていても、相手が取引先や業界の近い企業で、関係を保ちたい場合は、先に連絡して修正を求める選択肢もあります。直接の依頼で解決すれば、媒体の審査を待つ必要もありません。連絡した日時と内容、相手の回答も、記録シートに追記しておきます。

媒体への申し立てと専門家相談に進むケース

直接の競合が広告文に自社商標を表示している場合や、公式サイト・正規代理店であるかのように見せている場合は、媒体への申し立てを検討します。Googleへの申し立ては、広告ポリシーのページから案内されている「Google 上のコンテンツを報告」の手順で、商標を選んで進めます。フォームの入力項目は表示が動的に変わるため、本記事では執筆時点で全項目を確認できていません。

差止や損害賠償まで視野に入る場合や、相手が修正に応じない場合は、記録シートを持って弁護士・弁理士に相談してください。広告運用の担当者は、事実関係の記録と広告の表示条件の説明を担い、法的な評価は専門家に任せるという役割分担にしておくと、判断がぶれません。

相手への依頼でも媒体への申し立てでも、伝える内容は記録シートの事実に限るのが安全です。「侵害している」と断定する表現は、法的な評価を含むため、専門家の確認を経てから使います。運用担当の立場では、どの検索語で、いつ、どの広告文が表示されたかを淡々と示し、修正してほしい箇所を具体的に伝えるほうが、結果として相手も対応しやすくなります。

検索語句の分析で自社の指名語の出方を把握する方法について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。

申し立て後は 制限の範囲を確かめて監視を続けます

申し立てが認められても、それで終わりではなく、制限の範囲を確かめたうえで定期的に検索結果を点検する体制が必要です。制限は特定の広告主とドメインに対して働くため、別の広告主が同じことを始めれば、改めて対応することになります。

制限はドメイン単位で続き 相手は再審査を請求できます

制限は、通常は最終ページURLで同じセカンドレベルドメインを使うすべての広告に継続して適用されます。一方、制限を受けた広告主は、誤りだと考えれば通知の手順に従って再審査を請求できます。相手が再販業者であることを示した場合などは、制限が解除される可能性もあります。制限の通知が届いた後も、同じ広告主が別のドメインで似た広告を出していないか、記録シートの検索語で数日おきに確認しておくと、次の対応を早く決められます。

申し立ての審査にかかる期間や結果の通知方法の詳細は、執筆時点で公式には明示されていません。提出後は、手続きの状況を商標のトラブルシューティングから確認でき、特定の広告主への使用許可や申し立ての取り下げもここから案内されています。

自社の指名検索広告と定期点検で再発を見つけます

自社商標での検索結果に他社広告が出ること自体は、キーワード使用である限り止められません。そのため、自社の指名検索に広告を出して上位を確保しておくことも、守りの手段の一つになります。指名検索の広告文に公式であることを明記しておくと、利用者の取り違えも減らせます。

点検は、月に1回など頻度を決め、同じ記録シートに追記していく運用がおすすめです。広告運用代行の現場では、指名語の検索語句レポートと手動の検索結果確認を組み合わせて、新しい広告主の出現を早めに見つけるようにしています。指名検索広告の配信設計と定期点検の体制づくりもご相談いただけます。

自社の広告が審査で不承認になった場合の対処について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ:申し立ての前に対象確認と証拠をそろえる

他社の広告に自社商標が使われたときは、まずキーワードとしての使用か、広告文での使用かを分けることが出発点です。そのうえで、権利の範囲と広告主のドメインを特定し、検索語・日時・地域・端末・URLをそろえた記録を残してから、申し立てか直接依頼かを判断します。

  • Google広告はキーワードとしての商標使用を制限せず、広告文での競合による使用や誤認を招く使用が対象です
  • 申し立ては特定の広告主に対し、権利を示した国と業種の範囲で受け付けられます
  • 記録シートに1件1行で残し、法的な評価は弁護士・弁理士に確認します

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