ポッドキャスト広告の純増到達は 番組重複をどう避けて作るか|Podscribe番組選定

ポッドキャスト広告の出稿番組を5本から10本に増やしたのに、到達したリスナーの実数はほとんど変わらなかった。音声広告の予算を本格的に動かし始めた広告主から、こうした相談が増えています。原因の多くは番組の質でも読み上げ原稿でもなく、選んだ番組同士がほとんど同じリスナーを抱えていたという、きわめて単純な構造にあります。
同じジャンル、同じネットワーク、同じ配信プラットフォームに寄せて番組を選ぶと、広告は確かに配信されているのに、新しく出会えた人はほとんど増えません。増えるのは既存リスナーへの接触回数だけで、耳あたりの疲弊と広告費だけが積み上がっていきます。逆に言えば、番組の重複構造さえ把握できていれば、同じ予算のまま到達人数を大きく伸ばす余地が残っているということでもあります。
本記事では、ポッドキャスト計測プラットフォームのPodscribeが公開しているAudience OverlapとPlannerの仕様を一次情報として確認しながら、リスナーの重複をどの単位で見るのか、純増到達(net new reach)をどう指標に落とすのか、そして実際に出稿する番組の組み合わせをどう決めるのかまでを、広告運用の実務手順として整理します。日本市場のように重複データが揃わない環境での代替設計も併せて扱います。
この記事の要点
- 番組を増やしても到達が伸びない主因はオーディエンス重複であり、番組数ではなく重複率で番組を選ぶべきです。
- PodscribeのAudience Overlapは、番組・キャンペーン・パブリッシャー・チャネルの4単位で重複を可視化します(Podscribe公式ブログ、2025年1月)。
- Podscribe Plannerは番組を純増到達・ブランドアフィニティ・重複・予測CVでランキングします(2025年7月8日刷新)。
- 重複は常に悪ではなく、認知拡大局面は純増到達、刈り取り局面は接触回数を優先して使い分けます。
- 日本の番組在庫では重複データが揃わないため、プロモコード・独自URL・アンケートで代替推定する設計が現実解です。
ポッドキャスト広告におけるオーディエンス重複の正体
オーディエンス重複とは、複数の番組に同時出稿したときに、同じリスナーへ広告が二重三重に届いている状態を指します。ポッドキャスト広告は番組単位で買うのが基本のため、番組Aのリスナー1万人と番組Bのリスナー1万人に配信すれば2万人に届くと考えがちですが、実際には両方を聴いている層が一定割合存在します。この重なりを差し引いた実数が、その出稿で本当に接触できた人の数です。
この構造が見えにくいのは、ポッドキャスト広告のレポートが長らくダウンロード数やインプレッション数で提出されてきたからです。ダウンロードは配信の回数であって人の数ではありません。番組を10本に増やせばインプレッションは単純に積み上がり、レポートの数字は大きくなります。しかし人の数で見ると、増えたのは接触回数だけで到達人数はほとんど動いていない、という事態が普通に起こります。
重複が生まれる三つの経路
重複が発生する経路は、番組そのものの近さ、パブリッシャーの近さ、そして配信プラットフォームの近さに分解できます。まず番組の近さは最も直感的で、ビジネス系のインタビュー番組を横並びで5本買えば、熱心なビジネス系リスナーは当然その多くを聴いています。ジャンルが同じというだけで、重複率は一気に跳ね上がります。番組表を横に並べて眺めているだけでは、この重なりはまず見抜けません。
次にパブリッシャーの近さです。同一ネットワークの番組は相互にクロスプロモーションを打ち合っているため、番組ジャンルが違っても聴取層が流れ込んでいます。ネットワーク単位でまとめ買いすると単価は下がりますが、その分だけ重複を抱え込むトレードオフがあると考えたほうが実態に合います。最後にプラットフォームの近さで、特定の配信アプリに偏った番組ばかり選ぶと、そのアプリを使っていない層には構造的に届きません。
到達の頭打ちは配信量ではなく番組構成で決まる
予算を増やせば到達人数も比例して伸びるという前提は、ポッドキャスト広告では早い段階で崩れます。番組リストが固定されている限り、追加予算はその番組群のリスナーへの接触回数に変わるだけだからです。到達曲線が寝てくる地点は出稿金額ではなく、選んだ番組が持つユニークリスナーの総和で決まります。
したがって、到達が伸び悩んだときに最初に見直すべきは入札でも配信量でもなく、番組リストの構成です。重複率の高い番組を1本外して、重複率の低い番組を1本入れるだけで、同じ予算のまま到達人数が二桁パーセント動くことも珍しくありません。音声広告の運用は、日次の調整よりもプランニング段階の番組選定で成果の大半が決まる媒体だと理解しておく必要があります。
この考え方は、ディスプレイやCTVで配信面の質を見極めるときの発想とほぼ同じです。在庫をどう買うかより、どの在庫を買わないかを決めるほうが成果に効きます。
純増到達(net new reach)という評価軸
純増到達とは、すでに接触済みのリスナーを除いたうえで、その番組を追加したことによって新たに到達できる人数または比率を指す指標です。既存の番組リストを基準点として、そこに候補番組を足したときの増分だけを見るため、番組単体のリスナー規模が大きくても既存と重なっていれば数字は小さくなります。番組を「足すか外すか」を判断するには、この増分でしか意思決定できません。番組単体のリスナー規模は、到達設計の判断材料としてはほとんど役に立ちません。
実務上は、純増到達を比率で持つのが扱いやすくなります。候補番組のリスナーのうち、既存リストで未接触だった人の割合を純増到達率として持ち、これに番組のリスナー規模を掛ければ実数が出ます。比率が高くても規模が小さければ貢献は限定的で、規模が大きくても比率が低ければ接触回数を増やすだけです。両方を掛け合わせた実数で並べ替えることが、番組選定の起点になります。
もう一点、純増到達は基準となる番組リストが変われば値も変わる相対指標である、という性質を押さえておく必要があります。同じ番組でも、既存リストがビジネス系に寄っていれば純増到達は高く出ますし、すでに近いジャンルを買っていれば低く出ます。番組に固有の絶対値としてスコアを保存すると、次のキャンペーンで判断を誤ります。誰の、どの時点のリストに対する増分なのかをセットで記録する運用にしてください。
到達と接触回数を分けて管理する
到達と接触回数を同じレポートに混ぜて管理すると、判断が必ず歪みます。インプレッションは到達人数と平均接触回数の積であり、どちらが動いてインプレッションが増えたのかを分離しないと、成果の解釈ができないためです。音声広告の管理画面がインプレッション中心の表示になっている場合ほど、この分離は手作業のスプレッドシートでも行う価値があります。
接触回数の設計も同時に必要です。ポッドキャスト広告はホスト読み上げの信頼感が強みである反面、同じ声の同じ原稿を短期間に何度も聴かせると、好意度が急速に落ちます。到達を広げる局面では一人あたり3回前後に収め、刈り取り局面では意図的に回数を積む、といった方針を先に決めておくと、番組リストの作り方も自動的に定まります。
| 指標 | 何を表すか | 番組追加の判断での使い方 |
|---|---|---|
| インプレッション | 広告が再生された延べ回数 | 配信量の確認のみ。単独では判断材料にしない |
| ユニーク到達 | 広告に1回以上接触した実人数 | キャンペーン全体の分母。目標到達の進捗管理に使う |
| 純増到達 | 既存リストに対する未接触者の増分 | 番組を足すかどうかの主判断。降順で候補を並べる |
| 重複率 | 既存リストと共通するリスナーの割合 | 純増到達の裏返し。高い番組は外すか予算を絞る |
| 平均フリークエンシー | 一人あたりの平均接触回数 | 到達が止まった局面の検知に使う。上振れは飽和のサイン |
純増分だけを取り出して評価するという発想は、音声広告に限った話ではありません。広告全体で純増効果をどう測るかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
PodscribeのAudience Overlapで見えること
PodscribeのAudience Overlapは、番組・キャンペーン・パブリッシャー・チャネルという四つの単位でリスナーの重複を可視化する機能です。Podscribe公式ブログによれば、この機能は2025年1月に提供が開始され、広告主が新しいオーディエンスに届いているのか、それとも既存リスナーへ再接触しているだけなのかを判別できるようにすることを目的としています。
公式の説明では、算出は世帯レベルの識別子(household-level identifiers)に基づいて行われるとされています。Podnewsが掲載したプレスリリースでは、2番組に出稿した場合に各番組固有のリスナー数と両番組で重複するリスナー数が明示される例が紹介され、その事例では番組間の重複が8%だったと記載されています。数字そのものより、重複を一桁台まで具体的な比率で扱える点が実務上の変化です。
四つの比較単位と、それぞれの使いどころ
番組単位の比較は、これから買う番組を足し引きする局面で使います。候補番組を既存リストと突き合わせ、どれだけ新規リスナーを連れてくるかを見るのが基本の使い方です。キャンペーン単位の比較は、同時期に走っている複数のキャンペーンが同じ人を取り合っていないかを確認する用途で、ブランド訴求と獲得訴求を並走させているときに効きます。
パブリッシャー単位の比較は、ネットワークのまとめ買いを検討するときに使います。ネットワークAとネットワークBのリスナーがほとんど同じなら、両方買う意味は薄くなります。チャネル単位の比較は、ポッドキャストとストリーミングオーディオのように媒体をまたいだ重複を見るもので、音声予算全体をどう割るかという上位の意思決定に直結します。
世帯レベル識別子という前提の読み替え方
重複率を読むうえで外せない前提が、識別の粒度です。Podscribeは世帯レベルのIPマッチングを基盤としており、これは個人単位ではなく同一世帯を一つの単位として扱うことを意味します。家族で同じ回線を使っていれば、別人の聴取が同一単位に統合される可能性があるということです。
この前提は、重複率の絶対値をそのまま真に受けないという姿勢につながります。世帯単位の集計では、実際の個人ベースの重複率よりやや高めに出る傾向があると理解したうえで、番組間の相対的な比較に使うのが安全です。番組Aと番組Bのどちらが重複しているかという順序関係は、粒度の影響を受けにくいためです。
重複率を読む前に確認すること
- 識別の粒度:世帯単位か個人単位か。世帯単位なら絶対値ではなく番組間の順序で使う
- 集計期間:短すぎる期間では重複が過小に出る。最低でも配信1サイクル分を確保する
- データ量:純増到達が0%と表示される番組は、判定に足るデータがない可能性がある
- 対象範囲:計測タグが入っていない番組は集計から漏れ、実態より重複が低く見える
Podscribeの計測基盤そのもの、つまりRSS Prefixや世帯到達、増分検証の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
Podscribe Plannerの番組ランキングを純増到達から読む
Podscribe Plannerは、番組を純増到達・ブランドアフィニティ・オーディエンス重複・予測コンバージョンの四つの軸でランキングできるプランニングツールです。Sounds Profitableが掲載したプレスリリースによれば、刷新版の提供開始は2025年7月8日で、広告主・代理店・パブリッシャーの三者が同じデータを見ながらプランを組み立てられることを狙いとしています。
実務で重要なのは、これらの軸が同時に最適化できるものではないという点です。純増到達が高い番組はブランドとの親和性が低いことが多く、ブランドアフィニティが高い番組はすでに接触済みのリスナーを多く抱えています。予測コンバージョンが高い番組は、その両方の性質を持つ既存顧客層に近い番組であることが少なくありません。どれを主指標に置くかを先に決めないと、ランキングは眺めるだけの表になります。四軸すべてが上位に来る番組は、まず存在しないと考えたほうが実態に合います。
ランキング指標に優先順位をつける
優先順位はキャンペーンの目的で決まります。新規顧客の母集団を広げたい局面では純増到達を第一軸に置き、ブランドアフィニティは足切り条件として下限だけを設定します。逆に短期の獲得効率を求める局面では予測コンバージョンを第一軸に置き、重複率は許容上限を決めて監視するだけに留めます。
この優先順位を明文化しておくと、番組提案を受けたときの判断が速くなります。媒体社やネットワークからの提案は、基本的にその社の在庫で埋まった番組リストとして届きます。提案リストをそのまま受け入れるのではなく、自社の既存リストに対する純増到達で再評価してから採否を決める、という手順を固定するだけで、重複の抱え込みはかなり防げます。
類似番組探索は候補を広げる用途に限る
Plannerには、コンテンツやオーディエンス特性、リスナー重複をもとに似た番組を探す機能があります。成果が出ている番組を起点に候補を広げられるため、番組リストの初期構築では有用です。ただし、この機能の性質上、出てくる候補は起点番組と重複しやすいという点は理解しておく必要があります。
したがって使い方としては、類似番組探索で候補プールを広げたあと、必ず純増到達で並べ替えてから採用を決める流れになります。似ているから買うのではなく、似ている番組の中でも重なりが小さいものを選ぶ、という二段構えです。
候補プールの広げ方としては、成果の出ている番組だけを起点にするのではなく、ジャンルの異なる番組を意図的に起点に混ぜる方法も有効です。起点を一本に固定すると、探索範囲そのものが狭いまま固定されてしまいます。四半期に一度は起点を入れ替え、候補プールを作り直す運用にしておくと、番組リストの硬直化を避けられます。
| キャンペーン目的 | 第一軸に置く指標 | 制約条件として置く指標 | 番組リストの傾向 |
|---|---|---|---|
| 新規層の認知拡大 | 純増到達 | ブランドアフィニティの下限 | ジャンル分散・ネットワーク分散が強い |
| 比較検討層の獲得 | 予測コンバージョン | 重複率の上限 | 既存の勝ち番組に近い構成になる |
| 既存顧客の再購入喚起 | ブランドアフィニティ | フリークエンシーの上限 | 本数を絞り接触回数を積む |
| 音声チャネル全体の設計 | チャネル間の重複率 | チャネル別の予算下限 | ポッドキャストとストリーミングを併用 |
重複を避ける場面と、あえて重ねる場面
重複は常に避けるべきものではなく、キャンペーンの局面によっては積極的に作るべきものです。到達を広げきったあとに残る課題は「知っているが動いていない人」であり、その層を動かすには一定の接触回数が必要になります。純増到達だけを追い続けると、薄く広く一度ずつ当てただけで終わり、記憶にも行動にも残らない配信になります。
判断の分かれ目は、目標到達人数に対する現在の到達率です。目標母集団の半分にも届いていない段階で接触回数を積むのは早すぎますし、逆に八割方に届いているのに新規番組を探し続けるのは効率が悪くなります。到達率の進捗を見ながら、重視する軸を純増到達から接触回数へ切り替えるのが自然な設計です。
純増到達を優先すべき局面
新商品の立ち上げ、新カテゴリへの参入、地域拡大のように、そもそも母集団を知らない人が大半を占める局面では、純増到達を最優先にします。この段階では番組単位のCPAが一時的に悪化することも織り込んでおく必要があります。初回接触のリスナーは即座には動かないため、獲得指標だけで番組を切ると、到達を広げる前に番組リストが痩せてしまいます。
この局面で有効なのが、ジャンルを意図的にずらした番組の組み入れです。ビジネス系商材であっても、コメディやスポーツ、カルチャー系の番組には、既存リストとほとんど重ならないリスナーが存在します。ジャンル適合度を少し犠牲にしてでも重複率の低い番組を入れたほうが、到達効率は改善することが多いのが実情です。
接触回数を積むべき局面
到達が目標水準に近づいたら、番組を広げる手を止めて、反応の良かった番組へ予算を寄せます。このとき重要なのは、単に配信量を増やすのではなく、原稿を差し替えることです。同じ番組で同じ原稿を積み増すのは飽きを招くだけですが、訴求点を変えた原稿であれば、二度目三度目の接触が意味を持ちます。
局面の切り替え目安
- 到達率が目標の5割未満:純増到達を最優先。重複率30%超の番組は採用しない
- 到達率が5〜8割:純増到達と予測CVを併用。重複の高い番組は予算を絞って残す
- 到達率が8割超:接触回数へ切り替え。番組追加を止めて原稿バリエーションを増やす
- いずれの局面でも:一人あたりの接触回数が想定上限を超えたら配信量を落とす
配信面や在庫の質を、可視性や重複接触の観点からどう見極めるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
番組の組み合わせを決める実務手順
番組の組み合わせは、基準となるコア番組を先に一本決め、そこに対する純増到達の高い順に候補を足していく手順で決めます。全番組の総当たり比較から始めると組み合わせ数が爆発しますし、そもそも重複は基準を決めないと計算できません。順番に足していく貪欲法に近いやり方が、実務では最も再現性の高い進め方です。
コア番組に選ぶのは、過去の配信で最も成果が良かった番組、それがなければターゲットとの適合度が最も高い番組です。ここで規模の大きい番組を選びがちですが、規模より適合度を優先したほうが後の判断が安定します。コアが適合度の高い番組であれば、そこに重ならない番組を足していくことで、適合度を保ったまま到達が広がる構造になるためです。
候補を一本ずつ足して再計算する
コアが決まったら、候補番組それぞれについてコアとの重複率を出し、純増到達の実数が大きい順に並べます。最上位の番組を採用したら、今度は「コア+採用番組」を新しい基準として、残りの候補の純増到達を再計算します。この再計算を省いて初回のランキングのまま上位から順に採用すると、採用番組同士が重なっている事態を見逃します。
実務ではこの再計算が最も手間のかかる部分ですが、5〜8本程度の番組リストであれば表計算ソフトでも十分に回せます。重複率が取得できない番組が混ざる場合は、ジャンルとネットワークが同じなら重複率を高めに仮置きする、といった保守的な初期値を入れておくと破綻しません。不明な重複率をゼロとして扱うのが、最も事故につながる仮置きです。
本数の上限と予算配分
番組本数には実務的な上限があります。原稿の作成と入稿、素材確認、レポート集約の工数は本数に比例して増えるため、本数を増やしすぎると運用が回らなくなります。純増到達が十分にある番組であっても、追加による到達の伸びが運用工数に見合わなくなる地点で打ち切る判断が必要です。
予算配分は、純増到達の実数に比例させるのが出発点になります。そのうえで、コア番組には成果が読める分だけ厚めに、新規に足した番組には検証に足る最低限のインプレッションを確保する、という調整を加えます。検証に足りない少額を多数の番組にばらまく配分が、最も学びの少ない使い方です。番組ごとに判断可能な水準まで配信量を確保できないなら、本数を減らすほうが合理的です。
音声広告の設計や番組選定について、自社の状況に合わせた設計を相談したい場合は、株式会社ハーマンドットの無料相談から現状の配信データをお預かりして診断することも可能です。
日本市場で同じ設計をどう再現するか
日本の番組在庫では、Podscribeのような重複データがそのまま使えない場面が多く、代替の推定手順を用意しておく必要があります。国内の主要ポッドキャスト番組や配信プラットフォームは、海外の計測プラットフォームと接続していないことが多く、番組をまたいだ世帯レベルの突合ができないためです。設計思想は輸入できても、データは自前で作る前提に立つのが現実的です。
代替手段として現場で機能するのは、番組別に発行するプロモコードと計測用URL、そして購入後アンケートの三点セットです。番組別プロモコードは、どの番組の聴取者が動いたかを直接示します。ここで複数番組のコードを同一ユーザーが使おうとした挙動や、アンケートで「他に聴いている番組」を複数回答で取る設計を組み合わせれば、番組間の重なりをおおまかに推定できます。
この三点セットを機能させるには、番組別のコードとURLを配信開始前に発行し、原稿にも確実に組み込んでおく必要があります。配信が始まってから慌てて付与すると、初期の反応が丸ごと計測から漏れます。番組別の識別子を用意していない出稿は、後からどれだけ分析しても重複の実態にたどり着けません。プランニングと同時に計測設計を確定させる順序が重要です。
推定の精度より、順序が合っていることを優先する
自前推定で得られる重複率は、当然ながら精度が高くありません。しかし番組選定に必要なのは、重複率が15%なのか18%なのかという精度ではなく、番組Bより番組Cのほうが重なりが小さいという順序です。順序さえ安定していれば、足し引きの判断は十分に下せます。
アンケートで併聴番組を聞く設計は、設問の作り方で結果が大きく変わります。選択肢に挙げた番組だけが回答されるため、候補として検討している番組をすべて選択肢に入れ、かつ自由記述も併設するのが基本です。回答数が少ない段階では比率を信じすぎず、月次で累積しながら傾向を見ていく運用にします。
DAIとチャネル横断で重複を能動的に制御する
番組単位の買い付けに加えて、動的広告挿入(DAI)を使ったオーディエンスターゲティングを併用すると、重複の制御はしやすくなります。番組を指定して買うのではなく、リスナー属性を指定して番組横断で配信する方式では、プラットフォーム側でフリークエンシー上限を直接かけられます。番組指名買いとDAIを組み合わせ、指名買いでコアを押さえ、DAIで純増分を広げる設計は有効な選択肢になります。
チャネル横断の観点も欠かせません。SiriusXM Mediaが2025年3月に公開した分析では、3,500件以上の完了キャンペーンを対象に、ストリーミングオーディオのキャンペーンにポッドキャストを追加した場合の増分リーチが検証されています。同社の集計では、ポッドキャストネットワークの追加によって中央値で50%の増分リーチが得られたとされており、音声内であってもチャネルが変われば到達する人が大きく変わることを示しています。
ポッドキャストDAIを使った番組横断配信やバックカタログの活用については、以下の記事で詳しく解説しています。
配信後の検証とレポート設計
配信後の検証は、番組別のCPAだけで見るのではなく、純増到達あたりのコストを併記して評価します。CPAだけで番組を切ると、到達を広げる役割を担っていた番組から順に消えていき、残るのは既存顧客に近い層を抱えた番組ばかりになります。数か月後に新規顧客の流入が細る典型的な経路がこれです。
レポートには、番組別のインプレッションと推定到達人数、平均接触回数、純増到達の推定値、そして成果指標を並べます。ここで重要なのは、純増到達の列を空欄にしないことです。推定値であっても、根拠と精度を注記したうえで数字を置いておけば、次回のプランニングで議論の土台になります。
番組を切るかどうかの判断基準
番組の停止判断は、成果指標と到達役割の二軸で下します。成果が出ておらず純増到達も小さい番組は迷わず外します。成果は出ていないが純増到達が大きい番組は、原稿やオファーを差し替えて一度だけ再試行する価値があります。成果は出ているが純増到達が小さい番組は、予算を絞りつつ残し、接触回数の枠として使います。
この判断を機械的に回すために、番組ごとの最低検証インプレッションを事前に決めておきます。検証量に達していない番組を成果だけで切る判断は、統計的にはほぼ無意味です。音声広告は配信から成果発生までのラグが比較的長いため、判定までの待機期間もあわせて決めておく必要があります。
やってはいけない評価の仕方
- インプレッション増だけを到達増と読む:接触回数が増えただけの可能性が高い
- CPA単独で番組を停止する:到達を広げる役割の番組から消えていく
- 検証量未達の番組を早期に切る:判断に足るデータが揃っていない
- 重複率の絶対値を鵜呑みにする:識別粒度の影響を受けるため相対比較で使う
配信後の分析をどう仕組み化するかは、音声広告のプラットフォーム側の計測機能にも依存します。ピクセルやイベント設計を使った音声広告の可視化については、以下の記事で詳しく解説しています。
自社の音声広告が到達を広げられているのか、既存リスナーへの再接触に留まっているのかを切り分けたい場合は、無料の広告アカウント診断で配信データをもとに現状を整理することも可能です。
まとめ 純増到達で番組を選び直す
ポッドキャスト広告で到達が伸びないとき、疑うべきは配信量ではなく番組の組み合わせです。重複を数字で扱えるようにし、純増到達を主判断軸に据えるだけで、同じ予算のまま到達人数を伸ばす余地が見えてきます。
- 番組数ではなく重複率で選ぶ。同ジャンル・同ネットワーク・同プラットフォームへの偏りが、到達の頭打ちを作る最大の要因です。
- 純増到達を主指標に置く。Podscribeの Audience Overlap とPlannerは、番組・キャンペーン・パブリッシャー・チャネルの4単位で重複と純増分を提示します。
- 局面で軸を切り替える。到達率が目標の8割に近づいたら番組追加を止め、原稿を差し替えながら接触回数を積む設計へ移行します。
まずは無料で広告アカウント診断を
株式会社ハーマンドットでは、音声広告を含むデジタル広告アカウントの無料診断を行っています。ポッドキャスト広告の番組リスト、配信量、原稿、計測設計を確認し、到達が広がっているのか既存リスナーへの再接触に偏っているのかを整理したうえで、改善余地を具体的にお伝えします。
検索広告やSNS広告を主軸に運用していて、音声チャネルの追加を検討している段階でも構いません。現在の媒体構成と重複しにくい到達先はどこかという観点から、投資対効果の見込める順番をご提案します。
初回相談は完全無料・所要時間30分・オンライン対応可能です。




